2014年6月23日月曜日

乳がん・卵巣癌家族歴を持つ30歳以下の女性への放射線診断は危険・・

BMJ誌からBRCA1/2変異キャリアへの放射線検査は乳癌リスクを高める30歳前に検査被曝があった女性で約2倍、欧州の大規模研究の結果

二年前の論文であるがこれだけならあまり興味を引かないが、ある解説を読んでこれは心しておかねばと思った次第。 

  1. BRCA1/2変異キャリアを僕等が見分けるには家族歴しかないということである。乳がんや卵巣がんの家族歴があることだけが「この女子、ひょっとして」と思わせる唯一のきっかけであろう。
  2. 「30歳前の女性にはむやみにレ線を浴びせてはいけませんよ」という時代がきっとやってくると主張するお医者がいるのだ。小生もなるほどと思う。
大西淳子
2012/9/24

乳癌リスクを高めるBRCA1/2遺伝子の変異を持つ30歳未満の女性に放射線を使った診断検査を行うと、乳癌罹患リスクが有意に上昇する可能性が、大規模な後ろ向きコホート研究で示された。オランダ癌研究所のAnouk Pijpe氏らが、BMJ誌電子版に2012年9月6日に報告した。

BRCA1BRCA2遺伝子は、DNA二本鎖に切断が生じた場合の修復に重要な役割を果たしており、これらの変異は修復不全を引き起こす。電離放射線はDNA二本鎖切断を生じさせることから、BRCA1/2変異を持つ人は放射線感受性が高い可能性がある。

これまで、BRCA1/2変異キャリアに対する放射線診断検査の実施が乳癌リスクに及ぼす影響を調べた研究はわずかしか行われておらず、一貫した結果は得 られていなかった。それでも一部の国は、BRCA1/2変異キャリアで30歳未満の女性には、マンモグラフィーによるスクリーニングは行わず、MRIなど を主に使用することを推奨している。

著者らは、BRCA1/2変異を有する女性に対する放射線を用いた診断検査の実施と乳癌リスクの関 係を調べるために、フランス、英国、オランダでそれぞれ行われた3件の全国的なコホート研究(GENE-PSO、EMBRACE、HEBON)に登録された女性の情報を分析する、大規模な後ろ向きコホート研究GENE-RAD-RISKを実施した。

これら3つの研究は、BRCA1/2変異キャリア女性を登録し、06~09年に質問票を用いた調査を行って、放射線を用いた診断検査歴などを確認していた。 X線透視検査、胸部または肩のX線撮影、胸部または肩のCT検査、マンモグラフィーと、胸部または肩に放射線曝露が生じる他の診断検査(骨シンチグラ フィーなど)などを受けた経験を尋ね、X線透視検査、X線撮影、マンモグラフィーについては、初回検査時の年齢、20歳未満での受検回数、20~29歳と 30~39歳での受検回数などについても回答を求めた。それ以外の検査による被曝については、検査の目的、受検時の年齢、受検回数を確認した。

個々の検査の被曝量については公表されている情報を利用し、個々の女性について乳房の累積被曝線量を推定した。

主要転帰評価指標は乳癌リスクとし、時間依存性の乳房の累積線量で重み付けしたCox比例ハザードモデルを用いて評価した。

コホート全体は1993人。最も多かった放射線診断検査はX線撮影で、919人(48%)が1回以上受けていた。マンモグラフィーを1回以上受けていたの は649人(33%)だった。40歳までの1人当たりの検査回数の中央値は、X線撮影が2.5回、マンモグラフィーが2.4回だった。初回マンモグラ フィーが行われた時点の患者の平均年齢は29.5歳だった。CTによる被曝は29人(2%)、他の検査による放射線被曝があった患者は53人(3%)だっ た。

乳房の累積被曝線量を推定したところ、平均は0.0140Gy(レンジは0.0005~0.6130、四分位範囲は0.0020~0.0174)だった。

質問票を用いた後ろ向き研究では、曝露と生存の間に関係がある場合に、生存バイアスが生じる可能性が大きい。例えば調査までに死亡していた乳癌患者は質問票に回答できず、自然に分析対象から外れてしまうからだ。こうしたバイアスを小さくするために、著者らはサブコホートを設定した。コホート全体から、質問票を用いた調査の実施時点から5年以上前に乳癌や他の癌と診断された患者などを除いた1122人をサブコホートとして、主な分析を行った。

サブコホートでは、4484人-年の追跡で乳癌診断を受けたのは174人だった。被曝線量と検査時の年齢に基づいて乳癌リスクを推定した。対象女性を 「30歳前の検査被曝なし」と「30歳前の検査被曝あり」に分けると、「30歳前の検査被曝あり」群の乳癌リスクは有意に高かった。ハザード比は 1.90(95%信頼区間1.20-3.00)。

用量反応関係も認められた。30歳前の被曝線量に基づいて患者を層別化すると、検査被曝なし群に比べ、
  1.  被曝量が0.0020Gy未満のグループのハザード比は1.63(0.96-2.77)、
  2.  0.0020~0.0065Gyは 1.78(0.88-3.58)、
  3.  0.0066~0.0173Gyは1.75(0.72-4.25)、
  4.  .0174Gy以上は 3.84(1.67-8.79)になった。

20歳未満での検査被曝についても同様の傾向が見られた。
  1. ハザード比は 1.62(1.02-2.58)、
  2. 被曝量が0.0020Gy未満のグループでは1.47(0.89-2.42)、
  3. 0.0020~0.0065Gyは 1.09(0.41-2.91)、
  4. 0.0066Gy以上は3.16(1.19-8.36)になった。

一方で、30~39歳での検査被曝は乳癌リスク上昇と有意な関係はなかった。

診断検査のタイプ別の分析では、20歳前のX線写真撮影枚数が増えるほど曝露なし群と比較したリスクが上昇する傾向が見られた(傾向性の P=0.041)。20歳前の2回以上のX線透視もリスクを上昇させる可能性が示唆された(ハザード比2.01、0.75-5.71、傾向性の P=0.102)。30歳未満でのマンモグラフィー検査についてもリスク上昇が示唆された(1.43、0.85-2.40、傾向性のP=0.040)。

コホート全体でも、30歳未満のあらゆる検査被曝歴は乳癌リスクを高めていた(ハザード比1.39、1.12-1.73)が、用量反応関係は見られなかっ た。20歳未満の検査被曝については、ハザード比は1.37(1.11-1.68)で、用量反応関係の存在が示唆された。30~39歳の検査被曝と乳癌リ スクの間には有意な関係は見られなかった。個々の検査法の中で有意なリスク上昇が見られたものはなかった。

今回の大規模研究において、 BRCA1/2変異キャリアに対する放射線診断検査は、一般集団の癌リスクを高める線量より低い線量でも乳癌リスク上昇にかかわることが明らかになった。

 今回の結果はBRCA1/2変異キャリアの若い女性には、MRIなど、電離放射線を用いない検査を適用すべきであることを示した。




BMJ 2012; 345  (Published 6 September 2012)
Cite this as: BMJ 2012;345:e5660
 
Exposure to diagnostic radiation and risk of breast cancer among carriers of BRCA1/2 mutations: retrospective cohort study (GENE-RAD-RISK)

Netherlands Cancer Institute, Department of Epidemiology and Biostatistics, Plesmanlaan 121, 1066 CX Amsterdam, Netherlands.

Abstract

OBJECTIVE:

To estimate the risk of breast cancer associated with diagnostic radiation in carriers of BRCA1/2 mutations.

DESIGN:

Retrospective cohort study (GENE-RAD-RISK).

SETTING:

Three nationwide studies (GENEPSO, EMBRACE, HEBON) in France, United Kingdom, and the Netherlands,

PARTICIPANTS:

1993 female carriers of BRCA1/2 mutations recruited in 2006-09.

MAIN OUTCOME MEASURE:

Risk of breast cancer estimated with a weighted Cox proportional hazards model with a time dependent individually estimated cumulative breast dose, based on nominal estimates of organ dose and frequency of self reported diagnostic procedures. To correct for potential survival bias, the analysis excluded carriers who were diagnosed more than five years before completion of the study questionnaire.

RESULTS:

In carriers of BRCA1/2 mutations any exposure to diagnostic radiation before the age of 30 was associated with an increased risk of breast cancer (hazard ratio 1.90, 95% confidence interval 1.20 to 3.00), with a dose-response pattern. The risks by quarter of estimated cumulative dose <0 .0020="" 0.0020-0.0065="" 0.0066-0.0173="" 0.0174="" 0.85="" 1.43="" 1.63="" 1.75="" 1.78="" 2.40="" 2.77="" 20="" 3.58="" 3.84="" 30="" 4.25="" 8.79="" a="" age="" also="" an="" analyses="" analysis="" and="" associated="" before="" breast="" by="" cancer="" caused="" compared="" confounding="" diagnostic="" different="" exposure.="" family="" finding="" gy="" hazard="" history.="" history="" increased="" increasing="" indication="" mammography="" no="" not="" number="" of="" on="" p="" pattern="" procedures="" radiographs="" ratio="" respectively.="" risk="" sensitivity="" showed="" that="" the="" this="" to="" types="" was="" were="" with="">

CONCLUSION:

In this large European study among carriers of BRCA1/2 mutations, exposure to diagnostic radiation before age 30 was associated with an increased risk of breast cancer at dose levels considerably lower than those at which increases have been found in other cohorts exposed to radiation. The results of this study support the use of non-ionising radiation imaging techniques (such as magnetic resonance imaging) as the main tool for surveillance in young women with BRCA1/2 mutations.

Comment in

0 件のコメント:

コメントを投稿