2009年7月26日日曜日

宮園浩平研の最新Nature論文

宮園さんのところからmiRNAの発表があった。一応敬意を表して読んでおこう。最近宮園研はこんなこともやっているのか.

Nature 460, 529-533 (23 July 2009)

細胞: p53によるマイクロRNAプロセシングの調節

Hiroshi I. Suzuki1, Kaoru Yamagata2,3, Koichi Sugimoto4, Takashi Iwamoto5, Shigeaki Kato2,3 & Kohei Miyazono1

  1. Department of Molecular Pathology, Graduate School of Medicine, University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan
  2. Institute of Molecular and Cellular Biosciences, University of Tokyo, 1-1-1 Yayoi, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0032, Japan
  3. ERATO, Japan Science and Technology Agency, 4-1-8 Honcho, Kawaguchisi, Saitama 332-0012, Japan
  4. Division of Hematology, Department of Internal Medicine, Juntendo University School of Medicine, 2-1-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8421, Japan
  5. The Center for Education in Laboratory Animal Research and Department of Biomedical Sciences, College of Life and Health Sciences, Chubu University, 1200 Matsumoto-cho, Kasugai, Aichi 487-8501, Japan

Correspondence to: Kohei Miyazono1 Correspondence and requests for materials should be addressed to K.M. (Email: miyazono@m.u-tokyo.ac.jp).

マ イクロRNA(miRNA)は、さまざまな生理過程や病理過程にかかわる、遺伝子発現の重要な転写後調節因子として注目されている。miRNAは、がんの 発生過程でがん抑制因子、発がん因子の両方の働きをしうるが、ヒトのがんではしばしばmiRNAの広範な発現量減少がみられ、miRNAレベルの広範な低 下は細胞の形質転換とがん形成を促進する。このことは、腫瘍抑制に低分子RNAが固有の意味をもつことを示している。しかし、がん抑制因子ネットワークと miRNA生合成機構との結びつきは、これまで詳しく研究されていない。今回我々は、重要ながん抑制因子であるp53がDNA損傷に応答して、増殖抑制作 用をもつmiR-16-1、miR-143、miR-145など数種類のmiRNAの転写後成熟を促進することを明らかにした。HCT116細胞やヒト二 倍体繊維芽細胞では、p53はDEADボックスRNAヘリカーゼp68(DDX5ともよばれる)との結合を介してDroshaプロセシング複合体と相互作 用し、miRNAの一次転写産物から前駆体へのプロセシングを促進する。また、転写因子として不活性なp53変異体は、Drosha複合体とp68の機能 的相互作用を阻害してmiRNAプロセシング活性を弱めることがわかった。これらの知見は、p53が制御するがん抑制プログラムに、転写調節とは独立した miRNA生合成調節機能が組み込まれていることを示唆している。今回の研究により、p53がmiRNAプロセシング過程の中でこれまで知られていなかっ た役割をもつことが判明した。このことは、がんの生物学で重要な意味をもつ可能性がある。

鳩山首相の後継者は「POCAPON(ポカポン)」

鳩山首相の後継者は「POCAPON(ポカポン)」・・・などという資料が50年たって公開された。毎日新聞の報道である。アメリカ側の資料であり、先の核持ち込み資料などと同様、日本側の裏付けはない。総選挙の直前にこのような文書が出てくるところが面白い。一部を引用しよう・・・・

・・・・日本民主党の鳩山首相は、ソ連との国交回復に意欲的だった。ソ連が左右両派社会党の統一を後押ししていると見たCIAは、保守勢力の統合を急務と考え、鳩山の後継候補に緒方を期待。「POCAPON(ポカポン)」の暗号名を付け緒方の地方遊説にCIA工作員が同行するなど、政治 工作を本格化させた。同年10~12月にはほぼ毎週接触する「オペレーション・ポカポン」(緒方作戦)を実行。「反ソ・反鳩山」の旗頭として、首相の座に押し上げようとした。・・・・

2009年度の政治を50年後に振り返ったとき、またまた外交文書が明らかになっていくのだろう。振り返ると当然アメリカ、ソ連、中国の干渉はあっているのだろうが、それがどれくらいのもので、だれが日本側のキーマン(日本国民にとっては裏切り者かな)なのだろう。世の中で言われているように小泉さんなのだろうか?

医療に関して言えば、小泉時代のある時期は本当に危なかったと思う。自由診療の問題である。日本の医療人は「自由診療」の選択をとろうとしない。診療報酬の面から言えば、圧倒的に有利な「自由診療」ーーだって、自分の診療の値段を自分で付けることができるのだからーーーを敢えて取らないのはどうしてだろう?このメンタリティは格好の研究対象になりうるはずだが、寡聞にしてそんな面白そうな分析を読んだ記憶がない。誰か書かないかな。

2009年7月25日土曜日

甲状腺機能低下症、TSH髙値(FT4正常)は治療すべきか?

甲状腺機能低下症は治療すべきか?

治療しなくてはいけないことはわかりきったことである。以前診た外来患者のようにT3T4が枯渇している患者も世の中にはいるわけであるし・・・

問題はTSH髙値(FT4正常)患者である。

結論をいえば、TSHの値だけで治療を開始しなくてはいけない(したほうがむしろよい)らしい。

僕は考え方が完全に誤っていたようだ。FT4 が正常なら、まだ大丈夫だと思っていたが、そうではないらしい。僕の持ち患者さんの中にはこれまで
TSH髙値(FT4正常)患者が何人もいた。そそて誰一人チラージンの投与を始めた人はいなかった。甲状腺機能低下症と思われる症状を持っていながらである。僕はFT4正常なら、まだまだ治療の必要はないんだろうと思っていた。

参考文献である。
  1. 「09年度今日の治療指針」:TSHが10以上ならチラージン投与を始め、その後1〜2ヶ月おきにTSHをはかりチラージン量を決めていく。当初の投与量は12.5~25ug/dayとする。

  2. 第11版ワシントンマニュアル(07年版):TSHが20uU/ml以上なら診断確定、10~20 uU/mlなら軽度あるいは潜在性であるが症状は既に出ていることも多い。治療はT4 (レボチロキシン) 1.6 ug/kg (75~ 150 ug/day) 高齢者では50 から、心疾患がある患者では25~50からスタート。
以上まったくT3T4の値は出てこない。参りました。早速チラージン投与を始めなくてはいけない患者がいる。

参考意見(1)

潜在性甲状腺機能低下症

(1)診断
同時に測定した遊離型サイロキシン(FT4)とTSHで、 FT4が基準値内でTSHは基準上限値を超える値であることによる。鑑別診断として、非甲状腺疾患Nonthyroidal illness (NTI)、中枢性甲状腺機能低下症などが重要である。

(2)症状と合併症
また、TSHの低下群は心房細動の誘発をおこす。更に、 潜在する冠動脈不全症状を顕性化させる。 潜在性甲状腺機能低下症は無症候性であることが多い。しかし、甲状腺機能低下症の一般的症候である、皮膚乾燥、発汗減少、体重増加、便秘、嗄声、難聴、腹水などをきたしうる。鬱状態や認知障害をきたすこともある。また、心機能異常や、冠動脈疾患を含めた動脈硬化症の進展、LDLコレステロール高値などの脂質代謝異常をきたす。 更に、潜在性甲状腺機能低下症は、妊娠の継続、合併症、児の発育や、生まれた子供の将来の発達にも障害をもたらすことが注目されている。 補充治療の有効性については証拠不十分のものもある一方、これらの障害はT4による補充治療によって改善するとの報告がある。


参考意見(2)

尿路系の気腫??

ニューイングランドにはImages in Clinical Medicineというコーナーがあってなかなか楽しめる
最新号(Volume 361 — July 23, 2009 — Number 4)では以下のイメージが載っているが、見た瞬間重症糖尿病を思い浮かべるようになりたいものだ。

Air in the Urinary Tract

2009年7月24日金曜日

インスリンは早めに使い始めましょう!

2型糖尿病に対するインスリン療法の開始時期について、エビデンスに基づいた基準はありません。しかし、β細胞を疲弊させる前には開始すべきであり、私自身は表1のような3つの基準を考えています。

【表1】 山田先生が考える2型糖尿病患者にインスリン治療開始を考えるべきタイミング
  • 食事療法を徹底しても空腹時血糖値が十分下がらない(入院時の空腹時血糖値200mg/dLが3〜4日で180mg/dL以下まで下がる場合は経口剤のみを再開)。*1
  • CPI(C-peptide index)が0.8以下。*2
  • SU剤の保健認可の最大容量の半分を使用し、さらに、メトホルミンおよびないしはチアゾリジンを併用してもHbA1cが7%を切らない。

*1  入院患者の場合

*2 CPI=空腹時Cペプチド × 100/空腹時血糖値

CPIとは、インスリン分泌能を評価する指標の1つで、“空腹時Cペプチド×100 / 空腹時血糖値”で求められます。非専門医の先生方でも外来で簡単に得られる指標です。
SU剤は、保険適応上の最大用量の8分の1〜6分の1からはじめて、必要があれば4分の1〜3分の1程度まで増量し、その後はメトホルミンかチアゾリジンの追加、もしくは両剤の追加をします。そして、SU剤を最大用量の2分の1まで増量してもHbA1cが7.0%を切らない場合、それ以上、SU剤を増量するのはβ細胞を疲弊させるだけです。

皆既(部分)日食を観る

09:26am: ようやく晴れ間がのぞくようになる。心配していたが、日食を拝むことが出来そうだ。

10:41am:絶妙だ。薄曇りが幸いしている。肉眼で欠けた太陽が見える。晴天なら肉眼では見えなかっただろう。なんだか不思議だ。今7割は欠けている。外は暗くなっていく。やけにカラスがうるさい。カラスなんかいたっけ?

10:57am:新月のミラーイメージ・・とも違うが。さすがに皆既ではないだけに若干明るいのが残念。しかしずいぶん涼しくなってきた。眼が痛いがしょうがない。眼がつぶれてもいいな。これなら。今9割以上欠けているのだ。

11:02am:当地では最大食に入った。雲の具合では眼が痛いが、濃淡があるのでかなりはっきり見える。smoked glassなど使わなくとも実物が見えるのは天の配剤としかいいようがない。素晴らしい。

12:00頃am:厚い雲の中に入ったままの太陽だが、辺りが明るくなっているのに気づく。やはり暗くなっていたのだ・・ということに初めて気が付く。テレビを見ると硫黄島の中継をやっていたが、NHKの抜かりなさに拍手だ。おそらく南西諸島に取材の最大勢力を配していたに違いないのだが、あいにくの雨模様である。もちろん天候のことを考えての第三手くらいの予備配置だったのあろう。レポーターは1人。彼以外は大自然というのが良かった。このレポーターの素人っぽさもまた良かった。可哀想だったのは、東京のスタジオに居た連中である。ちょっと外に出れば生の部分食がみれたに違いないのに、画像だけしか拝めなかったわけだ。なかでも天文学者が可哀想だった。自分で引き受けたとはいえ、実際にみたかったことだろうよ。

街頭の声がよかった。我が町の中心街での取材もあったが「この町に住んでいてラッキーでした。日本中の他の地方は雨、曇り模様だったらしいですから」といっていたが、同感である。

しかしこうも思ったよ。部分食というのは絶対的感動にはほど遠いな。なぜなら恐怖感がなかったから。つまり9割の太陽が隠れても、周りは余り暗くならんのだよ。ダイヤモンドリングも見えないし。古代人が畏怖したという突然の暗闇を体験したかったんだけど太陽は燦々と輝いていたのだ、月の蔭から。やはり完全に隠れないと町は暗闇にならないことを知った。来年はイースター島で日食があるのだそうだ。そのタイミングでかの島で学会が開かれないかしら・・・甘いかな。

2009年7月20日月曜日

イヌの遺伝学はやはり面白い

新しいサイエンスを眺めていたら、

An Expressed Fgf4 Retrogene Is Associated with Breed-Defining Chondrodysplasia in Domestic Dogs

なる論文が目を引いた。2年前くらいに現在家畜化されたイヌ族の系統的ゲノム研究が発表され、それによるとイヌが現在のようにヒトと仲良しになったのは2万年前くらいからだとされていた。そして大型犬と小型犬(これらはヒトが酷い努力を長年に渡ってかけて得られた一種の奇形、正確に言えば固定された変異種)のゲノム構成の差をある遺伝子に求めていた。一般に進化を再現することは困難であるが、イヌ族のここ2万年くらいの進化は比較的科学的にトレースされるのだと知って、面白いもんだと思い当時の抄読会で取り上げた覚えがある。最新のこの論文はFgf4 Retrogene がいつ頃からイヌ族のあるサブ・グループに固定され、どのように未来のイヌたちに受け継がれていったかを示すもの・・・だと思う(定期購読者ではないのでアブストラクトしか読めないの・・・私の推測だ)

このような研究はなかなか臨床家の目に触れない(ように思える)が、数多の最新のヒト臨床研究より実は余程面白いのだ。仲間に頼んでpdfを手に入れるとするか。

ニコラス・ケイジのノウィングを観る

久しぶりの三連休である。入院持ち患者は14人(連休直前に3人退院)であり、容態はそれほどねまっていないので、連休らしい連休をすごせた。電話連絡のない休みも久しぶりだ。余りに連絡がないから、こちらから電話する日々。

一昨日は日帰りで鹿児島へ行く。そして昨日は暇だったので、映画に出かけた。大体の辺りは付けてシネコンへは行くのだが、何を見るのかは行ってから決める。最近は映画館に行かないので、なにが上映されているのかさっぱりわからない。3週間前に「天国と地獄」を久しぶりに見たとき予告編で二つの映画が印象に残った。新田次郎の「剣岳」の映画化と「ある終末映画」である。飛行機が落ちてくるやつ。事前にネットで調べたら(上映時間)ノウィングというらしい。これを見た。これ久しぶりに琴線に触れる(画像なのに)映画だったかもしれない。(なにしろ面白いと思った「天国と地獄」でさえ、3週間もたつと印象が極度に薄れているこの頃だから、この映画を将来に渡って覚えていられるか自信がない(笑))

旧約聖書で語り継がれてきた人類学的記憶の源泉にはこんなエピソードがあったのね・・・これなら非決定論者も納得するしかない。神話を馬鹿馬鹿しいと貶める私であるが、一方で何故私(たち)が神話的記憶から逃れられないかわからない。逃れられないから、性懲りもなくこんな映画を飽きもせず見に行くのだ。そんなこんなで、忘れられない記憶にはきっと深く重苦しい意味があるのだろうと最近強く思うようになる。忘れたいのだけど、きっと忘れられないようにできているのだ。


近ころは終末論的映画が非常に多い。毎年いったい何個の地球が破滅をむかえていることになるのだろう?いろんな映画で「劫火」を見たが、この映画の劫火は本当におそろしい。すぐそこに現実の地球の劫火がちらほら見えてくるようで、実は吐き気がした。

この映画旧約そのものなんだけど、エゼキエルが2回出てくる。最初はヒロインの母というか予言を残した謎の少女の小屋に貼ってあった終末の預言図。もう一つは、これはなかなか気が付かないと思うけど、エンドロールでこの映画を作成した会社の名前。この映画のフィルムメークには当然何らかの宗教的臭気があるはずなんだけど、ネットのみなさん余りそのことには触れない。

Ezekiel Films
275 Williamstown Road, Port Melbourne, VIC 3207
Website - None Supplied
Email - None Supplied

この映画オーストラリアで撮られたことは承知の事実だけど、作成会社のホームページも無ければ、連絡先もないなんてあり得る?

将来からの読者よ、誤解しないで欲しい。僕はこの映画にいたく感銘を受けているのです。良くできている。本当にそう思います。

2009年7月14日火曜日

半夏厚朴湯の効果

バレー・リュー症候群:彼女に漢方薬は効いたか?

一昨日までは余り調子が良くなかった。むしろ悪かった。頭痛、浮遊感、夜間不眠、喉の痛み、喉の通過障害、後頚部の痛み、食欲不振が次から次へと現れていた。これがむちうち受傷30日頃である。グランダキシンと半夏厚朴湯を飲み始めたのが、受傷23日ころからであった。つまりこの一週間飲んでおり、最初の5日は可もなく不可もなく、しかし症状は消えず、すっきりしなかった。彼女「悪くはないけど」とは言うが、決して「楽になった」とは言わない。

しかしこの2日間の好転ぶりはどうだ!朝のすがすがしい顔。喉の痛みがようやくレベル3(最もひどい時を10として評価する例のスケーリング)、今日は初めて外出したいと出かけていった(松葉杖で)。明らかに好転の兆しがある。まだ飲み始めて5日目であるが、この組み合わせは効果があるかもしれんな。

Rhマイナスはどれくらいいるのか?

日本人における血液型別出現頻度
血液型 A型 O型 B型 AB型
出現頻度 4/10 3/10 2/10 1/10 10/10
Rhマイナスを加味した出現頻度 4/2000 3/2000 2/2000 1/2000 1/200


大阪府赤十字血液センターにおけるRhマイナス登録者数
(平成21年3月31日現在)
血液型 A型Rhマイナス O型Rhマイナス B型Rhマイナス AB型Rhマイナス Rhマイナス合計
登録者数 2,223人 1,733人 1,357人 816人 6,129人

再生不良性貧血 with Rh(-)

来週再生不良性貧血に加え、Rh(-)という患者さんが入院してくる。私は大腿骨骨折術後のリハビリ担当だ。
しかし、ややこしい患者さんの多いこと

再生不良性貧血

■概念・定義

再 生不良性貧血は、末梢血で汎血球減少症があり、骨髄が低形成を示す疾患である。血球減少は必ずしもすべての血球というわけではなく、軽症例では貧血と血小 板減少だけで白血球数は正常ということもある。診断のためには、他の疾患による汎血球減少症を除外する必要がある。特に診断がまぎらわしい疾患は骨髄異形 成症候群の不応性貧血である。

大きく分けて(1)先天性の再生不良性貧血(Fanconi 貧血と呼び、種々の奇形を合併することが多い)と(2)後天性再生不良性貧血がある。後天性再生不良性貧血は一次性あるいは特発性(原因不明)と二次性 (薬剤・薬物・放射線被曝などによる)に分類される。その他、特殊型として肝炎後再生不良性貧血と発作性夜間血色素尿症(PNH)を合併するPNH−再生 不良性貧血症候群などがある。いずれも造血幹細胞の減少または質的異常による。

■疫学

臨床個人調査票を用いた2006年の解析ではわが国の患者数は約11,000人で、年間新患者発生数は100万人あたり6人前後であった。女性が男性より約1.5倍多く,年齢別には20歳代と60〜70歳代にピークがある。

■病因

造 血幹細胞が減少する機序として造血幹細胞自身の質的異常と、免疫学的機序による造血幹細胞の傷害の二つが重要と考えられている。造血幹細胞の質的異常は (1)再生不良性貧血と診断された患者の中に、細胞形態が正常であるにもかかわらず染色体異常が検出される例や、のちに骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndrome: MDS)・急性骨髄性白血病に移行する例があること、(2)Fanconi貧血やテロメラーゼ関連遺伝子の異常による骨髄不全のように、特定の遺伝子異常 によって再生不良性貧血を発症するモデルが存在すること、などから推測されている。

一方、免疫学 的機序による造血抑制を示唆する所見として(1)再生不良性貧血患者に一卵性双生児の健常ドナーから移植前処置無しに骨髄を移植した場合約半数にしか造血 の回復が得られないが、同種骨髄移植に準じた免疫抑制療法後に再度骨髄を移植するとほとんどの例に回復がみられる、(2)抗胸腺細胞グロブリン antithymocyte globulin(ATG)やシクロスポリンなどの免疫抑制療法が再生不良性貧血患者の約7割に奏効する、(3)再生不良性貧血のかかりやすさと特定の HLA-DRアレル(DR15)との間に相関がある、などがある。これらの他に、骨髄において抗原特異的なT細胞の増殖がみられること、造血幹細胞が高発 現している蛋白に特異的な自己抗体が高率に検出されること、などの免疫学的機序を示唆する新たな証拠が得られつつある。しかし、骨髄不全の原因となる自己 抗原はまだ同定されていない。

■症状

(1)貧血症状

顔色不良、息切れ、動悸、めまい、易疲労感、頭痛。

(2)出血傾向

皮膚や粘膜の点状出血、鼻出血、歯肉出血、紫斑など。重症になると血尿、性器出血、脳出血、消化管出血もある。

(3)発熱

顆粒球減少に伴う感染による。

■検査成績

(1)末梢血所見

赤血球、白血球、血小板のすべてが減少する。軽症例では貧血と血小板減少だけで、白血球数は正常ということもある。貧血は正球性正色素性または大球性を示し、網赤血球の増加を伴わない.白血球の減少は顆粒球減少が主体である。

骨髄穿刺・生検所見

有 核細胞数の減少、とくに幼若顆粒球・赤芽球・巨核球の著しい減少がみられる。骨髄細胞が残存している場合には赤芽球や好中球に異形成を認めることが多い。 染色体は原則として正常であるが、病的意義の明らかでない染色体異常を少数認めることがある。骨髄生検では細胞成分の占める割合が全体の30%以下に減少 している。残存する造血巣が穿刺された場合には骨髄が正形成を示すこともあるが、そのような場合でも巨核球は必ず減少している。

血液生化学検査所見

血清鉄、鉄飽和率、血中エリスロポエチン値、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor,G-CSF)値などが増加する。

骨髄シンチグラフィおよびMRI

111Inを用いたシンチグラフィでは全身の骨髄への取込み低下がみられる。MRIのSTIR法で検索すると胸腰椎は均一な低信号となり、T1強調では高信号を示す。

免疫学的検査

感 度の高いフローサイトメトリを用いて末梢血の顆粒球、赤血球を検索するとdecay accelerating factor (DAF, CD55) 、homologous restriction factor (HRF, CD59)などのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー膜蛋白の欠失した少数のPNH形質の血球が約6割の患者で検出される。この PNH型血球陽性例は陰性例に比べて免疫抑制療法が効きやすく、また予後も良いことが知られている。

■診断・鑑別診断

骨 髄低形成と汎血球減少を来す他の疾患を除外して初めて診断が確定される。わが国で使用されている診断基準を表1に示す。フローサイトメトリによってPNH タイプ血球の増加が検出され、かつLDH・間接ビリルビンの上昇やヘモグロビン尿などの溶血所見がみられる場合はPNHと診断する。


■治療

支持療法

患 者の自覚症状に応じて、ヘモグロビンを6-7g/dl以上に維持するように白血球除去赤血球を輸血する。予防的な血小板輸血は抗HLA抗体の産生を促すた め、明らかな出血傾向がなければ血小板数が1万/μl以下であっても通常輸血は行わない。好中球数が500/μl以下で感染症を併発している場合にはG- CSFを投与する。

造血回復を目指した治療

Stage1,2に対する治療(図1)

図1:Stage1及び2に対する治療指針

血 球数が自然に回復することがあるので、数ヵ月は無治療で経過を観察する。自然回復がみられない場合には、血球減少の程度が軽くても早めにシクロスポリンを 一定期間投与し、効果の有無をみる。これは、罹病期間が長くなると免疫抑制療法の反応性が低下するためである。2〜3ヶ月の投与で血小板や網状赤血球の増 加が見られなかった場合には、蛋白同化ステロイドの酢酸メテノロン(プリモボラン)に切り替えるか、ネオーラルにプリモボランを追加する。血球減少が進行 し、輸血が必要となった場合には速やかにウサギATG(サイモグロブリン)療法に移行する。蛋白同化ステロイドは腎に作用してエリスロポエチンの産生を高 めると同時に、造血幹細胞に直接作用して増殖を促すとされている。

Stage 3以上の重症例に対する治療(図2)

図2:Stage3から5に対する治療指針

ウ サギATG(サイモグロブリン2.5〜3.5 mg/kg/日を5日間点滴)とシクロスポリンの併用療法か、40歳未満でHLA一致同胞を有する例に対しては骨髄移植を行う。ATGはヒト胸腺細胞でウ サギを免疫することによって作られた免疫グロブリン製剤である。造血幹細胞を抑制するT細胞を排除することによって造血を回復させると考えられているが、 作用機序の詳細は分かっていない。シクロスポリンとの併用により、約7割が輸血不要となるまで改善する。成人再生不良性貧血に対する非血縁者間骨髄移植後 の長期生存率は70%以下であるため、適用は免疫抑制療法の無効例に限られる。

■予後

か つては重症例の50%が半年以内に死亡するとされていた。最近では、抗生物質、G-CSF、血小板輸血などの支持療法が発達し、免疫抑制療法や骨髄移植が 発症後早期に行われるようになったため、約7割が輸血不要となるまで改善し、9割の患者が長期生存するようになっている。ただし、来院時から好中球数がゼ ロに近く、G-CSF投与後も好中球が増加しない例の予後は依然として不良である。

一部の重症例や発症後長期間を経過した例は免疫抑制療法によっても改善せず、定期的な赤血球輸血・血小板輸血が必要となる。赤血球輸血がたび重なると糖尿 病・心不全・肝障害などのヘモクロマトーシスの症状が現れる。現在では経口徐鉄薬デフェラシロクス(エクジェイド)が使用できるようになったため、鉄過剰 症の管理は容易になっている。また,免疫抑制療法により改善した長期生存例の約5〜10%がMDS、その一部が急性骨髄性白血病に移行し、約10〜15% がPNHに移行する。

2009年7月10日金曜日

GERDのLA分類

GradeAのイメージGradeBのイメージGradeCのイメージGradeDのイメージ
Grade  A,  B,  C,  D

重症度

粘膜障害mucosal breakの程度

A

長さ:長径5mmを超えない。
部位:1つの粘膜ひだに限局。

B

長さ:少なくとも1つは長径5mmを超える。
部位:複数の粘膜ひだに存在するが、お互いに連続しない。

C

部位:少なくとも1ケ所では、2条以上の粘膜ひだに連続して広がる。
広がり:しかし全周の75%未満。

D

広がり:全周の75%以上の粘膜障害。

2009年7月8日水曜日

交通事故から3週間目に出現した突然の喉の痛みと嚥下困難

交通事故から3週間目に出現した突然の喉の痛みと嚥下困難

29才の女性。先月の9日に交差点で2tトラックに追突された。頭部と右下腿の打撲で入院。右前頭部に皮下血腫および右脛骨粗面の前方(つまり皮下)に血腫があり、右下腿の腫脹が著しく、歩行不能で思いがけず長期の入院(3週間)となった。脛骨粗面の皮下血腫は吸収が悪く、16Gのエラスターで穿刺し生理食塩水で洗浄を繰り返した。まあ古い血液、血塊が回収されて日に日に良くなっていったわけだ。頭部に関しては受傷後、頭痛がしばらくあったものの、しびれ、めまい、耳鳴り等々一切無く、食欲も良好で、排便も毎日健康にあっていた。

受傷後3週間(21日目)の夕方突然「喉が痛い」と訴えがあった。詳しく聞くと「左の喉が焼けるように痛い」という。風邪でもひいたのだろうと咽頭を見せてもらうが、発赤・腫脹は一切認めない。頚部のリンパ節腫脹、甲状腺の腫脹・圧痛も認めない。発熱なく、咳、痰、悪寒、関節痛、胸痛もなく、つまり上気道炎症状が一切無いのだった。

22日には喉の痛みは全周性になった。ものが飲み込めないという。よだれは出ない。熱もない。このころから後頭部の左側の痛みが出現してきた。血液学的検査を行うが、白血球やCRPは正常範囲であり、異型リンパ球も認めないのだ。EBVによるinfectious mononucleosisはなさそうである。神経内科に相談し MRIを撮るが(実はこの3週間で2回頭部CTを撮っているので、頭部のイメージングはこれで3回目)異常がない。

咽頭痛発症後2日目にネット検索を行い得た情報が昨日のバレーリュー症候群の記載であった。「あっ」と思いましたな。それと同時に「むち打ち」に関するある本の詳しい記述を思い出して、急いで読んでみた。実はあっと思ったのにはもう一つ理由がある。この2〜3日なんかおかしいなと私が思っていた理学的所見があったのだ。それは「汗」なのだ。それまですっきり乾いていた皮膚が、ここのところ汗ばんでいるなと感じ始めていたのである。この発汗というのは、バレーリュー症候群の本質である「自律神経異常」の一つの根幹症状なのだ。

この時点で思ったことは以下である。

  1. 29才の彼女の症状は亜急性に出現した「むちうち症」であり、バレーリュー症候群そのものである。
  2. 診断の確定のためにすることはまだいくつかありそうであるが、それよりも治療である。
  3. 自律神経を安定させるためにグランダキシンを処方した。特に発汗・多汗には効果があるとされている。
  4. 次に喉の違和感であるが、これには半夏厚朴湯を処方。ヒステリー球によく使われるらしい。
  5. 頚のマッサージと牽引(整形リハにつかうあの牽引機は使わない。ヒトの手で引っ張ってみたい、あるいはご家族に引っ張らせる)
  6. 湿布は使っていない。あとNSAIDs、VB12、ノイロトロピンなどを使うかどうかだが・・・余りにありきたりな治療だし、必要があれば追加する。
  7. さて、星状神経節ブロックである。星状神経節ブロックをどうするかが最大のポイントだ。するか、しないですむか。いつの時点で判断するか?
  8. さらに問題は「誰に」頼むかだ。私には出来ない。信頼に足る腕を持ったヒトといえば、あの方であるが、あの方は東京である。しかし、本当に必要な場合は東京のお方に紹介するつもりだ。この判断は29才の彼女の一生を決めるかもしれないから。
  9. いずれにしても、僕はこのむち打ち症状は必ず治してみせる。気づいたのが早かったわけである。なんでもそうであるが、早ければ早いほど治りが良い。むち打ちも早く対応すれば、尾を引かないと信じたい。

2009年7月7日火曜日

バレーリュー症候群

バレーリュー症候群(Barre-Lieou syndrome)の症状

交通事故でむち打ち症と診断されたとき、肩や首の痛みの他に、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り、難聴、動悸、声がかすれる、 異常発汗、下痢などの症状が続くことがあります。 これらの症状は、頚部周辺の自律神経系のうちの交感神経系の過緊張状態や椎骨動脈の循環障害などから発生すると考えられています。

治療

代表的な治療法は神経ブロック注射です。これによって頚部周辺の交感神経の過緊張状態を緩和させます。 星状神経節ブロック(喉の辺りに針を刺します)が多いようですが、大後頭神経ブロックや腰部硬膜外ブロックなども行われます。 ブロック注射の回数は、医師や患者の症状によりまちまちです。内服薬による治療もあります。



Barre(1925年)および Lieou(1928年)等により頚椎症に伴う症状の詳細な臨床研究があいついで報告され、頚椎症などを背景に主として後頭部にみられる頭痛と、いろいろな随伴症状、すなわちめまい、耳鳴り、眼の障害などを伴うものである。頭痛のもっとも強い点は、明らかに後頭部にあって、この痛みは両側の頭頂から前頭にかけて、またしばしば眼球後部に放散する。痛みは一側性のこともあり、また両側性のこともある。また他方痛みは項から肩、ときとしては一側、あるいは両側の上肢に放散する。頭痛は頭の位置の変動、前屈姿勢、頚への過度な負荷、運動、精神的興奮、頚の冷却、生理、低気圧、風邪気味などによって引き起こされ、また増強する。またある形のものでは、痛みが顔面に放散し、三叉神経痛様の焼けるような痛さ(三叉神経痛との鑑別)、あるいは顔面の違和感、知覚障害、顔面の血管運動障害、すなわち同じ側の顔面のほてりや発汗、眼の充血、紅潮のみられるものがある。

 
めまいの多くは立ちくらみ、浮動感で、地震のような揺れる感じ、歩行、起立不安定状態を招き、回転感は稀である。しばしば一側又は両側性耳鳴りを伴う(頭鳴)。またときとして耳閉感、軽度の聴力障害(多くは両側性)を伴うこともあり、あるいは耳の痛みを感ずる。眼の障害は疲れ眼になりやすく、眼の奥や周りに痛みが強く(緑内障との鑑別)、眼がぼんやり、眼のショボショボ感などがある。また角膜の知覚鈍麻をみることがある。

 Barre 症候群の経過中に、咽頭の症状を呈することがあり、多くの場合は咽の違和感で、重大なものではないが、
ノドのつかえる感じや、ときとして咽頭の灼熱感、痛み、さらには頚のほうへの放散痛をきたすことがある。また異物感、舌基部の痛み、場合によっては咽頭の知覚鈍麻、咽頭反射の減弱などもみられることがある。喉頭の障害としては、声の低下、嗄声 aphonie の急速な出現、あるいは憎悪などがみられる。”むち打ち症候群”、頚の前屈姿勢を強いられる趣味や業務などに際してしばしばみられる。
 精神状態はだいたい正常であるが、うつ状態、不安感、イライラや不眠など若干障害のみられる場合がある。診察に際し他覚的な陽性所見を認めることは、か なり少ないが、頚が回らない、寝違いを起こしやすい、頚椎棘突起の圧痛、神経根部の圧痛、その両側の筋肉の圧痛、Arnold 神経(大後頭神経)の圧痛点陽性などのみられることがある。

 Barre-Lieou 症候群の診断にとって、重要なのは、レントゲン写真、MRI所見である。正面像では、中央部において椎間部に靱帯の硬化による陰影の増強がみられ、椎体の 上面および下面に異常な陰影増強がみられる。外側のほうでは、脊椎間の関節面の変形がみられ、ときには上下関節突起の融合が起こって、さらにはときとして 鉤型に外に向かって骨の突起が生ずる。
側面像では、しばしば頚椎にみられる生理的な前彎の減少(いわゆるストレートネック)がみられ、ひどくなると後弯変形もみられ、脊柱管狭窄が高度なことも少なくない。こ れは特に Barre が指摘する点である。椎体の前面および後面の角に、鉤状の突起を生ずる。これら病変は、最近の知見では、C4,5,6椎体や椎間板に特に強く、日常生活、 趣味、業務などによって、長時間頚の前屈姿勢を強いられた時に負荷のかかりやすい部である。このような頚椎の病変が、そこを通る椎骨動脈に伴って走る神経 を刺激し、すなわち下頚部交感神経症候群、syndrome sympathique cervical posterieur(Barre-Lieou 症候群)を起こすと考えられている。しかしながらこのほかに頚部に存在する神経もまた、耳鼻科的、眼科的症状を引き起こすのに関与していると考えられる。


 この Barre あるいは Lieou の業績とは離れて、近年頚部の discopathie によって引き起こされる頭痛が認知されるようになった。その頭痛の特徴は、強さ、持続時間、場所はいろいろであって、
例えば痛みが眼の周辺やこめかみ、あるいは側頭部にあることもある。ツキツキ刺すような痛みしめつけられる様な痛み髪の毛に触っても痛いなどのことが多い。さらに随伴する症状として、悪心、嘔吐、眼(眼のショボショボ感、眼痛)および聴覚の症状(耳鳴、耳閉塞感)、いろいろな自律神経障害、動悸ならびに精神不安、集中力低下がみられ、痛みは頚から上肢のつけ根に放散、さらには前腕や手指のしびれや痛みなどを伴うことがある。レントゲン学的に頚椎の生理的前彎は減少して、直線化し、MRI所見では下部頚椎(C5からC7)の脊柱管が狭くなっている。これらの形態学的変形を背景に、頚の前屈(下を見る)、後屈(見上げる)などにより、容易に脊髄の微小循環の障害が発生し、多彩な症状を発生しうることが推察される。
 さらにこの頚椎の障害に伴って、虹彩異色症 heterochromie irienne,Horner 症候群、Adie 症候群などを伴うことがある。近年、本症候群の詳細は、MRI検査の発展に伴い、その病態の解明が期待される。


むち打ち症:外傷性頸部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん、英 traumatic cervical syndrome)

外傷性頸部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん、英 traumatic cervical syndrome)は、頸椎捻挫(けいついねんざ)ともいうが、一般には、むち打ち症(鞭打ち症、むちうち症)またはむち打ち損傷という俗称で呼ばれている。

頚椎捻挫症

追突などの衝撃を受けた際に、頚部を支える筋肉や靭帯引き伸ばされたり、傷ついて軟部組織の損傷が起こっている状態(捻挫)です。
むちうち症と診断されるものの、7割から8割程度がこの頚椎捻挫症と考えられています。

【症状】
首を動かした時の痛み・首が動きにくい運動制限・首や背中のこり・頭痛・めまいなど

根症状型

追突などの衝撃を受けた際に脊髄から出ている頚部の神経が引き伸ばされたり、頚椎にズレが生じることで圧迫を受ける事により起こります。

【症状】
圧迫された神経がつかさどる手足のしびれや痛み、だるさ、筋力の低下など
その他顔面痛、後頭部の痛み

バレ・リユウー症状型

追突などの衝撃を受けた際に、血行をつかさどる交感神経が損傷したり、椎間板や筋肉による圧迫を受けることによって、頚椎に沿って走っている椎骨動脈の血流が低下している状態です。

【症状】
後頭部や首の後ろの痛み、めまい・難聴、耳鳴り・吐き気・目のかすみ、眠精疲労・全身の倦怠感・集中力の低下など

脊髄症状型

頚椎の脊柱管を通る脊髄が傷ついたり、圧迫を受けた場合にみられます。下肢に伸びている神経が傷ついて起こります。

【症状】
下肢のしびれや知覚異常、歩行障害など
また、膀胱直腸障害が生じて、尿や便が出にくくなるケースもあります。

低髄液減少型

むち打ち症の中でももっとも自覚症状が分かりにくい病気です。
追突などの衝撃を受けた際に、脊髄液に強い圧力がかかり膜が裂けてもれる状態です。

以前は交通事故では起きないと考えられていたため、心因性とされたり、ひどい場合は「保険金目当て」とされたそうです。

【症状】
頭や首、手足などの痛み、聴力や視力、味覚の障害などの脳神経症状、血圧障害や胃腸障害などの自律神経症状、記憶力低下や不眠、うつなどの大脳機能障害、倦怠(けんたい)感などさまざま。

2009年7月6日月曜日

転移と言えばMassaguéです・・・

MassaguéさんがCellにまたまた転移関連論文を出した。WNT/TCFシグナルと肺転移であるが、先のNat Geneticsのrs6983267論文といい、近年の包括的癌関連遺伝子解析の結果が収斂しつつある感が強い。重要な遺伝子シグナルとしてはWNT/TCFシグナルがやはりpivotalであるということなのかな・・・・


Cell, 02 July 2009

doi:10.1016/j.cell.2009.04.030

WNT/TCF Signaling through LEF1 and HOXB9 Mediates Lung Adenocarcinoma Metastasis

Don X. Nguyen1,Anne C. Chiang2,Xiang H.-F. Zhang1,Juliet Y. Kim1,Mark G. Kris2Marc Ladanyi3William L. Gerald,Joan Massagué

1 Cancer Biology and Genetics Program, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY, USA
2 Department of Medicine, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY, USA
3 Department of Pathology, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY, USA
4 Human Oncology and Pathogenesis Program, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY, USA
5 Weill Medical College of Cornell University, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY, USA
6 Howard Hughes Medical Institute, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, NY, USA

Summary

Metastasis from lung adenocarcinoma can occur swiftly to multiple organs within months of diagnosis. The mechanisms that confer this rapid metastatic capacity to lung tumors are unknown. Activation of the canonical WNT/TCF pathway is identified here as a determinant of metastasis to brain and bone during lung adenocarcinoma progression. Gene expression signatures denoting WNT/TCF activation are associated with relapse to multiple organs in primary lung adenocarcinoma. Metastatic subpopulations isolated from independent lymph node-derived lung adenocarcinoma cell lines harbor a hyperactive WNT/TCF pathway. Reduction of TCF activity in these cells attenuates their ability to form brain and bone metastases in mice, independently of effects on tumor growth in the lungs. The WNT/TCF target genes HOXB9 and LEF1 are identified asmediators of chemotactic invasion and colony outgrowth. Thus, a distinct WNT/TCF signaling program through LEF1 and HOXB9 enhances the competence of lung adenocarcinoma cells to colonize the bones and the brain.

2009年7月4日土曜日

rs6983267とMYC

The 8q24 cancer risk variant rs6983267 shows long-range interaction with MYC in colorectal cancer

ここでの多型はTCFモチーフの中にあるらしい。G多型であるとその発現レベル(これはエンハンサー)が恒常的に上がっており、sis-acting(だってさ、そこからmycは350kbしか離れていない!)にmycを活性化させているようだ。ただし、これまでの膨大な研究で、 癌でmycがmRNAレベルで発現向上しているという確固たる証拠は少ないし、蛋白レベルでもその上昇は上がっているとするもの、そうではないとするもの諸説あってconsistentではない。つまりこの場合の「活性化」が何を意味しているのかがよくわからん。話はG多型ーTCF-mycという一直線の単純な話ではなさそう。実はこの論文と二本目のアールトーネンの論文は通底していて、お互いにデータを見せ合っているようだ。間違いではないのだろうが、話は今ひとつすっきりしない。

第一この単一多型による大腸癌の発症危険率は確か1.6程度と、ナンバーワン・チャンピオンとはいえ、通常の外因に比べると極端に低いのだ。この低さは不確かさではない。確かさというレベルでは、過去の臨床材料を用いたあらゆる研究のなかでも段違いに正確な評価なのであり RRが1.6程度であることが10000人を越える「遺伝子検査」を用いて、多型頻度が異なることが知られている人種ごとの違いを超えて、しかも複数の大規模研究で確かめられてる・・・ということなのだ。こんなに確かな研究成果も臨床研究では珍しい。ただし、それだけにRRの1.6には深い失望を覚える。
これ位の寄与率しかないものを、いったいいくつ見つければ(いくつ組み合わせれば)、癌になりやすいヒトの遺伝子多型ハプロタイプを見出すことができるのだろう?  数が多ければ多いほど、当然該当するヒトの絶対数は極端に少なくなっていく。疫学的・事前検診的スクリーニングの手法としてのパワーが落ちていくことが懸念されるわけだ。

2009年7月3日金曜日

Nature Genetics: 8q24はやはりMyc?

Nature Geneticsの最新号:8q24はやはりMycと関連して大腸癌発症に?

SNPs大腸癌で最も強い相関のある8q24 rs6983267が古典的癌遺伝子MYCと関連する(rs6983267に最も 近い遺伝子であることは昔から知られていたわけですが)とい う、一見するに余り魅力を感じない論文です が、どうしてNat Geneticsに載るような論文に仕上がって いるのか興味があります。


だれでも一度は調べたことのある遺伝子なんだけど、 大腸癌とMYCなんてね。

The 8q24 cancer risk variant rs6983267 shows long-range interaction with MYC in colorectal cancer

Mark M Pomerantz, Nasim Ahmadiyeh, Li Jia, Paula Herman, Michael P Verzi, Harshavardhan Doddapaneni, Christine A Beckwith, Jennifer A Chan, Adam Hills, Matt Davis, Keluo Yao, Sarah M Kehoe, Heinz-Josef Lenz, Christopher A Haiman, Chunli Yan, Brian E Henderson, Baruch Frenkel, Jordi Barretina, Adam Bass, Josep Tabernero, José Baselga, Meredith M Regan, J Robert Manak, Ramesh Shivdasani, Gerhard A Coetzee & Matthew L Freedman

Published online: 28 June 2009 |


二つ目は同じrs6983267がWntシグナルと関連しているとい う論文で、こちらの方が面白いかもしれません。 Aaltonenというのはもともとフィンランドの研究者で、 癌の遺伝学 ではフィンランドは極めてレベルが高いの ですが、その立役者の一人です。

Article
The common colorectal cancer predisposition SNP rs6983267 at chromosome 8q24 confers potential to enhanced Wnt signaling

Sari Tuupanen, Mikko Turunen, Rainer Lehtonen, Outi Hallikas, Sakari Vanharanta, Teemu Kivioja, Mikael Björklund, Gonghong Wei, Jian Yan, Iina Niittymäki, Jukka-Pekka Mecklin, Heikki Järvinen, Ari Ristimäki, Mariachiara Di-Bernardo, Phil East, Luis Carvajal-Carmona, Richard S Houlston, Ian Tomlinson, Kimmo Palin, Esko Ukkonen, Auli Karhu, Jussi Taipale & Lauri A Aaltonen