HbA1cというのはボクにとってはいつの間にか現れたにくいヤツ・・・であった。中年外科医にとっては大抵そうであろうが、学生の頃は習ったことが無く、忙しい臨床修行中は糖尿のことなんて等閑視。いつしか外来にでる身分くらいになって、あれこんなのがあるのか。そんな感じである。面白いなと思ったのは「過去2〜3ヶ月の平均血糖値を体現する」という性質。まず思ったのは「そんなのありえ〜ん」という単純素朴な疑問であった。そんな都合の良い話あるものか。なんか嘘があると思った。
まずヘモグロビンである。なぜヘモグロビンなのか?調べるとこれは赤血球の寿命が120日(4ヶ月)であることがキーポイントのようである。からだの中で寿命のあることがわかっている蛋白を見つけることがポイントだったてことだ。核がない赤血球だから、最初に作られた日(誕生日)以降は老化する、消耗するしかないわけだ。ターンオーバーがない。酵素的補修がきかない。壊れたまま最後まで行く。ヘモグロビンも作られた日からカウントダウンされる。
さてこのヘモグロビンであるが、これに対する修飾はあるのか?実はあるのだ。この修飾の一つがglycattionである。「糖化」というらしい。糖がくっつくことを言う。実はこれは異端のパッセージである。生物にはもうひとつglycosylationという糖付加システムがある。これは器質特異的な酵素が一つ一つ用意されていて、たとえば赤血球の血液型抗原を付加している。フコースが付く。N-アセチルグルコサミンが付くというふうに。こちらはオーセンティックというか、学問の対象によりなりやすい。体系化されているしね。一方glycationはなんともよくわからんが、じわ〜っといつのまにか付いているイメージだ。高校化学でいうメイラード反応そのものだ。大事なのは非酵素的反応であるということ。相手を選ばない、選ばれない。野卑この上ない品のない反応なのだ。そのなかでグルコースがヘモグロビン蛋白に付加されるらしいが、この付加されたグルコースを測るとHbA1cの値が出てくる。%であらわす。ボクの疑問は、どのタイミングで糖化されるかということにつきるのだろう。合成される段階だけなら・・・これは理屈があう。これにて解決だ。20日〜30日前にケトアシドーシスを起こしたからあんときは平均600mg/dl血糖があった。その10日間に作られた赤血球が現在流血中に20%流れている。ケトアシドーシス時に合成された赤血球は極端にglycationされていて、その分画のHbA1cは40%もあるのだ。雑ぱくな計算だが(5% x 0.8 )+ (40% x 0.2) = 4+8=12%が今日のHbA1cとして出てくる。これがHbA1cの理屈である。合成時の糖化が未来永劫変わらないとすれば、このHbA1cシステムのお話しはとてもわかりやすい。
ところがそんな簡単なものではないのである。実は・・・。
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