2009年7月26日日曜日

宮園浩平研の最新Nature論文

宮園さんのところからmiRNAの発表があった。一応敬意を表して読んでおこう。最近宮園研はこんなこともやっているのか.

Nature 460, 529-533 (23 July 2009)

細胞: p53によるマイクロRNAプロセシングの調節

Hiroshi I. Suzuki1, Kaoru Yamagata2,3, Koichi Sugimoto4, Takashi Iwamoto5, Shigeaki Kato2,3 & Kohei Miyazono1

  1. Department of Molecular Pathology, Graduate School of Medicine, University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan
  2. Institute of Molecular and Cellular Biosciences, University of Tokyo, 1-1-1 Yayoi, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0032, Japan
  3. ERATO, Japan Science and Technology Agency, 4-1-8 Honcho, Kawaguchisi, Saitama 332-0012, Japan
  4. Division of Hematology, Department of Internal Medicine, Juntendo University School of Medicine, 2-1-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8421, Japan
  5. The Center for Education in Laboratory Animal Research and Department of Biomedical Sciences, College of Life and Health Sciences, Chubu University, 1200 Matsumoto-cho, Kasugai, Aichi 487-8501, Japan

Correspondence to: Kohei Miyazono1 Correspondence and requests for materials should be addressed to K.M. (Email: miyazono@m.u-tokyo.ac.jp).

マ イクロRNA(miRNA)は、さまざまな生理過程や病理過程にかかわる、遺伝子発現の重要な転写後調節因子として注目されている。miRNAは、がんの 発生過程でがん抑制因子、発がん因子の両方の働きをしうるが、ヒトのがんではしばしばmiRNAの広範な発現量減少がみられ、miRNAレベルの広範な低 下は細胞の形質転換とがん形成を促進する。このことは、腫瘍抑制に低分子RNAが固有の意味をもつことを示している。しかし、がん抑制因子ネットワークと miRNA生合成機構との結びつきは、これまで詳しく研究されていない。今回我々は、重要ながん抑制因子であるp53がDNA損傷に応答して、増殖抑制作 用をもつmiR-16-1、miR-143、miR-145など数種類のmiRNAの転写後成熟を促進することを明らかにした。HCT116細胞やヒト二 倍体繊維芽細胞では、p53はDEADボックスRNAヘリカーゼp68(DDX5ともよばれる)との結合を介してDroshaプロセシング複合体と相互作 用し、miRNAの一次転写産物から前駆体へのプロセシングを促進する。また、転写因子として不活性なp53変異体は、Drosha複合体とp68の機能 的相互作用を阻害してmiRNAプロセシング活性を弱めることがわかった。これらの知見は、p53が制御するがん抑制プログラムに、転写調節とは独立した miRNA生合成調節機能が組み込まれていることを示唆している。今回の研究により、p53がmiRNAプロセシング過程の中でこれまで知られていなかっ た役割をもつことが判明した。このことは、がんの生物学で重要な意味をもつ可能性がある。

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