最近広範熱傷の方を入院でみている。皮膚移植された大部分は生着順調であるが、わずかに残ったびらんから耐性緑膿菌が出ている。あと少しなのだが、無視はできない。
その昔緑膿菌と私は戦っていた。いろんな感染症が一段落するころ出現する。武田やその他の会社は緑膿菌によく効くという抗生剤を開発し我々も使ったものだが、なかなか難渋したものだ。
いろんな経験から体表の緑膿菌に一番よく効いたのは「お酢」であるというのが、小生の実感である。
私のかつていた大学病院には「酢酸ガーゼ」というものが用意されていた。まあ薄めたお酢にガーゼを浸した容器である。包交車にはそのガラスの容器がいつも載っている。昔はリバノール(アクリノール)も同様にガラスの容器に常備されていて良く使ったものだ。
さてその「酢酸ガーゼ」であるが、文献的根拠はあるのだろうか?
本日偶然その一端にであうことができたのでメモしておく。
Brit, Med. Jの1963年の論文である。0.5%の酢酸溶液でよいとある。
熱傷面は履々緑膿菌によつて汚染される。特に罹患面が尿に浸漬されやすい場合はそうである。この感染において警戒すべぎことは,皮膚深層を破壊するために,初めは表在的皮膚欠損であつたものが,皮膚全層の欠損に変ずることである。従つてできるだけ早く緑膿菌の存在を確認しなければならない。包帯を余り換えない最近の治療法の場合は,緑膿菌は,帯青緑色の膿を認めたとき,その存在が確められるし,また毎日包帯のにおいをかけば,猫の尿に似る独特なにおいでそれと分かることが多い。試験室の検査によると緑膿菌はポリミキシンBあるいは他の抗生物質に対して感受性を示すことが屡々であるが,しかし治療となるとその物質を用いても無効のこがと多い。それでかえつて古くから知られている方法が有効である。すなわち酢酸の0.5%水溶液をガーゼにひたし,これを傷面にあてて包帯する。包帯交換は1日3〜4回とする。3日以内には緑膿菌は傷面には存在しなくなるのである。この治療法は全く特異的で,他の細菌には功を奏さない。なおこの溶液は緑膿菌膀胱炎の膀胱洗滌に用いて甚だ効果的である。酢酸の吸収は全く問題とならない。たとえ僅か吸収されたとしても,酢を茶匙一ぱい口から飲む以上に有害ではない。(Thomas, G. K.:Pseudomonas Infection of Burns, Brit, Med. J., Jan. 19, 191, 1963)
すべての症例に有効であるとは断言できないが、使う抗生剤がなく(耐性だし)本当に困った先生方は参考にしてほしい。なかなかよく効くのである。酢を茶さじ一杯飲む・・と書いてあるが、その程度でもその匂いは強烈である。いかにも効果がありそうな治療法なのだ。
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