2007年12月15日土曜日

乳癌の分子病理学的分類:革命が進行中なのか!!

Recurrent gross mutations of the PTEN tumor suppressor gene in breast cancers with deficient DSB repair

Nature Genetics : Published online: 9 December 2007
おいおいそんなに突っ走って大丈夫か!・・・というのがこのごろの乳癌である。12月9日のon line Nature Genetics ではDNA二本鎖修復機構が欠失した乳癌(basal cell type)において高頻度にPTENが突然変異をおこしていることが報告されている。コロンビア大学と北欧(フィンランド・スウェーデン)グループによるものである。ここで前提として用いられている用語がbasal cell typeであることが面白い。こんな分類用語は、まだ標準的な病理分類では採用されてはいないはずなのだ。この言葉がア・プリオリに用いられる論文がNature Geneticsに採用されることが極めて興味深い。これは一種の革命なのだ。分子病理学が組織病理学から離脱した記念すべき論文であろうと私には思える。エキサイテイングである。

さて、予後予測を目的としたマイクロアレイ解析報告は数多く見られるが、2000〜2003年にスタンフォード大学のT. Sorlieらは115人の乳癌症例から534遺伝子を抽出し、遺伝子発現レベルから乳癌を(1)basal-like、(2) ERBB2-overexpressing、(3) normal breast tissue-like、(4)luminal-A、(5) luminal-Bの5サブタイプに分類し、それぞれの長期予後が有意に異なることを報告した。100年近く続いた組織形態による乳癌病理分類を凌駕するものとして提唱されたものであり、エストロゲン陰性乳癌は(1)(2)(3)のいずれかに属し、陽性乳癌は(4)(5)に分けられ、具体的には(1)(2)群は生存期間が短く、一方で(4)群はあらゆる患者群のなかで最も予後がよい。以下の論文がその後の一連の研究成果である。
  1. Perou CM, Sorlie T, Eisen MB, et al. Molecular portraits of human breast tumours. Nature;406:747-52.2000.
  2. Sorlie T, Perou CM, Tibshirani R, et al. Gene expression patterns of breast carcinomas distinguish tumor subclasses with clinical implications. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America;98:10869-74.2001.
  3. Sorlie T, Tibshirani R, Parker J, et al. Repeated observation of breast tumor subtypes in independent gene expression data sets. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America;100:8418-23.2003.
今後の病理学会の対応を注意深く見守りたい。




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