2009年10月25日日曜日

感染性腸炎とGuillain-Barré症候群

サルモネラ腸炎

33才男子入院6日でようやく下痢が収束してきた。高熱と20回を越える頻回の下痢、ときに嘔気嘔吐。なぜか腹痛はないことを主訴に入院してきた。入院時は「下痢・嘔気嘔吐」があるので直ちに便培を出し、感染性腸炎として絶食・点滴それに抗生物質を投与したが、なかなか下痢が収まらない。二日目も40度を超える熱である。変わったものを食べた既往、家族や同僚の同時発症もない。きけば入院一週間まえから軽度の下痢はあったという。起炎菌があるとすればキャンピロかサルモネラが多いのだが「卵」や」「鶏肉」なんかどの食事にも入っている可能性があるので実は思い出してもらえることは少ないのだそうだ。事実彼も首をひねっている。4日目に便培の結果が帰ってきた。サルモネラのO9だそうだ。抗生剤は中止した。食事を再開した。これは待つしかない。「肛門が痛い」というので5日目の便がほとんど水様であることを確認して止痢剤をようやく出した。出したくなかったけど・・・。今朝はようやく便が形になってきたので直ちに止痢剤を中止。

ギラン・バレーが心配なのはキャンピロバクターであることは忘れてはならない。うろ覚えだったので、サルモネラと聞いたときGuillain-Barré症候群が一瞬頭をよぎったが、神経細胞と共通抗原を持つのはキャンピロであることを知っていれば余計な心配はいらない。もしキャンピロであった場合も頻度は高くないので患者に余計な心配を与えたくないが、外来に回った後にpolyneuropathy症状が出た場合の対処はそれとなく伝えておく必要があるだろう。

逆にGuillain-Barré症候群を念頭におくべき先行感染症でボクが覚えておくべき疾患はサイトメガロウイルス、EBウイルスなどのウイルスや、マイコプラズマ、キャンピロバクター。症状はポリニューロパチーであり末梢性の上行性対称性の「運動麻痺」であり感覚麻痺が前面に出るわけではないことはかなり特異的である。なぜならこんな症状を外来でみることは極めて希であることが想定できるから。外来やっててstocking typeの「運動障害」なんてまず見ないでしょう、我々一般臨床医は。見逃してはいけない「2−3週前に風邪ひきませんでしたか?」。初期治療「γグロブリン大量療法」が効くかもしれないし・・・。

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