2010年3月28日日曜日

蜂刺されのエピペン:12000円くらいするぞ














最後にエピペン0.15mgとエピペン0.3mgについて。これは蜂や蛇に良く刺されるヒトは必携であり刺された場合は直ぐに自分で太ももに打つとよい。
ボクは知らなかったが、このエピペンは.本剤は投与量を安定化するため、1管中2mLの薬液が封入されているが投与されるのは約0.3mLであり、注射後にも約1.7mLの薬液が注射器内に残るように設計されていることから、残液の量をみて投与しなかったと誤解する恐れがあるので注意することだって。

ちなみにエピペンはマイラン製薬が販売している。保険外診療であるから、値段は凄いよ。普通これを処方すると エピペン注射液自費処方:注射液代(9800円)+処方料・指導料代(1000円) = 10,800円(診察料は別途算定)+消費税 診察料については別途算定する となるが医療機関によっては12000円から18000円と巾がある。

オリジナルは1アンプル97円である。それに針を付けて容器を工夫すると10000円くらいになるのである。高いがしかしこれは当たり前の値段であろう。どれだけ売れるか?しれたものであろう。これを商売で作ってくれる企業があることをありがたいと思わなければならない。人里離れた山の中で蜂に刺されて命が危ないときに使用することを想定しているのである。10000円でも良心的な値段であると考えるべきである。ボクが社長なら30000円くらいの値段を付けたいね。

2010年3月27日土曜日

アナフィラキシー

第一段階の処置としては、助けを呼ぶこと、しっかりとABCを確認すること、1:1000のアドレナリンを0.01mg/kg(最大0.5mg)筋肉注射 で投与すること、14〜16ゲージの太い針でしっかりと血管確保をし、大量補液をすること、バイタルサインをモニターすること、酸素6〜8L/分をマスク で投与すること、仰向けに寝かせて、下肢を挙上すること、などです

日本国内で売られており病院内において静注用に使われるボスミン製剤は一種類であり、1mg/1ml製剤だけであること。これ以外の濃度・容量のものは存在しない。医療者として確認しておくことはこの一つだけであることを最初に確認しておこう。

ボスミンを使うときはきまって緊急事態。緊急事態であるから間違えたくない。通常間違えることはない。ないのであるが、頭のどこかに引っかかっているもやもやがある。形容詞といっていいのだろうか?ボスミンは他の薬にはない形容詞が付いており、緊急事態でこれら余計なことを思い出すと混乱する。形容詞とは「1000倍ボスミン」の「1000倍」とか「ボスミン注」とか「ボスミン液」の「液」「注」である。

「液」は1mg/1ml製剤であるが、これは気管支喘息などの時気管内に投与するための製剤であり、一アンプル8円と安い。「液」を静注してはいけない。


1000倍であるが、これは忘れても良い。1倍ボスミンや100倍ボスミン製剤などは製剤として存在しないからだ。この1000倍は単に1mlの中に1mg入っているということを表現しているにすぎないが、なぜにこんな人心を惑わす表現が生き残っているのだろう? 初心者が「1000倍」と聞くと、絶対にこれは戸惑う。看護師がこれを聞くとパニックだ。彼女(彼)たちはよく「10万倍ボスミンを用意して」と言われるからなあ。彼らはボスミンを薄めなくてはいけない。これは実際には生食100mlにボスミン1A 1mlを混ぜればいいことなので(これで1000倍 x 100倍 =10万倍)、それなら職場では「ボスミンを100倍に薄めてください」あるいは「100倍ボスミン薄め液を作ってください」と言えばいい。「10万倍ボスミン」という業界用語を廃絶すればよいと思う。これからの看護師の中には10万倍ボスミンといわれて、1mlを10万倍希釈しなくてはいけないものと勘違いするものがきっと出てくるはずだ(実害はないけど、これでは鼻血は止まらない)いうまでもないことだが、ボスミンは薬の中の薬であり、これくらい激しい作用を持つ薬もない。作用・効果が激しい。その割には使われ方が一定しない。きちんと教えられていない。怖い薬なのに・・・。

さて話を戻そう。ボスミンは製剤としてどのようなものがあるのだろう?少し詳しくみてみよう。

1921年に国内で販売開始されたボスミンであるが、現在では第一三共から2種類(「注」と「液」)、ジェネリック類似品として「アドレナリン注0.1%」とか「エピネフリン注0.1%」がテルモから販売されている。病院内でみるのはこれだけである。救急トレイには「液」は入っていないはず。ジェネリック製剤はオリジナルよりも高価(97円に対して180円)なので、普通の病院の救急トレイに入っているのは、まず第一三共の97円のボスミンであろう。全国津々浦々まで注射薬でアンプルにはいっているのは1mgが1mlに溶けているボスミンなのだ。だから余計なことは考えないこと。


添付文書には(1)皮下あるいは筋注をする(2)0.25mgを超えない量を静注する・・・と書いてあり、書いてあるからにはそのように使っても妥当性があり、訴えられることはないだろうが、最近の救急医療特にアナフィラキシーショック時の使い方はより洗練されてきている。0.01mg/kg(最大0.5mg)を出来るだけ早く筋注(大腿に打つこと)としている。皮下注は論外であるとの論調である。また静注も論外なのだそうだ。

ボクはこれまで皮下注も静注も心注も、やっていたよ、もちろん筋注もやっていた(これからは筋注だけになろうが・・)

大事なことはでっかいルート(18G以上)はとった上で、普通の大人なら半アンプルを吸って直ちにふとももに打つということ。どれくらいの量だったか・・・?なんて考えている暇はない。爺さんばあさんなら遠慮して3分の1を吸って打つくらいか・・。添付文書を読むと、つい変な気になる。まず皮下注で打ち、効かなければ筋注でとかわけのわからん判断をしてしまうことがある。あるいは打つタイミング。つい待ってしまう。バイタルが下がってくるのを待つ。呼吸障害が発現してくるのを待つ。ボスミンを打つのに相応しい状況が揃うまで待つ・・・ありがちではないであろうか?呼吸抑制もショックもない時期に打ち代わりに頻脈や高血圧を引き起こしてしまうボスミンへのためらい。ボクなどは大いにあるぞ、ボスミンへのためらい。

2010年3月26日金曜日

The Nature Top Ten アクセスランキング

The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も 掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。 2010年02月26日~2010年03月26日

日本からのアクセスが最も多い論文ということであるが、先月は生物学系がことのほか多いのでnoteしておく。トップがメタゲノムであり、この論文はそれだけの価値がある。2位はSkp2がらみ(中山氏もからむ)。9位の雌だけの種というのも面白そうである。

1. 我々がもつもう1つのゲノム:ヒト腸内微生物叢の遺伝子カタログ
人体は推定100兆個の微生物細胞を棲まわせているが、その大部分は腸に存在し、ヒトの生理と栄養摂取に大きな影響を及ぼしており、現在ではそれがヒトの 生命に極めて重要だと考えられている。腸内微生物は、食物からのエネルギーの取り込みにかかわっており、腸内微生物叢の変化は、腸疾患や肥満と関係している可能性がある。今回、国際MetaHIT(Metagenomics of the Human Intestinal Tract;ヒト腸管メタゲノミクス)プロジェクトが、デンマークおよびスペイン在住の124例の健常、過体重および肥満の成人、それに炎症性疾患患者に 由来するヒト腸内微生物叢の遺伝子カタログを発表した。このデータから、ヒトの全遺伝子の150倍以上に相当するこの遺伝子セットに関する最初の手がかり が得られ、遺伝子群はすべての被験者間でほぼ共通であることが明らかになった。この遺伝子セットがコードする機能の多様性に基づき、最小限の腸内メタゲノ ムおよび最小限の腸内細菌ゲノムの双方が定義された(Article p.59)。


2. 老化が腫瘍を阻止する
最近の研究で、細胞老化、つまり細胞周期の不可逆的な停止が、in vitroでの腫瘍増殖を停止させることが示唆されている。今回H-K Linたちは、老化を引き起こす、これまで知られていなかった経路で、既知の老化メディエーターのほとんどが関与していないものを明らかにした。シグナル は、転写因子Atf6、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp27とp21を介して伝えられる。この経路は、発がん性シグナル伝達が起こっている場合に、がん原遺伝子Skp2の不活性化によって明らかになる。薬理学的にSkp2複合体を標的とすると、細胞老化が誘導 されて腫瘍形成が抑制されるので、そのような薬剤は抗がん剤として有効かもしれない。

3. ミトコンドリアの反乱
ミトコンドリアは細胞内共生細菌の子孫であり、真核細胞に受け入れられて数百万年の共進化を経た現在では、宿主細胞に仕える小器官となっている。しかし、 生命が危ぶまれるような事態になると、この関係に亀裂が生じるようだ。重い外傷を負った患者の血漿サンプルの分析から、組織が損傷すると、ミトコンドリア のDAMP(damage-associated molecular pattern;ダメージ関連分子パターン)が血中へと放出され、そこで特異的なホルミルペプチド受容体を介して好中球を活性化することが明らかになった。これにより、全身性炎症や組織の損傷、敗血症に似た症状が引き起こされる。侵入してくる微生物の発現するPAMP(病原体関連分子パターン)という分 子群に対する自然免疫応答は細菌性敗血症の原因となるが、DAMPはこういう免疫応答の一部を担っている受容体と相互作用する。この知見は、感染が認められない場合でも、重い外傷に関連してよくみられる敗血症に似た症状の説明になるかもしれない。

4. 開発が難しいエイズワクチン:免疫学的、臨床的、使用における難問
AIDS/HIVの世界的流行を食い止め、HIV-1を絶滅させるには、効果の高いワクチンは必須である。しかし、この目標への歩みは遅く、達成を疑う人さえいる。今週号の2つの総説とOpinionでは、このワクチンの研究の軌跡が、最新の情報を含めてまとめられている。H VirginとB Walkerは、ワクチン作製は可能だが非常に難しいだろうと考えており、免疫学的に未解明のいくつかの問題について概説している(p.224)。AHaaseは、感染の各段階でのワクチンと殺菌剤の併用を主唱している(p.217)。国際エイズワクチン推進構想のWKoffは、優秀な若手研究者を惹きつけ、企業の関与を確保するように立案された長期計画への投資の増額を求めている(p.161)。Hareたちは、レトロウイルスインテグラーゼ/DNA複合体の構造を報告している。これは、抗レトロウイルス薬の標的となるために解明が待ち望まれていたものである (p.232, N&V p.167)。表紙は、HIV粒子(ピンク色の疑似カラーで示す)が感染したリンパ球(青色)の表面から出芽してくるようすを示した走査型電子顕微鏡像である。

5. スリムでけちな微生物
窒素固定を行う、まだ培養されたことがないシアノバクテリアのUCYN-Aは、世界の海洋に広く分布している。メタゲノム解析により、UCYN-Aには、光合成装置の酸素を生成する光化学系II複合体(太陽光下での窒素固定に寄与する)と炭素固定にかかわる遺伝子が存在しないことがわかっている。今回、大 量並行ペアエンド・パイロシーケンシング法により、UCYN-Aの完全ゲノム配列が明らかにされた。このシアノバクテリアは重要な代謝経路の多くをもたず、有機炭素どころか、有機窒素を含む化合物さえほかの生物に大きく依存している、極めて単純な生物であることがわかった。そのゲノムの構造は、葉緑体や 内部共生生物と似ているが、自然個体群を用いた実験では、これまでのところ、ほかの微生物とのいかなる共生関係も見いだされていない。

6. Hox遺伝子は多様性のもと
Hox遺伝子群は、あらゆる動物で体軸に沿った構造の指定に中心的な役割を担っており、Hoxの発現パターンの変化は、脊椎動物の体制の多様性と並行している。トカゲやヘビなどの有鱗目爬虫類におけるHox編成の研究から、Hoxクラスターに予想外に多くの転移性遺伝因子が蓄積していることが示された。これは、コード領域と非コード調節領域で広範囲にわたるゲノム再編成があったこと を表している。異なる中軸骨格をもつコーンスネーク(ヘビ類)とウィップテールリザード(トカゲ類)の2種間における発現比較解析から、Hox13とHox10の 発現の主要な変化が、発生中のヘビ胚の尾部と胸部領域の伸長と一致していることが明らかになった。したがって、Hoxクラスターの構造と機能の変化は、この分類群でみられる大規模な形態的放散を反映していると考えられる。

7. 蚊が匂いを選び出す仕組み

疾患を媒介する昆虫の多くは、宿主のありかを探るのに匂いの認識を使っているが、その分子過程はほとんどわかっていない。今回、サハラ以南のアフリカでの 主要なマラリア媒介動物であるハマダラカの一種Anopheles gambiaeの匂い受容体タンパク質の全レパートリーが、内在性の匂い受容体を欠く遺伝子組み換えショウジョウバエ(Drosophila)という「empty neuron」系を用いて決定された。この受容体のほとんどは、さまざまな匂い物質に反応して広く活性化されるが、一部の受容体はもっと特異性が高く、1つあるいは少数の匂い物質に反応する。数十種類もの受容体がヒトの汗に含まれる化合物に強く反応するので、こうした受容体は、蚊の宿主探知を妨げたり、お とりの匂いを使ってトラップに追い込んだりする方法によるマラリア蔓延防止策の標的となるだろう。

8. HIVの複雑な免疫学
自然感染でみられるのと同じような免疫応答を誘導しただけでは、HIV/AIDSを防げないらしいことが、さまざまな証拠から示唆されている。H VirginとB Walkerは、こうした前提に立って、HIVワクチンへの取り組み方を基本から再検討する必要があると論じ、有効なワクチン作製のために解明しなければ ならない免疫学上の疑問についてまとめている。

9. 雌だけの種
ハシリトカゲ類に全部が雌という種が存在することは、1962年から知られていた。有性生殖する種の交雑によって生じたものだが、この種(Aspidoscelis tesselata)が、体細胞の染色体をひとそろいすべて備えた成熟卵をどのようにして作るのかは不明で、遺伝的多様性の維持機構も解明されていなかった。Lutesたちは、この種では、減数分裂が有性生殖をする種の2倍の染色体数をもつ状態から始まり、相同染色体間ではなく、遺伝的に全く同一な姉妹染色体間で対合と組み換えが起こることを明らかにしている。

10. 有機超伝導体
新しい高温超伝導体の発見が続いている。なかでも最新の注目すべき発見は鉄ヒ化物である。しかし、新たな有機超伝導体は、過去10年間発見されていない。 今回、カリウムあるいはルビジウムをドープした単純な炭化水素分子の結晶で、最高18 Kの温度で超伝導が発見されたことが報告されている。この新しい超伝導化合物のベースとなっているのは、5つのベンゼン環が互いに辺を共有しているピセン (C22H14)という分子である。これは結晶化すると、分子が規則正しく並んだ固体となる。本来これは半 導体材料なのだが、結晶格子へのアルカリ金属のインターカレーション(挿入)により、金属的挙動や超伝導が生じる。今回、カリウムをドープしたピセンで、 18 KというTcが得られた。これは有機超伝導体にしては高い値であり、これ以上のTcが 得られるのは、アルカリ金属をドープしたC60だけである。ピセンは、多数存在する縮合ベンゼン環系分子の1つであるため、これ以 外の超伝導炭化水素も見つかるかもしれない。

2010年3月25日木曜日

セーフスを開始した:大腿骨骨折治療遷延症例について

セーフスを昨日から開始した。

76才左大腿骨骨幹部骨折へ髄内釘手術より約2ヶ月である。現在2/3 p.w.b.partial weight bearing: 2/3部分荷重のこと。罹患肢に体重の3分の2をかけてもよろしい・・・ということである。このようなリハビリ専門用語、というかjargonにも随分慣れました、この1年でねである。ADLは素晴らしいし、疼痛はほとんどないが、定期的に撮る写真でほとんどcallus(仮骨)が認められない。何故だ? ギャップが6mm位はあるからか? 

さて帝人が昨日リースで持ってきてくれた。まるめ病棟から一般病棟へ転棟してもらい、しばらくは日に20分の治療を行うこととした。なんせ非整形外科スタッフしかいないのである。勉強勉強また勉強であるが面白い。スタッフの皆さん目が輝いているぞ。日本語の文献では大体5割から7割くらい効いているように報告されている。下の文献では7割くらいに効いている。これを頼りに頑張ってみよう。ちなみに治療開始後6ヶ月で癒合傾向がない症例の9割はつかないとの報告がある。
初日の彼の感想・・・

「暖かくなるわけでもない、ピリピリ電気が走るわけでもない。しかし、なんかエネルギーを確かに感じます」とのことである。

大腿骨・下腿骨骨折遷延癒合に対する低出力超音波パルス治療の検討 

内野正隆, 齊藤亘, 塗山正宏, 成瀬康治, 峰原宏昌, 糸満盛憲

北里大学整形外科
骨折, 31(3) : 592-598, 2009.


大腿骨と下腿骨折76症例中、50症例に有効
無効例26症例(髄内釘16、プレート固定5、創外固定4、スクリュー1) 無効例の髄内釘群の中では6例に骨折部のギャップあり。

新しいヒト族(の化石DNA)が見つかる:Denisova Cave

"This really surpassed our hopes," says Svante Pääbo, senior author on the international study and director of evolutionary genetics at the Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology in Leipzig, Germany. "I almost could not believe it. It sounded too fantastic to be true."

これは本当に「本当だとしたら凄すぎる!」できごとであろう。要するにこんな話。

ヒトはある時代をネアンデルタールと共存し、その後ネアンデルタールがいつしか滅びていった:これがいままでの話。
今回の発見はネアンデルタール以前に「出アフリカ」を果たしてシベリアまで行き着いたヒトの祖先といっていい人たちがいたということを初めて明らかにした。彼らは残念ながら生き延びることなく滅びていったのだ。
これは38000年から48000年前の話である。化石が残るには古すぎる。今回のデニソバの洞窟には「指の骨」が断片的に残っていただけだという。骨が残って初めて考古学は成立するのだが、骨はなくともDNAシークエンスが新しい人類学=考古学を支える支柱となり得ることを今回初めて示したのだ。

面白いではないか。

滅んでいったデニソバ人よ、悠久ともいえる月日ののち、ついに君たちは甦って、現代人の前にその姿を現したのだ!



新しいヒト族

灰色は現ヒト
青色はミトコンドリアのゲノムシークエンスが存在する6人のネアンデルタール人
そして赤はアルタイ山中の洞窟で今回見出された新しい「お仲間」である


Phylogenetic tree of complete mtDNAs.

J Krause et al. Nature 000, 1-4 (2010) doi:10.1038/nature08976







Nature advance online publication 24 March 2010 | doi:10.1038/nature08976; Received 21 January 2010; Accepted 3 March 2010; Published online 24 March 2010

The complete mitochondrial DNA genome of an unknown hominin from southern Siberia

Johannes Krause1, Qiaomei Fu1, Jeffrey M. Good2, Bence Viola1,3, Michael V. Shunkov4, Anatoli P. Derevianko4 & Svante Pääbo1

  1. Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology, Deutscher Platz 6, D-04103 Leipzig, Germany
  2. Division of Biological Sciences, University of Montana, Missoula, Montana 59812, USA
  3. Department of Anthropology, University of Vienna, Althanstr. 14, A-1090 Wien, Austria
  4. Paleolithic Department, Institute of Archaeology and Ethnography, Russian Academy of Sciences, Siberian Branch, Lavrentieva Avenue, 17 Novosibirsk, RU-630090, Russia

ヒト族(ホミニン)Homininについて

National Geographicsの見解

これまで人類の進化に関する記述には、よく「ヒト科(ホミニド)」という言葉が登場した。本誌も例外ではなかった が、今後は専門家にならって「ヒト族(ホミニン)」という言葉を使用する。なぜ変更することになったのか、その理由を説明しよう。
 科学者たちは近年まで大型類人猿をすべてひとくくりにしてショウジョウ科とし、人類とその祖先をヒト科と呼んできた。しかしDNAの研究が進み、チンパ ンジーと人類が遺伝子レベルできわめて近いことがわかったため、全類人猿と人類をまとめて広義のヒト科と呼ぶ説が現れた。
 この新しい分類法によれば、オランウータンとゴリラは亜科としてそれぞれ属に分化され、チンパンジーは人類とその祖先とともに同じヒト亜科とみなされ る。では特に人類および320万年前のルーシーのような絶滅した同系統の祖先を指すときは何と呼べばいいのか? そこで生まれたのがヒト族(ホミニン)と いう名称。ホミニンにはルーシーのようなアウストラロピテクス属やホモ属が含まれる。

——アリス・ダン

2010年3月20日土曜日

広節裂頭条虫: NEJMの今週のイメージ

さすがに引用するのをためらわれる。韓国からのレポートであるがビデオ付きなのだ。腸管内でうごめくヤツの姿、思い出したくもない。トラウマだ。医者になった年に腹痛を訴える24才のスマートなOLにバリウムを飲んでもらったのだ。モニター画像でふと胃の先をみると・・・・・・十二指腸の下降脚をうめつくすおびただしい数の回虫が! わたしはどうもこの手の映像に弱い。手術でお腹の中がどんな状態になっていても平気なんだけど、しかし例えば子宮から子供が飛び出してくる、しかもその子供には臍の緒が付いていて拍動していて、しかも子供は生きていて、なんていう普通の人にとっての「感動的な出産のシーン」などにボクは弱い、動くはずのないもの、普通あり得ないものが飛び出してくるのに通常の外科医は弱いと思う。

Images  in Clinical Medicine
PreviousPrevious
Volume 362:e40 March 18, 2010 Number 11
NextNext

Diphyllobothrium latum during Colonoscopy


あーーいやだ、いやだ、見たくない、気持ち悪い!

2010年3月19日金曜日

「NINE」を観る。

家族が旅行で、つまり家に帰っても誰もいないということで、久しぶりに外で食事をしたわけだが、ふらっと出かけた職場の近くのモールにシネコンがあり、「そうだ久しぶりに映画でもみるか」と思い、何をやっているのかまったくわからないまま、一番近い時間に開演する映画は「NINE」という題名だった。本当は「交渉人」が観たかったのだが、まあいいや、ミュージカル風で悪くなさそうな直感がした。始まるぎりぎり10分前で本当は入場できないらしいのだが、むりやり潜り込んだが、まああなた、なんとボクを含めて観客は5人ですがな。あら、しまった。これは大変な映画かもしれんねと思った。ところがですな、この映画良かったよ。ときどきあるのよね。ふらっと入った映画が大当たりということが。

イタリア映画風、あるいはイタリア映画へのオマージュ。映画が始まって15分くらいで、この主人公はフェリーニではないかと思った。テーマはよくある監督オチで、つまり映画のクランクイン間際なのに全く脚本ができていないー才能が突然枯渇した巨匠・・・というやつでしかもこの巨匠女にまるきっしだらしないヤツというやつであるが、まあ出てくる俳優がみな演技が上手い、歌が上手い、踊りが上手、美女であり妖艶であり、食い入るような2時間であった。面白かったぞ。☆三つである。女優でわかったのはペネロペ・クルスくらいだったが、流石に年をとったなと思った。というか、本来平凡な主婦が背伸びをしている姿を(これは哀れだ)体当たりで演じているとしたら、これはお見事であると言っておこう。ヒーローの母役でソフィア・ローレンのそっくりさんが登場する・・・と映写中は思っていたが、実はこれソフィア・ローレンそのものだと知ってボクは驚いた。いったい幾つなんだろう。70歳は越えていよう。次にヒーローの女神様役でよく見る女優さんが登場するがこれも後でニコール・キッドマンだと知って驚いた、なんせボクのニコールキッドマンは「めぐりあう時間たち」以来だからあれこれ10年近くたつのではないだろうか?

素晴らしい女優が数多く出演したが、でもなんといっても一番惹かれたヒロインは主演のかみさん役を演じたマリオン・コティヤールである。マリオン・コティヤールさんである。この女優はいいわ、最高。初めてイザベル・アジャーニを観たとき(たしか「アデルの恋の物語」だったと思う)のような、そこはかとない一目惚れをしてしまった。

とはいえ、この映画で一番の俳優はダントツ主人公の ダニエル・デイ・ルイスである。あれだけ多くの女から惚れられるわけだが、まあ違和感が全くない。そりゃもてるだろう・・と納得するわな、この脚本で、あの演技なら。カッコいいや。この俳優名前は初めて知ったが、あとでパンフを見ると「眺めのいい部屋 」に出ていたらしい。これはボクがヨメさんと一緒になった頃の映画だからもう20年以上前の映画だ。

というわけで、景色、建物、石畳、夜のローマ、海岸線、アルファロメオ(だと思うが、大事な小道具であった)と見所満載の映画である。しかし、しかしだよ。テーマも場所もローマ、イタリア、おそらくフェリーニへのオマージュなんだけど、映画そのものはアメリカ映画なんだね。ヨーロッパ映画の深みは全くといっていいほどない。こんなにイタリア風なのに、アメリカ映画。面白かったし、映像と歌は素晴らしかったので記憶には残ると思うが、どんな内容の映画だったかはしばらくすると忘れてしまうだろう。パンフであとで知ったのだが、この映画はやはり元々はフェリーニの「81/2」が元になっているらしい。概略いえば「81/2」がもとでブロードウエイで80年代に「NINE 」というミュージカルが流行ったらしい。この映画はそのミュージカルを映画に焼き直しということだ。映画→ミュージカル→映画というわけだ。ミュージカルであるから、やはりアメリカ化してるのね。

面白い映画ではあった。しかし記憶には残らんだろうな。それで思い出したけど、前回「ふらっと観た映画で感動した映画」はスペイン映画の「あなたになら言える秘密のこと」だったのだが、これならストーリーは直ぐに思い出せます。もう5年くらいたつけどね。一回しかみてないけど、この映画は21世紀になって観た映画のなかでベスト3に入ると今も思う。素晴らしい映画、重いけど。

遷延性骨折治癒の超音波治療




一日20分

セーフス: 12500点12ヶ月治療
セーフス: 5000点3ヶ月治療

2010年3月14日日曜日

ハンス・クリバースの新しい幹細胞因子:Lgr6(サイエンス最新号)

Science 12 March 2010:
Vol. 327. no. 5971, pp. 1385 - 1389
DOI: 10.1126/science.1184733

Reports

Lgr6 Marks Stem Cells in the Hair Follicle That Generate All Cell Lineages of the Skin

Hugo J. Snippert,1,* Andrea Haegebarth,1,* Maria Kasper,2 Viljar Jaks,2 Johan H. van Es,1 Nick Barker,1 Marc van de Wetering,1 Maaike van den Born,1 Harry Begthel,1 Robert G. Vries,1 Daniel E. Stange,1 Rune Toftgård,2 Hans Clevers1,

Mammalian epidermis consists of three self-renewing compartments: the hair follicle, the sebaceous gland, and the interfollicular epidermis. We generated knock-in alleles of murine Lgr6, a close relative of the Lgr5 stem cell gene. Lgr6 was expressed in the earliest embryonic hair placodes. In adult hair follicles, Lgr6+ cells resided in a previously uncharacterized region directly above the follicle bulge. They expressed none of the known bulge stem cell markers. Prenatal Lgr6+ cells established the hair follicle, sebaceous gland, and interfollicular epidermis. Postnatally, Lgr6+ cells generated sebaceous gland and interfollicular epidermis, whereas contribution to hair lineages gradually diminished with age. Adult Lgr6+ cells executed long-term wound repair, including the formation of new hair follicles. We conclude that Lgr6 marks the most primitive epidermal stem cell.

糖尿病経口治療薬のファーストチョイス:ビグアナイドだね

メデット(250mg)   2T 2x MA    9.70 x 2 x 30=600円/月  メトホルミンでありビグアナイド
ボグリボース(0.3mg)  3T 3x    36.50 x 3x30= 3285円/月  ボグリボースでありαグルコシダーゼ阻害薬
アマリール   3T 3x   22.5 x 3x30=2025円/月  第三世代のSU製剤
アクトス(15mg)   2T 2x MA  98.60 x 2 x 30= 5916円/月  チアゾリン


これはもうビグアナイドが飛び抜けて安いではないか!肥満・糖尿病でファーストチョイスはメデットが良い。昨年適応が変わり、欧米並みにSUと無関係に使えるようになったし、乳酸アシドーシスはないし、腹満・放屁はないし、便秘もないし、低血糖もないし、のみやすい。これしかないではないか。便秘・腹満は人気がないぞ、職業婦人・おばさんには。

3割負担だと月180円で済むのだ。こんなに良い薬はないぞ。これでHbA1Cを7ちょっと割るくらいで維持したらいいのではいだろうか?ACCORD見てるとそう思うぞ。

2010年3月13日土曜日

2型糖尿病への第一選択薬:日本で人気の薬

2型糖尿病への第一選択薬:日本で人気の薬

(1)肥満を伴う2型糖尿病への第一選択薬人気順

全体メルビン24.5%
糖尿病内科メルビン43.3%
循環器内科アクトス メルビン23.8%
消化器内科アクトス メルビン29.3%
その他科目アマリール22.5%




成分(一般名) メトホルミン塩酸塩

製品例 メルビン錠250mg、グリコラン錠250mg、メデット錠250mg ・・そ の他(ジェネリック) & 薬価

区分 糖尿病用剤/ビグアナイド系/経口糖尿病用剤

我が病院ではメデットということになる。ビグアナイドである。乳酸アシドーシスが心配だった、かって。

(2)肥満を伴わない2型糖尿病への第一選択薬人気順

全体アマリール29.1%
糖尿病内科アマリール31.3%
循環器内科アマリール28.7%
消化器内科アマリール28.0%
その他科目アマリール29.3%

2010年3月7日日曜日

mtヘテロプラスミーについて

mtヘテロプラスミーの論文で最も面白いデータは下の表だ。(ダブルクリックで読める大きさになるだろう。)

なぜヘテロプラスミーがおこるか?3つの仮説をまず立てる。

(1)父親由来のmtゲノムが理由(これは従来の定説に真っ向から反する)
    下の表の上から6行がこの仮説を棄却する、父のアリル2は子供に全く移行していない。

(2)母親由来のゲノムが理由
    7行目〜8行目は綺麗に伝わっている

  ただこれだけではない
(3)母親由来のゲノムが理由・・・胚発生期の分配のアンバランス
     9行目以下はどうやって起こったのか?











この論文は面白い!気が利いた中学生なら理解できるくらい明晰な書きぶりである。いつも思うがVogelsteinのところから出る論文はどうしてこんなに読みやすいのだろうか?今思えば癌のゲノムシークエンスの論文が2〜3年前にいろんな研究室からでたが、いずれもひどく読みにくい論文であった。特にサンガー系のイギリスからでる論文はデータが多すぎて理解するのが大変であった。一方、Vogelsteinのそれはいつも読みやすい。これはやはり誰に論文を読ませたいのか、どのレベルの読者まで想定しているのか、その意識の差としか思えない。臨床系の医者にも読めるような、あるいは気の利いた中学生なら読めるような工夫。余計なデータを捨象しなければ出来ない技であるが、いい加減にはできない技でもある。易しくすることは難しいのである。

実はまだ読み終わっていない。後半には何がかかれているのか?アブストラクトにある「癌患者の血清診断」あるいは「法医学」という言葉に惹かれる。うずうずする。朝の回診が終わったので、これから珈琲でも飲みながら、琵琶湖マラソンでも診ながらよみませふ。

2010年3月5日金曜日

久しぶりのVogelsteinのnatureはmtヘテロプラスミー

Nature advance online publication 3 March 2010 | doi:10.1038/nature08802; Received 4 November 2009; Accepted 6 January 2010; Published online 3 March 2010

Heteroplasmic mitochondrial DNA mutations in normal and tumour cells

Yiping He1, Jian Wu1, Devin C. Dressman1, Christine Iacobuzio-Donahue2, Sanford D. Markowitz3, Victor E. Velculescu1, Luis A. Diaz Jr1, Kenneth W. Kinzler1, Bert Vogelstein1 & Nickolas Papadopoulos1

  1. The Ludwig Center for Cancer Genetics and Therapeutics and The Howard Hughes Medical Institute at The Johns Hopkins Kimmel Cancer Center, Baltimore, Maryland 21231, USA
  2. Department of Pathology, Johns Hopkins Medical Institutions, Baltimore, Maryland 21231, USA
  3. Departments of Medicine, and Ireland Cancer Center, at Case Western Reserve University and Case Medical Center of University Hospitals of Cleveland, and The Howard Hughes Medical Institute, Cleveland, Ohio 44106, USA

Correspondence to: Bert Vogelstein1Nickolas Papadopoulos1 Correspondence and requests for materials should be addressed to B.V. (Email: vogelbe@jhmi.edu) or N.P. (Email: npapado1@jhmi.edu).

The presence of hundreds of copies of mitochondrial DNA (mtDNA) in each human cell poses a challenge for the complete characterization of mtDNA genomes by conventional sequencing technologies1. Here we describe digital sequencing of mtDNA genomes with the use of massively parallel sequencing-by-synthesis approaches. Although the mtDNA of human cells is considered to be homogeneous, we found widespread heterogeneity (heteroplasmy) in the mtDNA of normal human cells. Moreover, the frequency of heteroplasmic variants varied considerably between different tissues in the same individual. In addition to the variants identified in normal tissues, cancer cells harboured further homoplasmic and heteroplasmic mutations that could also be detected in patient plasma. These studies provide insights into the nature and variability of mtDNA sequences and have implications for mitochondrial processes during embryogenesis, cancer biomarker development and forensic analysis. In particular, they demonstrate that individual humans are characterized by a complex mixture of related mitochondrial genotypes rather than a single genotype.

久しぶりのVogelsteinのnatureはミトコンドリアのヘテロプラスミーの度合いが正常細胞、癌、個人差、組織間で違うことをパラレル・シークエンスで明らかにしたというものだ。同じ個人でも組織によって違うというのが面白い(ボクには個人的に)。ミトコンドリアは一細胞中に数百のコピーがある。細胞分裂に際しては、通常のゲノムDNAのように1:1に正確に分配されるわけではなく、そこにあるコピーーがえいや!と2分され、分配されてしまう。へテロプラスミーとは一細胞中の多くのミトコンドリア遺伝子コピーがヘテロである現象が病気に関連することを言う。親からヘテロ状態がそのまま伝わるのだが、受精卵子の初期状態は同じ母親でも異なるわけだ。突然変異mtゲノムが多く含まれる卵子とそうでない卵子があるということである。(言わずもがなであるが、精子はミトコンドリアゲノムを持たないので、ミトコンドリアは母性遺伝である)変異mtゲノムコピーが多い卵細胞が受精した場合、その子孫は当然病気が重くなる。その姉妹はたまたま変異コピーが少ない卵細胞由来の子供だったとしたら病気は軽いのだ。卵細胞にどれくらいの割合で変異ゲノムコピーが移るかは、確率の問題であり、理論的に半分が遺伝すると言った単純なものではないのがミトコンドリア遺伝なのだ。

ヘテロプラスミーは臨床的にはたとえばミトコンドリア脳筋症の母系遺伝の世代間の表現度の差を説明するのに有用である。というかそもそもミトコンドリア脳筋症の研究などがなければヘテロプラスミーなど気が付かれなかった現象なのだと思う。人類遺伝学の中でも結構マニアックな領域であり、当然研究者も少ないはずだ。今後ヘテロプラスミーが話題になる時代がくるのか?面白いかもしれんな。