2020年5月15日金曜日

ひっそり抗体陽性になるということ・・・

米国の小児透析室で1人のコロナPCR陽性患者からスタッフへの院内感染が起こった。この伝播ではPCRを指標にした検査では陽性伝搬は追えないが、抗体検査でみると陽転していく過程が認められる。症状なく、PCRも陽転せず、しかし抗体陽性が伝搬していくことが示された。

このような事例が今後更に積み重ねられると、不顕性感染の広がりと集団免疫成立のメカニズムが明らかになることだろう。


Asymptomatic Seroconversion of Immunoglobulins to SARS-CoV-2 in a Pediatric Dialysis Unit














透析ユニットは感染症伝播のリスクが特に高く、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の蔓延が懸念されている。中国・武漢の透析ユニットでは、オープンベイ形式やローテーション/複数の看護配置など、社会的な距離を置く努力を制限する独自の曝露課題に起因して、高いコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の有病率が報告されている。

方法
インディアナ州インディアナポリスにあるライリー小児病院(Riley Hospital for Children, Indianapolis)の自立型外来 5 床 3 隔離室小児血液透析ユニットの患者、看護師、医師、スタッフを対象に、SARS-CoV-2 抗体の連続測定を行った。血液透析は月・水・金の2交代制で行われている。すべての患者は、入室前にCOVID-19の体温と症状のスクリーニングを受けた。患者は常にサージカルマスクを着用し、医療従事者もシフトの前後に体温をチェックした。

本試験開始の1週間前(0日目;2020年3月25日)に、1人の患者が発熱と全身症状を呈した。鼻咽頭スワブのSARS-CoV-2の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の結果は陽性であり、その後のスワブの結果は19日目(2020年4月11日)まで7日目と14日目に陽性のままであった。患者は0日目以降、隔離室で透析を行った。7日目、14日目、および21日目(2020年4月1日から2020年4月15日まで)に、SARS-CoV-2酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISAs)(#KA5826、Abnova)を用いて、全試験参加者からの全血検体からの血清IgMおよびIgG値を測定した。確認用ELISAはマウントサイナイ医療センターで実施した。ELISA および確認検査は既報の通り製造元の指示に従った。ELISA の感度および特異度は製造元からは提供されなかった。

参加者全員(または法定代理人)が書面または口頭で参加に同意した。ヒト被験者の承認は、インディアナ大学の機関別審査委員会を通じて取得した。

結果
患者13名、透析看護師9名、ナースプラクティショナー2名、スタッフ4名、医師10名が参加した。すべての参加者の特徴と結果を表に示した。0 日目から 7 日目までの間に、2 人の医療従事者が上気道症状と発熱にもかかわらず PCR 検査の結果が陰性であった。これらの医療従事者のうちの1人は、3回のPCR検査結果が陰性であったにもかかわらず、その後21日目に血清転換した。7日目までに鼻咽頭検査やCOVID-19と一致する症状を呈した参加者は他にいなかった。

21日目までに、25人の医療従事者のうち11人(44%)、13人の患者のうち3人(23%)がSARS-CoV-2抗体陽性であった。7 日目から 21 日目までの間に症状を発症した参加者はいなかった。PCR 陽性患者を直接介護した医療従事者で血清転換した者はいなかった。

不顕性の血清転換を起こした2人の患者をケアした11人の医療従事者のうち2人がSARS-CoV-2抗体を発現した。2人とも無症状のままであったが、1人はIgMの血清転換により鼻咽頭PCR検査で陽性となった。

考察
この研究では、小児透析室での患者の不顕性血清転換の有病率が高いことが明らかになった。我々の知る限りでは、医療現場での血清転換に関する他の研究は存在しない。1人の症状のあるPCR陽性患者が感染源となった可能性があるが、他の医療環境やコミュニティからの感染を否定することはできない。医療従事者における不顕性の血清転換の有病率は、予想される以上に多くの医療従事者が抗体陽性である可能性を示唆している。血清有病率に関する情報は、SARS-CoV-2陽性者や陽性と疑われる患者のケアに、血清転換した看護師や医師を戦略的に配置することを可能にする。この研究には、サンプル数の少なさ、追跡期間の短さ、ELISA の大規模な感度・特異性の欠如、PCR 陽性からの抗体陽性の遅れ、単一の小児透析ユニットの設定などの制限がある。

また,SARS-CoV-2に対する抗体反応の持続性を調べるための長期的な追跡調査も必要である。

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