- 当直中にやってきた尿閉患者:まだ若い55歳くらい。今朝からおしっこが出ないと外来で導尿600ml、夜私の外来で導尿450ml、別に急に普段使わない薬を飲んだというわけではないようだ。バルーン入れて入院が普通なのだろうが、激しく拒否された。水分を控えめにして明日は泌尿器に朝一番で行かなければね、と紹介状を書いた。朝一番で導尿にやってきた。550ml。そして昼過ぎ泌尿器科から連絡があり、前立腺癌とのこと。本人も私も話が唐突で驚いた。こんな経過もあるんだな。
- 17歳女子高校生。15歳ころはいまより20kg体重が重かったらしい。登校拒否も癒え今年はダイエットに励んだが、お腹だけが減らない、小さくならないという。触診するに、腹部に大きなしこりが・・・上端から下端まで(といっても下端は恥骨の下だ。)で30cmはあるだろう。エコーとCTを直ちに撮るが多房性嚢胞性後腹膜腫瘍であり40cmある。まずは卵巣腫瘍であろう。直ちに大学に連絡したら入院となり私の初診から一週間で手術されてしまった。奇形種だったとのこと。悪性成分がなくてよかったね。
- 50歳女性そろそろ閉経。2日前に下腹部のしこりに気がつく。触診するに単なる「しこり」どころではない。堂々たる腫瘍である。エコーするに余りの大きさに卵巣か子宮かわからない。性状からはこれも多房性嚢胞性後腹膜腫瘍である。これ以上の検査は当院では無益。直ちに大学の婦人科に紹介したら、即入院で受けて手術待ちとなる。こちらはおそらく粘液性卵巣腫瘍で癌であろう。それにしても2日前に気がついたというのは奇異である。きわめてまともな主婦のように見えたが。
- TietzeやMondorが少なくなったなあ・・・・と寂しい思いをしていたら、こないだ24才の女性で典型的なTietzeがやってきた。このひとも3週間くらいで自然に痛みが消退したよ。
- 最近気が付くのは初診のXpで骨折がないと判断し、3日から一週間後に骨折が発見されるケース。そんなにあるわけではないが、決してゼロにはできないのが臨床の実際だ。これに気が付くというのは、ちゃんと外来フォローが続くようにしてあることと、初診でのムンテラでしっかり骨折の可能性を説明してあることにつきる。ただし他所の病院で診て貰ってよくならないと来られるケースもあって、これには苦慮する。下手なことは言えないしなあ。
- この半年の最大のピンチは「化膿性脊椎炎」が数多い腰痛症患者のなかに紛れ込んできたことであった。60台の女性であり入院後2日で排尿困難になったのをきっかけに「大病院の整形外科」に転送としたが、あとでいただいた返事が馴染みのない化膿性脊椎炎ということであった。調べると一番訴訟の多い(診断が遅れ後遺症が残るため医者が敗訴することの多い)疾患の一つらしく冷や汗ものである。この方3ヶ月の入院ののち無事自宅に帰られたと最近連絡があった。患者の娘さんが法曹関係者であることを後で知り、更に冷や汗も凍る思いであった。腰痛のレッドフラグ(赤旗)の一つに「発熱のある急性腰痛」というのがあるが、今後も気をつけよう。それと整形に紹介するとき多少大げさでも『発熱・尿閉を伴う急性腰痛症』と訴えれば(これは嘘ではない。この発熱と膀直障害を示唆する腰痛というニュアンス)でこちらの思いは通ずる・・・・と思う。実際、土曜日の夕方なのに急いで取ってくれた。
2010年8月6日金曜日
最近の外来より・・・
外来患者が最近急増して困っている。2年前のあののどかな外来が懐かしい。ここ半年、印象に残る患者さんたち・・・
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