2008年1月31日木曜日

血管内グラフティング

血管内グラフティングについてもう少し詳しく見てみよう。

72才男性。 TIAの既往があり内頸動脈の内膜除去が行われている。脳血管障害を持つ患者の10%には潜在性のAAAがあるため腹部エコーを施行したところ5.7cm径の腎下AAAを発見。開腹手術の適応とともに血管内グラフティングの適応が考えられた・・という設定である。

AAAの最近の評価は5.5cm径を境界とする。あるいは一年で1cmの増加。(Sabistonにも書いてある。不明にして私は日本人の境界値を知らない)。一旦破裂すると75%は病院にたどり着くまでに死亡、また90%は手術台にたどり着けない。更に術死は40%でありここのところ改善傾向にない。[日本の信頼できる情報が欲しい。おそらく日本の数字はこれよりはかなり良いことが予測されるから・・]また医療費も膨大でありたとえ合併症がない理想的例でもイギリスの報告では126万円かかる。

さて、手術かグラフトかであるが2つの報告があり(1)EVAR trial 1 (n=1082)[Lancet 2005](2)DREAM trail (n=351) [NEJM 2005]その両者の結果は同じである。すなわち・・・
  1. 一ヶ月以内の死亡率はグラフトが低い
  2. 動脈瘤関連死亡率は4年生存率ではグラフト群が半分と良好
  3. 全死亡率は、変わらない。
  4. グラフト群は治療後の処置回数(re-interevention)が3倍以上と多い
これなら(手術と比較しても非劣性に近いかな)グラフトがいいと思う。ボクがAAAになったらまよわずグラフトですな。

なお更に無処置とグラフトを比べた報告があり「EVAR trial 2(n=338)[Lancet 2005]ここでは、対象者が「手術不適格例」と条件が極めて悪いサブグループであるが、なんと二群には差がないのである。病状が進んだらかえってなにもしない方がいいのだろうな。

なおグラフトの適格条件というのがあり、画像上結構いろんな制限項目があることは覚えておくべきであろう。

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