2018年11月22日木曜日

NEJMのイメージ:肝臓表面から2cm以内

肝臓表面から2cm以内に見えるガス像は門脈内ガスである。

というのは重要なキー・フレーズだと思い記憶している。

おそらくこのキー・フレーズ「急性腹症のCT」という名著が初出であろうと思う。「急性腹症のCT」というのは20年前に出版された大型の本であり、徳洲会グループの先生方による極めて実用性の高い本である。今は絶版のようですが、本日アマゾンを覗いたら、中古本が22冊並んでおり最低価格でも7000円を超える。ちなみに小生が購入したときは14000円でした。まだまだ買う人がいるってことだと思います。良い本です。

さて今週号のNEJMには、どぎついCT像が載っている。中国の北京からの報告である。
この患者さんは助かったのだろうか?

私の亡くなった患者さんの症例は以前報告した。それ以降何例か診ているが、運のいい人が、いい時間帯に病院に現れた場合、助かることもあった。でも多くの場合こうなったしまうとなかなか大変です。

  

 


 A 72-year-old man presented to the emergency department with an 11-hour history of periumbilical abdominal pain and inability to pass flatus. His medical history included chronic lymphocytic leukemia (for which he had been taking ibrutinib), type 2 diabetes, and chronic hepatitis B virus infection. The pulse was 155 beats per minute, and the blood pressure 83/52 mm Hg. On physical examination, his abdomen was diffusely tender, with the most severe pain in the right upper quadrant. Initial laboratory studies of the blood revealed a white-cell count of 22,570 per cubic millimeter (reference range, 4000 to 10,000), an arterial blood pH of 7.27 (reference range, 7.35 to 7.45), and a lactate level of 8 mmol per liter (72 mg per deciliter) (reference range, 0.5 to 1.7 mmol per liter [4.5 to 15.3 mg per deciliter]). Computed tomography of the abdomen revealed extensive portal venous gas, as well as gas in the bowel wall, which had an appearance consistent with ischemic bowel. Portal venous gas is most commonly associated with bowel ischemia and is a poor prognostic sign in patients with that condition; however, it can also develop in patients with other conditions, such as infection or inflammatory bowel disease, or as a result of an interventional procedure. Treatment was initiated with fluid resuscitation, broad-spectrum intravenous antibiotics, and vasopressors, and an urgent laparotomy was planned. However, the patient’s clinical condition deteriorated rapidly, and he died 2 hours after presentation.


Ming Cui, M.D.
Xin Lu, M.D.
Peking Union Medical College Hospital, Beijing, China 

2018年11月9日金曜日

AIと医学診療2018:早く自分で使いたい!!

2018年はAIが医学診療に使われ始める予感が感じられる年であった。実臨床でこのような技術が使われることになると本当にありがたい。だけど現状どうなんだろう?

日本は医学のある領域に関しては本当に敷居が高い国である。パピローマ・ワクチンしかり。遺伝子診断しかり。医療機材の国内生産と販売(心臓ペースメーカー、人工関節、手術縫合器、切除補助機器(カッティング・デバイス))もそうだ。

話をもとに戻してAIを一日も早く「私の実臨床・医学診療」に導入したい。応用したいのだ。「私の」である。邪魔をしてほしくない。一日も早くである。どうすればよいの??

2018年も終わろうとしている。現時点でのノートを作っておこう。

1)AIに医学が急速に近づいたのはいつ頃からだっただろうか?

2)現状AIはどのくらい実用的なのだろうか?

3)急速に実用化近づいたように見えるが、そこからが遅いのはなぜなのだろうか?



1)AIに医学が急速に近づいたのはいつ頃からだっただろうか?

IBMワトソンがクイズ番組で全米チャンピオンを破り、その後医学に転向した2013年くらいと記憶する。またNYのスローンやいくつかの病院がIBMワトソンと連携してAI診断を始めたという2014年も記憶に残る。日本では東大医科研の比較的珍しい白血病診断と治療薬の検索が思い出されるが、残念ながらこれから先が続かない。

2)現状AIはどのくらい実用的なのだろうか?

2018年の暮にあたり、見込みの有りそうな技術についてメモしてみたい


グーグルの画像認識AIは、専門家にも見えない腫瘍の変異を識別できる

これなど小生が夢を見ていた最たるものだ。人間には区別できない「なにか」を見分けて、その底にある「遺伝子変異」を見分ける画像解析である。これを求めていた、私は。

乳がん検診のマンモグラフィーを自動読影(1)
乳がん検診のマンモグラフィーを自動読影(2)

これなんかすぐにでも使えるようにしてほしいものだ。がん拠点病院レベルでは必要ないだろうから、乳がん学会で発言力のある連中は資源の配布に積極的ではないだろう。地方の検診センターレベルや小生のような病院で使わせてほしいのだ。当然診断の責任は私達が引き受けるし、あくまでも参考意見として診断に使わせていただく。文句もいいません。難癖もつけません。作成者と交渉して個人契約できないものかしら。

糖尿病網膜症の病期分類を行うAI

どれくらい役に立つのか小生には評価ができない。しかしスクリーニングレベルであるなら「文句もいわない、責任も問わない」医師にはいち早く使わせてもらいたいものだ。開発者・配布側が慎重になることは当然予想する。作成者と交渉して個人契約できないものかしら。

3)急速に実用化近づいたように見えるが、そこからが遅いのはなぜなのだろうか?

  • 開発者が責任を取りたがらないから。
  • 開発者のコンセプトを超えた使われ方をされるという懸念があるから。
  • 質の担保をどこが、どのように行うのか決めきれないから(国や行政にとっては極めて大きな問題だろうが、最終責任は使用者が負うという前提で、質の評価も使用者が決めたら良いのだ。だから早く使わせて)
  • お金がからみそうだから。



2018年11月7日水曜日

下肢の骨折について:個人的経験ですが・・

整形リハビリで術後の患者を診始めて10年になる。消化器外科が主戦場であった小生であるが、専門外であるが門前の小僧も10年経つとずいぶん経験値があがる。最近では整形を診るのも楽しい。単純Xpで骨折を見つけることが苦でなくなってきた。

これまで入院リハビリしてきた術後患者は下肢に限ると以下のような疾患である。この他では腰椎圧迫骨折や上肢の骨折、最近多いのは骨盤骨折であるがその多くは恥骨骨折である。恥骨骨折は最近増えたなあ。

さて下肢であるが非整形外科医としての小生の乏しい経験をまとめておこう。

1.『大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折
』 

圧倒的に多いのが大腿骨骨折であるのは変わらない。大腿骨骨折に手術非適応はないというのが小生の考え方である。(以前保存的治療のオススメをしたことがあるが、最近は考えを変えた)これだけ長生きされる患者が増えたので、骨折後の余生もまた長い。手術しないと患者も家族も医療スタッフもお医者さんも大変です。手術して可及的速やかに歩かせる。できるだけ早く自宅退院させる。これにつきる。

2.『大腿骨骨幹部骨折』

我々のような施設には術後リハビリ患者としてはなかなか現れない。高エネルギー外傷が多いのではないかと推察する。同じ長管骨でも脛骨骨折よりは治りが良いようなイメージである。

3.『大腿骨遠位部骨折』

単純にこれだけの患者を診たことがない。複合骨折で遠位部も巻き込まれた患者しか診たことがない。複合骨折だから時間がかかる。

4.『膝蓋骨骨折』 

外来では時々遭遇する。診断をつけて紹介するだけだ。リハビリ再入院はほとんど経験ない。

5.『脛骨プラトー骨折』 

最近診ないが一時期立て続けに診た。高原骨折であり関節面がズレないように、接合してくれていることを期待する。自分の膝関節が鏡のように磨かれていない状態を想像してみよう。脛骨面のギザギザが大腿骨下面をこすることを考えたら耐えられないでしょう。悲鳴を上げたくなるほどの痛みを想像する。だからリハビリは結構たいへんです。CPMを借りてきたリハビリしたなあ。荷重もかかるし。

6.『下腿の骨幹部骨折』 

最近診ることが多い。正直言ってとてもイヤです。治りが必ずしも良くない。脛骨骨幹が大変です。荷重はかかるし、場合によっては創外固定されているし。「弁慶の泣き所」は骨折治癒にも当てはまる。骨折治癒にも骨外軟部組織が重要らしい。脛骨なんてあなた、すぐ上は皮膚です。皮下組織に乏しい。薄いし、皮膚そのものが大抵骨折イベントに巻き込まれている。開放骨折の術後が多い(私ん所には・・・だ)。小生のところにくる脛骨骨折の多くは腓骨も折れているし・・・。イヤだけど、診ないわけにはいきませんの。


7.『足関節骨折』 

これも最近多いな。これまで外果、内果骨折ばっかり診ていたが、最近これに距骨の後ろが折れている(後果骨折)3重苦の患者さんを診ている。3果骨折というが、大変だが患者さんはとても頑張っている。


8.『踵骨骨折』

あまり診たくない骨折のひとつ。でも最近紹介が多い。これは疼痛が結構きつい骨折である。リハビリの荷重スケジュールが難しい。自分が高いところから落ちたとき、どこで地面と接触するか?考えてもしょうがないが、選べるものなら運の良い骨折を選びたいものだ。


9『第5中足骨骨折・いわゆる下駄履き骨折と疲労骨折』 

最近診ていません。以前NintendinitisとかWii骨折と騒いだ骨折である。あのニンテンドーの遊具は最近どうなったんだろう?昔のバンカラな下駄が現代では任天堂の「Wii」に変わったことが話題になったのだった。