2015年4月1日水曜日

末梢動脈疾患(PAD):米国最新のガイドライン

米国心臓病学会(ACC)は3月20日、無症候性末梢動脈疾患(PAD)や跛行を来した患者の管理について、米国血管外科学会が作成したガイドラインを紹介した。Journal of Vascular Surgery誌に発表されたもので、疫学から診断、推奨される検査、無症候性PAD管理など、10の要点をまとめている。詳細は下記の通り。  

【PAD管理に関するガイドライン10の要点】 

  1. 米国のPAD患者は推定800-1200万人。PADは年齢と密接に関連し、40歳以上の有病率は0.9-14.5%にのぼる。高齢化や高い喫煙率、生活習慣病(糖尿病、高血圧、肥満)の増加などにより、PAD有病率はさらに増えていくと想定される


  2. 症候性PADでは間欠性跛行や重症虚血肢などを発症する。神経性跛行と類似するものが多いが、神経性跛行とPADによる間欠性跛行と違いは、(1)神経原性跛行の筋症状はしばしば腰から下肢に放散する、(2)神経根性疼痛は荷重や姿勢の変化で誘発されやすい――などが挙げられる。


  3.  PADの確定診断は、血管造影よりも足関節/上腕血圧比(ABI)(ABI≦0.9)を測定する。ABI≧1.4は動脈の弾性低下と石灰化を疑い、足趾上腕血圧比(TBI)で確認する(TBI≦0.7でPADと診断)。PADの症状はあるがABIが正常な場合は、運動後のABIを何度か計測することで診断できる。ABI>1.4または<0.9は、主要心疾患事象リスク増加と関連する


  4. 血行再建を考慮している症候性患者について、動脈不全の定量化や閉塞レベルの特定を行う際は、非侵襲的生理学検査(局所血圧や容積脈波の測定)や解剖学的画像検査(動脈二重エコー、CTまたはMR血管造影、侵襲性血管造影)を推奨する


  5.  無症候性PAD管理は、危険因子の是正(禁煙、PAD悪化の徴候についての教育など)を中心とする。抗血小板療法やスタチン投与を推奨するに足るエビデンスはない。画像から得られる血行力学的数値にかかわらず、侵襲的な治療は推奨しない


  6. 間欠性跛行を伴うPAD患者の管理は、危険因子の是正(HbA1c<7.0%、アスピリン81-325mg投与、β遮断薬投与による高血圧管理など)とQOL改善を中心とする。薬物治療はシロスタゾール(心不全歴の無い患者に1日2回100mg)、ペントキシフィリン(シロスタゾール禁忌患者に1日3回400mg)、ラミプリル(1日10mg)などを検討する


  7. 運動療法は、PDA患者へのQOL治療の中心となる。指導者を付けた運動プログラムを第一選択とするが、指導者がいない場合は家庭での運動(30分間歩行を週3-4回が目標)でもよい。血行再建術後の患者にも運動を推奨する。年1回のABI測定も有益


  8. 間欠性跛行を起こす限局性の大動脈腸骨動脈疾患、総腸骨動脈または外腸骨動脈の疾患に対しては、直視下手術より血管内治療が望ましい。被覆ステントまたはベアメタルステントの使用を推奨する。びまん性大動脈腸骨動脈疾患には、血管内治療あるいは直視下手術が有益。総大腿動脈疾患がある場合は、血行再建術を推奨する


  9. 表在大腿動脈に限局する閉塞性疾患には、直視下手術よりも血管内治療を推奨する。表在大腿動脈へのステント使用は、限局性(<5cm)または中等度の長さ(5-15cm)の病変で結果が思わしくない場合に限る。間欠性跛行と関連する単発性下肢動脈疾患には、血管内治療は勧めない


  10. 間欠性跛行で血管内治療もしくは直視下手術を受けた全ての患者には、最適の内科療法を行うべきである。抗血小板療法(アスピリンまたはクロピドグレル)は血管内治療後、最低30日間は必要となる。末梢血流再建術を受けた全ての患者においては、抗血小板療法(アスピリン、クロピドグレルまたは2剤の併用)を行うべき





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