2010年10月24日日曜日

BRCA2の精製に成功

今晩は当直なので暇な時間にnature digestをつらつら眺めていると「BRCA2の精製に成功」という記事に気が付いた。

乳がんの原因タンパク質、ついに精製! - pp3 - 4無料公開記事
Breast cancer protein is finally purified
Alla Katsnelson


http://www.nature.com/ndigest/index_ja.html

15年かかったんだというからたいしたものだと思う。これほど時間がかかったのは、もちろんBRCA2自体が精製を拒む性質をもっていたということもあろうが、しかし最も大きな理由はその巨大さであった。なにしろ3418個のアミノ酸からなるのである。
Genecardsによると
Recommended Name: Breast cancer type 2 susceptibility protein
Size: 3418 amino acids; 384225 Da
Subunit: Interacts with RAD51 and DSS1. Interacts with ubiquitinated FANCD2. Interacts with PALB2, enables the
recombinational repair and checkpoints functions. Interacts with WDR16
Size:84,199 basesであるからゲノムでは85kbである、相応の大きさ。エクソンは27個らしい。

3つのグループが成功しnatureとnature StructMolec.Biolに出たという。本当にご苦労さまである。おそらく日本では考えられない仕事ではないだろうか?

昔は蛋白精製というのが生物学の大きなテーマであり、あの手この手で精製をし遂げていくことが生化学者の仕事と捉えられていた。そこにモノクローナル抗体が登場し、さらに分子生物学のテクノロジーが乱入したため、目的の蛋白へのアプローチが極めて楽になった。素人の毛が生えたような「我々」でも、あっという間にあるところまで行くのである。部分蛋白やペプチドくらいまでだが。それから先の完全蛋白精製はこれは素人が手を出すと大変な世界であった。不溶性という壁。折りたたみという壁。目的の蛋白が大腸菌や酵母や、あるいは細胞株の中に出来ているのは確実なのだが、そこからの精製が困難で断念。これが多くの研究のなれの果て。

だから今回の研究がいかに大変で地道な作業だったか、それ相応には想像がつく。ご苦労様でした。精製の最適化だけで4年かけたのだそうだ。この方法論は他の難攻不落の蛋白群へも一般化されるのであろうか?それなら素晴らしいが、それはそうと
BRCA2の精製それだけでも大変な示唆が得られるようだ。DNA損傷全般の統合調整蛋白質として生物学への今後の貢献は大きそうである。

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