2010年6月25日金曜日

機能的偽遺伝子、2年ぶり続報:PTENとkRAS

奇しくも二年前の梅雨時pseudogeneが機能的に働く可能性を示唆する論文がNatureに3報同時に出たこと、その最初の一報が徳島大学からのものであったことを引用した。下の記事である。今でも鮮烈に覚えている、なぜかというとこの報告は小生がずっと抱いていたアイデアの初めての実証だったから・・・


2008年6月18日水曜日

おっ とどっこい偽遺伝子は現役だった!

死んだふりをしている偽遺伝子が実はmiRNA(siRNA)の源であったという報告がありました。昨日の昼、「偽遺伝子」のことを考えていたばかりだっ たので、少し驚くと共に研究のアイデアが沸々とわいてきましたぜ。この偽遺伝子の報告はNatureに同時に三報載り、もっとも早いのは徳島大学からの報 告でした。


今週号のNatureにはその癌関連遺伝子版が掲載された。PTENとkRASの偽遺伝子から発現したmiRNAが本来の遺伝子発現産物に干渉する・・・それが発癌に関連するという話である。

アイデア一発だったから、2年前論文が発表されたと同時に癌の研究者を含めて多くの人間がスタートラインに集まったと思う。よーいドンから2年かかって(実際には昨年9月のsubmitされているから一年半〜)ここまで来ている。直ぐには見つからなかったんだね。というのが感想である。

これから2年くらいはpseudogeneとmiRNAの組み合わせ論文が花盛りとなるだろう、特に癌生物学では。ホンモノは誰だ・・・興味は尽きない。

明らかにしてもらいたいこと。
  1. 偽遺伝子発現の実相:その機序
  2. センス側とアンチセンス側の発現の違いをきちんと実証できる実験技術の確立(もちろん臨床例で!)
  3. mRNA発現のための装置ープロモーター等々の構造解析
  4. 転写単位
  5. 発現のオン・オフの機序:組織特異性、疾病特異性、特に癌化に先立つ発現の機序
  6. ゲノムのダイナミックな改変:増幅、欠失、逆位、転座と偽遺伝子発現
等々いろいろあるわな。

Article

Nature 465, 1033-1038 (24 June 2010) Received 21 September 2009; Accepted 22 April 2010

A coding-independent function of gene and pseudogene mRNAs regulates tumour biology

遺伝: 遺伝子および偽遺伝子mRNAのタンパク質コーディングと は無関係な機能が腫瘍の生物学的特性を調節している

Laura Poliseno1,4,5, Leonardo Salmena1,4, Jiangwen Zhang2, Brett Carver3, William J. Haveman1 & Pier Paolo Pandolfi1

  1. Cancer Genetics Program, Beth Israel Deaconess Cancer Center, Departments of Medicine and Pathology, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, Massachusetts 02215, USA
  2. FAS Research Computing & FAS Center for Systems Biology, Harvard University, Cambridge, Massachusetts 02138, USA
  3. Human Oncology and Pathogenesis Program, Department of Surgery, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, 1275 York Avenue, New York, New York 10021, USA
  4. These authors contributed equally to this work.
  5. Present address: Department of Dermatology, New York University Medical Center, New York, New York 10016, USA.

メッセンジャーRNA(mRNA)の広く認められている役割は、コードしているタンパク質情報をタンパク質合成の場に伝えることである。しかし、マイクロ RNAがRNAと結合することから、我々は、RNAはそのタンパク質コード機能とは別に調節的な役割をもち、それがマイクロRNAの結合と競合する能力に 依存しているのではないかと考えた。本論文では、RNAのタンパク質コード機能とは無関係の役割を示すモデルとして、 PTEN 腫瘍抑制遺伝子およびその偽遺伝子 PTENP1 によって作られるmRNAの間の機能的関係を調べ、この相互作用がもたらす極めて重要な結果について報告する。 PTENP1 は、PTENの細胞内レベルを調節可能であり、増殖抑制作用を示すため、生物学的に活性であることがわかった。また、ヒトがんでは PTENP1 座位が選択的に失われていることも明らかになった。我々はこの解析を、がん遺伝子 KRAS などの、偽遺伝子をもつほかのがん関連遺伝子にも拡大した。また、 PTEN のようなタンパク質コード遺伝子の転写物は、生物学的に活性であることも示す。これらの知見は、発現された偽遺伝子がタンパク質コード遺伝子の発現を調節 可能であることから、偽遺伝子が新規の生物学的役割をもつことを示しており、mRNAにタンパク質コーディング以外の機能があることを明らかにしている。


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