今現在パラダイムシフトが起こりつつある(あるいは転換終了した?)ことの一つは腫瘍のクローナリティの問題であり、どうやら『腫瘍(臨床癌はもちろんのこととして細胞株も)は様々なクローンから構成されている』というアイデアが定見化していると見て良さそうだということ。
新しいパラダイムというのはややこしくて、遅れてきた世代にとっては既に当たり前のことであるし、先行世代にとっては2つの受け止めされ方をするものだ(と思う)。
すなわち、定見が無く次から次へとアイデアを求め、ヒトの研究の批判で食べている(あるいは自分ではもはや何もしない・・・小生?)先行世代には、実は余りインパクトがない。時代の流れに取りあえず敏感だから、いつの間にか常識が移り変わっているという感覚がない。まるで自分が常識を変えたんだという思い上がりさえある。「だから言ってただろう・・・」というタイプ。
一方信念に基づいて研究を進めてきた研究者はなかなか受け入れない。早々簡単に受け入れられるものではない。自分の持つ理念や基礎概念は少々のことでは揺るがないから、あるいは揺るがないが故それまで研究を進めてこれた。それゆえ後輩の指導が出来てきたわけだからね。こういう人は最後まで信念を曲げずに、時代に取り残される。そのまま消えていく。まれにパラダイムが元に戻ったとき、再び脚光を浴びる。しかしこんな栄誉は滅多にない。
立派な研究者で頑固だと思われたヒトの中に、随分時間はかかるが、しかしある日を境に豹変する研究者もいる。こうなると弟子はたまらんな。こんなヒトは(元が優秀なだけに)豹変したとたん次のパラダイムの先頭に躍り出る。(躍り出るヒトもいる・・・かしらん)。
さて、『腫瘍(臨床癌はもちろんのこととして細胞株も)は様々なクローンから構成されている』は正しいのか?
Vogelsteinらの先の膵癌の研究でも、臨床の癌(剖検例)遺伝学的もヘテロであることが示されている。
最新のnatureではトロントのJohn E DickのところからBCR-ABL1白血病の臨床例を追いかけることでクローナリティの変遷を診ている。診断がついた段階でのクローンと再発時のクローンを比較している。検索手法はゲノム・コピー数の違い(CNA:copy number alteration)が指標だ。採取した白血病細胞をNOD/SCIDに移植し、増殖させたあと細かいクローンをソーターで分離CNAをみているようだ。NOD/SCIDに移植・増殖という過程でサブクローンの内部変遷がどうなるのかよくは読み取れないのが残念だが、結果はとてもきれいでサブクローンの系統図が複雑なのにはおどろく。
Nature
Volume:469,Pages:362–367
Date published:(20 January 2011)
Received 10 June 2010
Accepted 03 December 2010
Published online 19 January 2011
Evolution of human BCR–ABL1 lymphoblastic leukaemia-initiating cells
Faiyaz Notta,Charles G. Mullighan,Jean C. Y. Wang,Armando Poeppl,Sergei Doulatov,Letha A. Phillips,Jing Ma,Mark D. Minden,James R. Downing & John E. Dick
Many tumours are composed of genetically diverse cells; however, little is known about how diversity evolves or the impact that diversity has on functional properties. Here, using xenografting and DNA copy number alteration (CNA) profiling of human BCR–ABL1 lymphoblastic leukaemia, we demonstrate that genetic diversity occurs in functionally defined leukaemia-initiating cells and that many diagnostic patient samples contain multiple genetically distinct leukaemia-initiating cell subclones. Reconstructing the subclonal genetic ancestry of several samples by CNA profiling demonstrated a branching multi-clonal evolution model of leukaemogenesis, rather than linear succession. For some patient samples, the predominant diagnostic clone repopulated xenografts, whereas in others it was outcompeted by minor subclones. Reconstitution with the predominant diagnosis clone was associated with more aggressive growth properties in xenografts, deletion of CDKN2A and CDKN2B, and a trend towards poorer patient outcome. Our findings link clonal diversity with leukaemia-initiating-cell function and underscore the importance of developing therapies that eradicate all intratumoral subclones.
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