2011年5月10日火曜日

ピロリが3日前に初感染?:AGMLの22歳女子

平成23年5月7日の昼から上腹部痛が始まり嘔気・嘔吐を主訴とする22歳女子がやってきた。どちらかというと嘔気が主訴。理学的に季肋部に圧痛を認める。発熱、下痢なくまた薬剤服用・変わった食べ物(イカ、サバ、ユッケ等々)食歴なし。ゴールデンウイークが終わると「胃十二指腸潰瘍の季節」が始まる。ここ最近とみにその傾向は強い。この22歳女子妊娠もなさそうなので直ちに胃カメラだ。その所見が・・・・・
  1. AGML(急性胃粘膜病変)+十二指腸炎
  2. ヘリコチェック(ウレアーゼ法):強陽性(生検組織が付着した瞬間→赤色)
  3. 尿中抗ピロリ抗体:陰性
  4. 22歳であり今回が初めての上腹部痛であり更には初の胃内視鏡検査
というわけで22歳女子の上腹部痛の原因が感染性急性胃十二指腸炎(→AGML)でありその原因菌がピロリ菌であることがほぼ確定という患者に遭遇したわけだ。

おそらく感染はここ3〜4日以内に起こったのではないかと思われる。症状の発現時期と抗ピロリ抗体が陰性であることが強くそのことを示唆する。一方胃粘膜病変のウレアーゼ強陽性はこの胃内に膨大な数のピロリ菌が存在することを示唆する。抗体が出来る暇もないくらいの急性発症というわけだ。

ちなみに初の胃内視鏡とわざわざ書いたのは、内視鏡によるピロリ感染→AGMLではないことをいいたかったわけだ。昔のAGMLには「内視鏡後」というのが意外に多くて、その原因が内視鏡を介したピロリ感染ではなかったかと疑われているのだそうだ。

小生がこのような症例を診るのは本日が初めてである。理屈ではわかるし文献にあるのも(あとで)知ったが、ピロリ菌によるAGMLというのは小生にとっては少々驚きであった。

ピロリ菌でノーベル賞を受賞したオーストラリアのマーシャルが初めてこの菌を見つけ培養した後、自ら培養液を飲んで胃病変を発症させたという有名な話は知っていたが、よく考えるとマーシャルの例は急性胃病変だったわけだな。ちょっとやばい服用実験だったかもしれないな、マーシャルさん。

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