2014年6月4日水曜日

乳癌検診ガイドライン2014より MMGの考え方抜粋

乳癌検診ガイドライン2014より MMGの考え方を抜粋ー日本独自のデータが無いので欧米の6研究を引用している。この中に例のカナダの研究も含まれている。26ページから35ページにかけて報告されているものを抜粋してみた。(なおこの報告は167ページもある長大なものである。)

http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/pdf/nyugan_kenshin_guidelinebook_20140430.pdf



1.マンモグラフィ単独法
1)マンモグラフィ単独法(全年齢:40~74)の死亡率減少効果

マンモグラフィ単独法による乳がん死亡率減少効果を検討した6研究があり、このうち、UK Age trial16)は対象を40歳代に限定している(8)

割付の方法は、Malmö study17, 18)Canada study II(以下、Canada II)19, 20, 21)は個人単位、Swedish Two-County study22~28)はクラスター割付、Stockholm study29, 30)Gothenburg study31, 32)は生年月日による割付を行っている。個人単位以外の方法では、どちらのグループに割り付けられるかの予測が可能となる。ただし、Canada IIは全員に視触診を行ったうえで、マンモグラフィ追加群と追加なし群を比較しており、ほかの研究とはデザインが異なる。従って、エビデンス・テーブルに結果は掲載したが、後述するメタ・アナリシスの対象からは除外した。

これらの研究は、Canada IIを除き、20~30%の乳がん死亡率減少効果を認めている。Malmö studyは、45~70歳を対象としたMalmö Iと、43~49歳を対象としたMalmö IIがある。マンモグラフィは2方向、検診間隔は18~24カ月である。Malmö Iは対象者42,283(介入群21,088人、対照群21,195)を平均13.9(8.8~20.2)年の追跡結果、乳がん死亡の相対危険度は0.82(95%CI: 0.67-1.00)、年齢調整相対危険度0.81(95%CI: 0.66-1.00)20%の有意な減少を認めた。本研究はpopulation-basedの個人割付による研究であり、死因の把握は原則的に死因登録を用い、可能な限り、診療録や剖検結果を参照している。

Swedish Two-County studyは、KopparbergÖstergötland2カ所で行われたクラスター割付の無作為化比較対照試験である。対象年齢は40~74歳で、50~74歳は33カ月ごと、40~49歳は24カ月ごとにマンモグラフィ検診を実施した。介入群77,080人、対照群55,985人を最長19年間追跡した結果、対象年齢全体では31%の乳がん死亡率が減少した(相対危険度0.69, 95%CI: 0.58-0.80)

Stockholm studyは、40~69歳を対象とし、誕生日による割付を行い、28カ月ごとにマンモグラフィ検診(1方向)を実施し、平均11.4年の追跡後の乳がん死亡相対危険度は0.74(0.5-1.1)であった。研究開始時50~64歳に限定した場合、0.62(0.38-1.0)であった。

Gothenburg studyは、39~59歳を対象とし、誕生日による割付を行い、18カ月ごとにマンモグラフィ検診を実施した。初回は2方向撮影、2回目以降乳腺濃度により1方向でよいと判断された者(30%)1方向のみ撮影した。介入群21,904(39~49歳は11,724人、50~59歳は9,926)を最長14年間追跡し、評価モデルを変えて検討している。EPC評価モデル(プロトコールに従い診療録からエンドポイント委員会が死因を分類)では全年齢の相対リスクは0.79(0.58-1.08)50~54歳は1.31(0.73-2.33)55~59歳は0.67(0.38-1.18)であった。

Canada IIは、上記の研究とは基本的なデザインが異なる。一定の研修を受けた看護師が触診を行った後、マンモグラフィの受診を無作為に割り付けている。無作為割付時には触診26の結果はブラインドであり、マンモグラフィあり群となし群では触診による有所見率は同等である。この研究では触診にマンモグラフィを追加した場合の上乗せ効果を検討している。上記の研究はいずれも介入群ではマンモグラフィを実施し、対照群ではマンモグラフィも視触診も実施しておらず、マンモグラフィ自体の効果を検証している。また、Canada ICanada IIは異なる年代を対象としている。Canada IIは、50~59歳を対象とし、介入群19,711人にはマンモグラフィ2方向で毎年検診を行い、対照群19,694人とともに追跡した。13年間の追跡による乳がん死亡相対危険度は1.02(0.78-1.33)で有意差はなかった。これは、追跡期間25年まで延長した場合でも結果に変化はみられなかった(1.02, 95%CI:0.77-1.36)

全年齢を対象とし、マンモグラフィ単独法を未受診と比較し評価したMalmö studySwedish Two-County studyStockholm studyGothenburg studyUK Age trialのメタ・アナリシスを行った。Canada IIは、視触診とマンモグラフィ併用群と視触診単独群とを比較していることから、メタ・アナリシスの対象からは除外した。比較対照を視触診単独法としているCanada studyは割付方法が適切に行われていることから、多くのメタ・アナリシスでは対象としているが、本ガイドラインは未受診者に対するマンモグラフィの効果の検討を優先するためにCanada studyを除外して検討した。しかしながら、全年齢、40歳代、50~74歳の各年代のメタ・アナリシスにCanada studyを追加した場合でもほぼ同等の結果が得られた。

5研究のメタ・アナリシスでは、25%の死亡率減少効果を認めた(0.75, 95%CI: 0.67-0.83)(7)。一方、寄与危険度は、0.0015(0.0009-0.0021)であり(8)NNI(Number Needed toInvite)1,000(769-2,000)となった(9)

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