2011年10月2日日曜日

疾患ガイドライン批判

他科疾患のスタンダード診断・標準治療方針を知るというのは、実はそう易しい話ではない。たとえば糖尿病。新しい薬があとから、あとから出てきているのがここ10年。現役最前線の先生にして、新しい薬の臨床感覚(使える薬なのか?副作用は製薬会社の言う通りか?)をつかむのに数年はかかるはずで、そう言う意味では非専門医が標準治療をコンテンポラリーに知るのはなかなか大変である。

関節リウマチも診断基準から最新治療方針まで、がらりと変化したことに気が付いていない他科診療者はまだまだ多いと思う。

昨日書いたB型肝炎の治療法の進展についても同様だ。私の意識の中では肝炎では(1)インターフェロン→PEGインターフェロンと進んでいること、(2)患者の遺伝子多型によりあるいは肝炎ウイルスサブタイプにより効果のほどが異なることが知識の最前線であった実は一昨日紹介転院してきたB型肝炎・肝硬変・肝癌の患者さんの持参薬を大幅に整理縮小しようとして「核酸アナログ製剤」にぶち当たったというのが小生にとってのバラクルードへの意識の芽生えであった。

【ホームページと疾患ガイドラインのこと】

このような日進月歩の変化のなかで、実は頼りにすべき情報はあまり多くないのである。ネット情報は玉石混交である。嘘だとは言わないが、実は古い情報が多すぎるのである。他科疾患に関してはこれが困る。

熱意を持ってHPを充実させた時期というのが各医療機関にはある。病院管理者がようやくネットの価値に気が付き中間管理職に魅力的なHPを作るように命じた時期。国や役所が積極的に指導した時期。病院機能評価がますます盛んになってきた時期いろいろあるが、多くは今から5年前くらいのHP(ホームページ)が出来がよい。実に立派な美しい熱のこもったページが多いのであるが、しかしながら作成以来更新されていないHPが実に多いのである。HPが作成時から変わらないのでは困るのである。2011年の現在、一昔前の情報をそれらしく掲載されても困るのである。ためしにリウマチ、白血病、肝炎でネット検索をやってみると良いが、各疾患の2011年における概説を知るのに頼りになるページを捜すのはなかなか困難である。

古い情報は積極的に消してしまうシステム・ルールを早急に作らないとだめだな。外部介入は最後の手段だ。だからもちろん各医療機関が自主的に行うべきで、これ早めに内部から改革しないと、そのうち医療事件の原因になることすら予感されるので喫緊の課題だ。


次にガイドラインである。これは多くは厚労省関連研究班か各種学会がサポートしている。これも玉石混交である。全てに目を通しているわけではないし、そんな立場でもないが、10近くに目を通した段階でこれは良くできていると思うガイドラインとこれはひどいと判断せざるを得ないガイドラインがあるので敢えて紹介したい。

ガイドラインとして極めて良質の出来だと思われるのは「抗 HIV 治療ガイドライン」である。

非専門家が読んでもわかる。論理的である。なによりガイドラインでありながら、生き生きと血が通っており熱意を感じる。最初に小生が読んだのは2009年版だったが、毎年最新版がでているのが素晴らしい。


一方これはいかがなものかと思われるのが、日本肝臓学会の編纂による「慢性肝炎の治療ガイド 2008」である。

非専門家にとってわかりにい。構成が非論理的である。熱意を感じない。1200円という価格で文光堂から発行されているにも関わらず、誤字もあれば校閲も行われていない。(p14表4の説明文、p45文頭の突然の文体変化等々)とにかく読みにくい。これではガイドラインにならないというのが、文責者の岡上武先生や林紀夫先生にはおわかりにならないのか?こんなものに文責者として名前を出されて恥ずかしくないのだろうか?肝臓学会の先生方は、早急に改訂版を用意されたほうが良いと思う。


ガイドラインというのはやっつけ仕事で出して欲しくない。病院機能評価とかいろいろな事情で全国的にガイドラインが必要になるご時世ではあるが、本質的には患者のため、それと実は非専門医のためにもガイドラインは必須なのである。非専門医の元に現れた患者殿を専門医に紹介しなくてはいけないからね、私らは。そんな非専門医にわかるガイドラインであって欲しい。これは実は極めて高いハードルなのである。非専門医といっても、他科の専門医であり、目は肥えている。論理が通らないものは許さない。

ガイドラインの指標には「抗 HIV 治療ガイドライン」を参考にしたら良い。HIVの患者には一回しか接したことのない外科の小生が、その患者をどうしたらよいかわからず参考にしたのがこのガイドラインである。それでも大変わかりやすかった。助かった。

(1)専門病院・センターのホームページを常に新しいものにリフレッシュすること及び、(2)疾患ガイドラインを責任もって最高のものにすること。この二つを全国の関係者に強くお願いしたい。

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