2009年5月20日水曜日

門脈内気種症


先ずは上記のCT像である。深夜の救急に「イレウス」の触れ込みで搬送されてきた老女。意識はすでに怪しい。ショック状態である。この方、お昼頃までは単にお腹を痛がっていただけだったらしい。既往に腹部手術歴と数回の腸閉塞があるが、そのたびに非観血的に治癒していたとのこと。看護婦「とにかく入院ですね・・」私「ちょっと、待て。これかなりやばいよ」といって取った緊急CTである。とにかくのけぞってしまった。直ぐにわかったのは「手が出ない」ということであり、祈るような気持ちで大学病院に連絡した。「肝の門脈内気種ですか・・・」と一瞬の逡巡があったのは間違いないが、とにかく受け入れてくれた。家族へのムンテラはこれはもう厳しいものであった。看護婦に一緒について行ってもらったが、帰ってきた話では手術は家族が諦めたとのことであった。私が当事者家族であっても、手術は望まないケースであろう。翌日の昼ころ亡くなったとの報告が届いた。このようなラッシュな経過は一般のイレウスでは珍しいことだ。あとで放射線科のドクターに聞くと腸管壁内気種もあり、重症イレウスのターミナルステージであるとのことである。問題はここまでどうして速かったのかということである。ボクはおそらくこのイレウスは「上腸間膜動脈閉塞症あるいは血栓症」によるいわゆる abdominal anginaもっといえば「おなかの心筋梗塞」によるものではないかと考えている。

それにしてもこの写真、モニター画面を見ていたのだが、現れた瞬間からボクの身体は凍り付いた。忘れられない写真である。30年くらい前学生のころの小児外科の講義で「NEC」という病態・・・壊死性腸炎だったけ?を聞いたのを思い出した。いくつかの病態とともに「NEC」を速やかに診断し、助けられるかどうかがその施設の小児外科のレベルを示すという言葉が思いだされた。

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