2012年3月24日土曜日

トラスツズマブに対する胃癌ガイドライン委員会のコメント

【速報】
ToGA試験概要、およびHER2陽性進行再発胃癌の治療に関するガイドライン委員会のコメント (2011年7月の速報)

切除不能胃癌に対するトラスツズマブの上乗せ効果:優越性はあったか・・・・・・あった

本論文における結果の要約
日本を含む24ヶ国、122施設から594例が登録されたが、同意撤回や適格規準違反等で10例が除外され、最終的に解析対象となったのはコントロール群290例、トラスツズマブ群294例であった。観察期間中央値がコントロール群17.1ヶ月、トラスツズマブ群18.6ヶ月の時点で、全生存期間中央値はコントロール群11.1ヶ月、トラスツズマブ群13.8ヶ月であり、優越性が検証された(ハザード比0.74,95%信頼区間0.60-0.91,p=0.0046)。


【ガイドライン委員会のコメント】
  1. 本試験の結果、HER2陽性胃癌(切除不能な進行再発の胃癌・食道胃接合部癌)に対してトラスツズマブを含む化学療法が新たな標準治療となることが 示された。また、本試験では3,665例がIHCまたはFISHによるHER2スクリーニングを受け、810例(22.1%)がHER2陽性(IHC3+またはFISH陽性)と判定されている。今後は、化学療法選択前にHER2検査を実施することが推奨される。(註:2011年4月時点ではIHCとFISH検査を同月に検査することは保険で認められていない)

  2. 本試験ではHER2陽性の定義をIHC3+またはFISH+とした。なお、サブセット解析の結果、IHC3+または、IHC2+かつFISH+のHER2高発現群(446例、76.4%)で生存期間の延長がより明確に示された。(16.0ヶ月/11.8ヶ月、ハザード比0.65(0.51-0.83))

  3. 本試験では重篤な循環器疾患が除外されたこともありトラスツズマブ群で特に目立った有害事象の増加は認められなかった。しかし乳癌でのトラスツズマブ使用経験から、治療前や治療中および治療後の心機能等への留意が必要である。

  4. 本試験の試験群のレジメンはカペシタビン(または5-FU)+シスプラチンとトラスツズマブの併用であり、HER2陽性胃癌に対して現時点ではこのレジメンが推奨される。本邦の進行胃癌に対する標準治療であるS-1+シスプラチンとトラスツズマブの併用の有効性ならびに有害事象等のプロファイルに関しては、今後の臨床研究の課題である。

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