2010年3月19日金曜日

「NINE」を観る。

家族が旅行で、つまり家に帰っても誰もいないということで、久しぶりに外で食事をしたわけだが、ふらっと出かけた職場の近くのモールにシネコンがあり、「そうだ久しぶりに映画でもみるか」と思い、何をやっているのかまったくわからないまま、一番近い時間に開演する映画は「NINE」という題名だった。本当は「交渉人」が観たかったのだが、まあいいや、ミュージカル風で悪くなさそうな直感がした。始まるぎりぎり10分前で本当は入場できないらしいのだが、むりやり潜り込んだが、まああなた、なんとボクを含めて観客は5人ですがな。あら、しまった。これは大変な映画かもしれんねと思った。ところがですな、この映画良かったよ。ときどきあるのよね。ふらっと入った映画が大当たりということが。

イタリア映画風、あるいはイタリア映画へのオマージュ。映画が始まって15分くらいで、この主人公はフェリーニではないかと思った。テーマはよくある監督オチで、つまり映画のクランクイン間際なのに全く脚本ができていないー才能が突然枯渇した巨匠・・・というやつでしかもこの巨匠女にまるきっしだらしないヤツというやつであるが、まあ出てくる俳優がみな演技が上手い、歌が上手い、踊りが上手、美女であり妖艶であり、食い入るような2時間であった。面白かったぞ。☆三つである。女優でわかったのはペネロペ・クルスくらいだったが、流石に年をとったなと思った。というか、本来平凡な主婦が背伸びをしている姿を(これは哀れだ)体当たりで演じているとしたら、これはお見事であると言っておこう。ヒーローの母役でソフィア・ローレンのそっくりさんが登場する・・・と映写中は思っていたが、実はこれソフィア・ローレンそのものだと知ってボクは驚いた。いったい幾つなんだろう。70歳は越えていよう。次にヒーローの女神様役でよく見る女優さんが登場するがこれも後でニコール・キッドマンだと知って驚いた、なんせボクのニコールキッドマンは「めぐりあう時間たち」以来だからあれこれ10年近くたつのではないだろうか?

素晴らしい女優が数多く出演したが、でもなんといっても一番惹かれたヒロインは主演のかみさん役を演じたマリオン・コティヤールである。マリオン・コティヤールさんである。この女優はいいわ、最高。初めてイザベル・アジャーニを観たとき(たしか「アデルの恋の物語」だったと思う)のような、そこはかとない一目惚れをしてしまった。

とはいえ、この映画で一番の俳優はダントツ主人公の ダニエル・デイ・ルイスである。あれだけ多くの女から惚れられるわけだが、まあ違和感が全くない。そりゃもてるだろう・・と納得するわな、この脚本で、あの演技なら。カッコいいや。この俳優名前は初めて知ったが、あとでパンフを見ると「眺めのいい部屋 」に出ていたらしい。これはボクがヨメさんと一緒になった頃の映画だからもう20年以上前の映画だ。

というわけで、景色、建物、石畳、夜のローマ、海岸線、アルファロメオ(だと思うが、大事な小道具であった)と見所満載の映画である。しかし、しかしだよ。テーマも場所もローマ、イタリア、おそらくフェリーニへのオマージュなんだけど、映画そのものはアメリカ映画なんだね。ヨーロッパ映画の深みは全くといっていいほどない。こんなにイタリア風なのに、アメリカ映画。面白かったし、映像と歌は素晴らしかったので記憶には残ると思うが、どんな内容の映画だったかはしばらくすると忘れてしまうだろう。パンフであとで知ったのだが、この映画はやはり元々はフェリーニの「81/2」が元になっているらしい。概略いえば「81/2」がもとでブロードウエイで80年代に「NINE 」というミュージカルが流行ったらしい。この映画はそのミュージカルを映画に焼き直しということだ。映画→ミュージカル→映画というわけだ。ミュージカルであるから、やはりアメリカ化してるのね。

面白い映画ではあった。しかし記憶には残らんだろうな。それで思い出したけど、前回「ふらっと観た映画で感動した映画」はスペイン映画の「あなたになら言える秘密のこと」だったのだが、これならストーリーは直ぐに思い出せます。もう5年くらいたつけどね。一回しかみてないけど、この映画は21世紀になって観た映画のなかでベスト3に入ると今も思う。素晴らしい映画、重いけど。

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