2018年5月30日水曜日

癌の各国別5生率

癌の各国別5生率というものがランセットに発表されていた。3月のことのようだ。毎日新聞の記事を引用させていただく。

毎日新聞2018年3月5日 東京朝刊より引用
















各国のこの差はいかなる理由によって生まれるのか・・・これを臨床腫瘍学認定医(そんなものがあるのかどうか知らないが?)試験の筆記問題にすると面白いと思う。

人種差・・・・・・・・新聞レベルならまずこれだろう。
サブタイプの違い・・・胃がんはそうであろう。
医療水準の差・・・・・これは微妙ではないか?

なおここでは発見される腫瘍の臨床病期が違う、臨床病期の割合が違う・・・という「いつものあの議論」はしない。

結腸と乳房の5生率が6カ国でほぼ同じであることに注目したいということにとどめたい。

これはこの6カ国の医療水準がほぼ同等であることを意味するのか?
あるいは医療水準に関わりなく(発見が早かろうが遅かろうが、手術が精緻であろうが精緻でなかろうが、術後補助療法をやろうが、やるまいが)こんなものなのか考えてみたい。疫学の妙味である。

20年前は「日本人の乳がんは性質が良い」と言われていた。同じ臨床病期であっても他国に比べ予後が良いと喧伝されていた。2018年現在では「日本人の乳がんは性質が良い」とは全く言えなくなった(だって上記6カ国の生存率は90%で事実上等しい)

これが何を意味するか?他国の臨床水準が上がった?日本の乳がんの性質が変化した?他国の乳がんと日本の乳がんが生物学的に似てきた?

20年前の他国の乳がん5生率を調べてみたいと思う。この20年間で日本の乳がん5生率はどれくらい変化したのだろう?

乳がんは2018年には年間8万人みつかることになるという。あっというまに3倍以上に増えているはずだ。その殆どは「早期乳がん」であるが、5年生存率は上がらない。韓国の「甲状腺がん」のようにならないようにしてもらいたい。(韓国は国を挙げて甲状腺がん早期発見プロジェクトを行ったが、予後の向上につながらないため2013年にプロジェクトを中止した)

結腸がんはどうであろう?
各国ほとんど横一線65%前後というのが興味深い。これって何を意味するのであろう?人種差があるのだろうと思っていたよワタシ。左側と右側の違い。修復遺伝子異常の違い。言われるほどはないんだろうな。

胃の違いはこれはピロリ感染胃がんの違いであろう。日本韓国は胃がん絶対数が多い。早期胃癌で発見治療される割合が高いのでその部分が5生率を上げている。他国は胃がんが少ないことがこの歴然とした差の原因だ。

食道がんは医療進歩の総合的成果が現れているはずだ。手術手技の向上、麻酔の向上、手術器具、胸腔鏡・腹腔鏡、栄養、術後化学放射線療法。しかし最も貢献しているのはおそらく他国にはみられない日本における上部内視鏡試行数の多さであろう。早期食道癌の発見と内視鏡的治療。36%という日本の数字(これは驚異的進歩である)の一定の部分は内視鏡によるものだろうと思う。

肺がんの違いはなんだろう?これはよく言う、アジア、女性、遺伝子異常・・・人種差なのか?ここまで効いてくるのであろうか?

さて小生がもっとも気になったのが白血病である。この日本人の成績の悪さは何なのだ?他のがんとの比較というコンテクストで誰か納得のいく説明をしてくれないものか?日本がここまで悪いとは思わなかった。

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