2012年4月3日火曜日

リンパ管腫二例目は鼠径部腫瘤だった。

めったに見ることのない病気が立て続けにくることがある。小生の場合最近ではBaker嚢胞がそうであった。他にも調べればいくつかはあるだろう。
鼠径部腫瘤の中年女性がやって来たのは、先の頸部腫瘤の方の翌日であった。この腫瘤も先の頸部腫瘤と同様、それまで数十年存在には気がついていたものが、この3週間で急に大きくなったという(長計60mm程度)。鼠径靱帯の下方で、丁度鼠径からルートを取ったり、あるいは血ガスの穿刺をする場所。硬く緊満している。なんだろう?最初に考えるのはやはり大腿ヘルニアである。あとはリンパ節からみの病気。エコーをするが、リンパ節や腸管ではなさそうである。そこでこの方にはCTを行った。CTでみると丁度閉鎖孔ヘルニアが恥骨筋の表在に現れたかのようである。これも下部組織が気になる。

でもなんか似ている。頸部のリンパ管腫に似ている。そこで刺してみたのだ。そうすると、まったく同様の黄色淡明液が30ml程度引けた。ヘルニアの可能性は一応否定的だったとはいえ、あとから考えるとよく刺したものだ。

診断は左鼠径部リンパ管腫

これはとても珍しいらしい。こんなのもあるのだという症例報告だ。下の引用は臨床皮膚科のもの。

臨床皮膚科 ISSN 0021-4973 (Print) ISSN 1882-1324 (Online) 64巻4号(2010.04)P.315-318(ISID:1412102554)

症例報告
左鼠径部に生じた後天性嚢胞状リンパ管腫の1例

西本 和代 ※1
舩越 建 ※1
橋本 玲奈 ※1
齋藤 昌孝 ※1
谷川 瑛子 ※1
大山 学 ※1
石河 晃 ※1

※1 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室

【キーワード】 嚢胞状リンパ管腫,鼠径部,成人,外科的切除


要約 44歳,男性.左鼠径部に生じた胡桃大の皮下結節が急速に増大した.初診時,左鼠径部に径 6cm大の皮下腫瘤を認め,CTでは皮下に限局し,周囲との境界が明瞭な嚢腫を認めた.全身麻酔下に切除し,術中にリンパ液様の嚢胞内容液を認めた.病理 組織学的には,複数の嚢胞を有する結節性の病変で,嚢胞壁はD2-40染色で陽性であった.腫瘤内容液の所見と病理組織学的所見から嚢胞状リンパ管腫と診 断した.嚢胞状リンパ管腫は,通常は頸部・腋窩に生下時から2歳までに発症するが,成人発症はきわめて稀である.その成因は不明だが,組織学的に多彩な炎 症細胞浸潤,線維化を伴う肉芽腫を認め,顕症化に炎症が関与していたことが示唆された.

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