2014年2月2日日曜日

STAP論文を読んだよ〜。面白い!


小保方STAP論文をじっくり読んでみた。しつこいくらいに細かなツメ実験を行っているので、読んで楽しい論文である。「発生生物学」の論文なので、正直馴染みのない概念がいくつかあるが、概して興味深い実験であり、大方理解納得できる。論文の図表を元に小生の興味をひいたことをメモしておく。

(2月4日の追加コメント) 小保方STAP細胞についていろいろな報道があるなかで、飛び抜けて興味深いnoteを見つけた。
HPのタイトルは敢えて示さないがこちらである。 STAT細胞の今後および小保方博士の今後についてわくわくさせられます。小保方博士という方は凄いヒトなんだと思います。尋常ではない。

Fig3 a  いろんな組織細胞からSTAP細胞は効率よく作成されますよという説明

様々な組織由来細胞を低pH刺激した幹細胞化効率であるが、面白いことに「脂肪組織」はCD45と並んで最も効率が良いようだ。乳癌の術後再建の補助療法として今でも脂肪幹細胞注入療法は行われているが、採取した細胞(これは大抵患者の腹壁から取られる)に低pH刺激するというプロセスが今後加わるということは考えられる。というか、もうやっている人が、施設があるかもしれない。(今回の実験では、採取した脂肪細胞をCD45陰性ソーティングしている。論文であるから混入リンパ球を除くわけであるが、実臨床ではそんな必要はないだろうね。再生すればソースはなんでもよいのだから)

Fig 4a-b  STAP細胞由来のマウスが生まれますよという説明


 この図表(Fig4全体)はSTAP細胞集塊を別のマウスの受精卵(胚盤胞)に移入することで、STAP細胞由来のマウスを産ませることができること、さらには第二世代マウスもSTAP細胞由来であることが説明される図である。fig 4aに4Nというものが出てくる。理屈で言うとこれは2細胞を融合させて染色体数を通常の二倍(4N)にした細胞を移入することをあらわし、これをTetraploid complementation assayといい、説明によると最も厳密な実験系になるのだそうだ。方法論はわかる(通常は二細胞期の二つの細胞を電気刺激で融合させるとある)が、その発生生物学的意味が残念ながら小生には理解できない。勉強が必要だな。



 別表のFig9 aでは低pHの他の刺激について述べてある。ここではcell titration(テレビでやっていた細径ピペットを通すことによる刺激)と溶連菌毒素(streptolysin-O)が有効のようである。




 別表のFig9 bはマウスの逆流性食道炎の実験である(この論文のコンテクストでここまでの実験をやるのかというのが正直な感想であり驚きである)

これは本編にある疑問

  1. 生体ではなぜテラトーマができないのだろう? 
  2. 少なくともSTAP細胞塊くらいできても良いじゃないか?
という疑問からでてきた実験であり、外科医としては興味深い実験である。
この逆食実験ではなんと刺激食道上皮にはOct4は誘導されるのだという。ただ「なんらかの内因性規制」によりその後のNanog発現等々は見られないのだそうだ。


最後にちょっとした疑問 

Fig 1-i   STAP細胞のTCR再構成データ

 この図はSTAP細胞のゲノムDNA構造を示している。この小保方実験系を担保する最大要素は「誘導される細胞ソースが分化細胞由来」であることである。リンパ球に紛れ込んでいる未分化細胞であっては論文の価値がなくなる。このため(だろう、おそらく)小保方さんは細胞ソースとしてCD45陽性Tリンパ球を選んでいる。Tリンパ球はそれ以外の細胞とゲノム構成が異なる。それはT細胞の膜レセプターを構成するゲノムが「リンパ球の分化と共に再構成をおこし」「必要な構成要素だけがコンパクトに結合し直す」ためにゲノムの長さが短くなるのである。すなわち分化すると短くなる。それが図のレーン3,4,5である。コントロールの左2本、 それぞれES細胞であり、普通の線維芽細胞であるが再構成がないのでgerm lineと同じ「長いGL」である。対してレーン3は陽性コントロールであり再構成を起こしているため短くなっている。

ここでバンドが複数見えることはレーン3なら当たり前である。普通のリンパ球は遺伝子再構成に関してヘテロであるからだ。様々な再構成が混在しているということ。対してレーン4,5であるが、これもヘテロなのだ。ここでシングルクローンを見せて欲しいというのが、小生のささやかな望である。マイクロピペットによる裁断法をお持ちなのだから、オリゴクローン解析、もっといえばシングルクローン解析(そこで短い単一のバンド)を見たいものである。

もうひとつ レーン4,5に見られるGL相当のバンドを消して欲しい。

ということでもう一つ見たかったゲノム解析はoff springマウスの体細胞TCRゲノム解析である。これが再構成シングルクローンから出来ているとすれば、小生は戦慄する。二つの論文をくまなく捜したが、このデータはなかった。
 

2月5日の追加コメント):この最後の子孫マウスというのは当然F2(あるいはF2以降)の掛け合わせである。初代は二つの意味でヘテロである。胚盤胞の既存の細胞がひとつ、更に二つ目は移入するSTAP細胞塊がTCRゲノムレベルでヘテロである可能性が高い(当初7日の培養ではSTAP細胞は分裂増殖しないようだし。論文の動画を何度も何度も見たが、緑色に色の変わった単細胞が動き回り、近づくと「くっついてしまう」、そしてだんだんマリモ状に塊を作っていくようだ。だから上記小生の希望(短い一本のバンドを見せて欲しいという希望)は技術的にも無理なのかもしれない。問題はこの先で、論文によると培養条件を工夫することで「expandable」なSTAPに変わるようだ。その増えた状態でTCRレベルではヘテロのままなのかしら)。 

2月6日の追加コメント):今朝の朝日新聞で若山さんがコメントしていたが、胚盤胞へ細胞を移入する際、細胞塊を酵素処理するとSTAPは起こらないという。小さなはさみで切り分けて入れるという技術がキモなのだそうだ。(酵素処理するとreprogamがde-reprogamされるのだろうきっと)いろいろ細かなことがわかってくると更に面白いです。EBウイルスのトランスフォーマントもsingle cellにするととたんに元気がなくなるが、この「友達を捜して寄り添うことで、次のステップにすすめる」という生態にはSTAP現象の大事なヒントがあるのだろうな。

いずれにせよ生まれてくる子供マウスはキメラである。

ただしgerm line transmissionを果たした(まさに果たしただね!)次世代ゲノムは(Haploidでは)単クローンである。
それぞれを掛け合わせるとTCRゲノムPCRでは2本のバンドとなろう。ホモなら1本である。

ボクのいう戦慄というのは、そんなマウスが「免疫学的」に生きていられるのか?ということだ。免疫学の最新の知識に暗い小生であるから、とんでもない勘違いをしているのかもしれませんが・・・


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