2011年8月20日土曜日

ロイヤラクチンと鎌倉講師が気になる

ロイヤラクチンと富山県立大学鎌倉講師が気になる今日この頃である。

ミツバチ社会のヒエラルキー:女王蜂システムにロイヤルゼリーが深く関わっていることは昔から知られている。それ故に人間界でもロイヤルゼリーは高値の華であり、重宝されているのだろう。このロイヤルゼリーの本体、すなわち女王蜂を作る作用素の本体はなにか?これは長年にわたる謎の一つだった。この秘密を解き明かしたのが富山県立大学の鎌倉昌樹講師によるNatureの論文だったわけだが、これは発表されてすでに4ヶ月経過した。

24 April 2011

Royalactin induces queen differentiation in honeybees

Masaki Kamakura

Nature 473, 478-483 doi:10.1038/nature10093


この論文発表当時は素晴らしいものとして国内のメディアは伝えた。そうなんだけど、その後のフォローが今ひとつ物足りないのだ。小生はこの論文を読む代わりに鎌倉博士がNature Japanに投稿した日本語の解説を読ませていただきましたが、この内容は素晴らしいものだと思いました。

  1. 特にRoyalactinを単離したのち、この作用を見るのにショウジョウバエの社会にRoyalactinを持ち込み、ショウジョウバエにおいても擬似的な女王蜂を構築したという実験モデルには驚いた。

  2. 更にショウ ジョウバエの変異体(RNAi 誘導系統と Gal4 系統)を使って、ロイヤラクチン がどの組織で何の遺伝子発現を制御して いるのかを調べたところロイヤラクチンは、脂肪体(末梢の栄養を感知する組織で、脊椎 動物の肝臓と脂肪組織に相当する)の上 皮増殖因子受容体(EGFR)を介するシ グナル伝達経路を刺激することがわかっ た。

  3. 驚くべきことはこの研究は単名論文なのである。鎌倉博士は講師なのである。上司に教授がおられる、そんな普通の教室に所属されている。通常は鎌倉博士は研究室の皆さんと論文を共著で発表されているようだ。しかしこの歴史的な論文に限っては、単名なのである。二つの意味ですごいと思う。

  4. 一つは、実験系としてもかなり複雑なシステムである。ハチのシステムとショウジョウバエのシステムを維持していくだけでも大変だろう。形態変化、分子遺伝学、DNA, RNA, RNAi等々一人で進めていくにはかなり大変な実験系だと思うがよくこのシステムを動かしたものだと思う。

  5. もう一つは講師という立場である。この論文があるいは仕事が歴史的なものになるであろうことは教室の周りの皆さんもよくよく分かっておられただろう。教授が偉いのだろうな。多くの教室では、少なくとも教授は名前を併記させたがると思う。そこを単名で通せる環境というのが素晴らしい思う。
さて、その後の国内でのフォローであるが、なぜか物足りないのだ。例えばnatureは日本語による鎌倉博士の論説に続き、Nature digestの8月号で再度レビューを掲載している。

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ロイヤルゼリーの神秘の成分 pp20 - 22

Entomology: Royal aspirations

Gene E. Robinson

doi:10.1038/ndigest.2011.110820 Original source: Nature 454-455 (2011); doi:10.1038/473454a

ミツバチの幼虫を「女王」に変身させるのは、ロイヤルゼリーのどの成分なのか。長年にわたるこの謎に、ようやく決定的な答えが見つかった。この発見は、生物の社会的な特性と昆虫ゲノムの双方の進化の研究において重要な手がかりとなることだろう。

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というレポートである。

翻って国内ではどうなのだろう? 週刊誌や月刊誌がこの論文を紹介しただろうか? 新聞も最初だけ記事にしただけではないか?小生は不満である。このような面白い研究は、小学生や中学生にわかるようになんども、何度も繰り返しメディアが報道すべきである。国外の方が熱心なのだ。全く不満であるなあ。

新聞や雑誌の科学記者はこのような研究に魅力を感じないのだろうか? 
もう少し頑張ってほしいと思うのは小生だけ?

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