野島 博 の「分子生物学の軌跡」07年6月に化学同人 から出版された。昨日ジュンク堂で見つけたので読んでみた。なかなか優れた分子生物学の科学史本である。基本的にジャドソンの「分子生物学の夜明け」を踏襲しているが、たとえばベンザーやマクリントック、マリス等の事跡が付加されていることで、現代的な科学史を俯瞰することに成功している。しかしあくまでも俯瞰であり、科学者それぞれの伝記的読み物の深さには、どうしてもかなわないようである。たとえばコーンバーグだと「それは失敗からはじまった」あるいはベンザーの「時間・愛・記憶の遺伝子を求めて—生物学者シーモア・ベンザーの軌跡」セント・ジョルジ「朝からキャビアを—科学者セント・ジェルジの冒険」などは夜を徹する面白さであり、「分子生物学の軌跡」を読むことで、これらの科学者の伝記的読み物に向かうきっかけになれば素晴らしいと思う。ここに挙げられた科学者の多くは日本語版での伝記が存在する。多くは絶版であるが、インターネット古書として以前より遙かに容易に入手可能である。
とはいえ、例えばワトソン・クリックの本質的な凄さを短いページで紹介する作者の筆力は並大抵のものではないし、有名なPaJaMoの実験の背景がこれほど明確に説明される書物もないとは思う。この本自体も相当な優れものなのである。
追記:ちなみにJ・モノーの足跡はここのページにも詳しい。
追記2:シーモア・ベンザーが先日(07年11月30日)亡くなったとの報を聞いた。なんと・・合掌・・。
追記3:アーサー・コーンバーグ(こちらは英語版Wiki)も最近亡くなっていたのだ(07年10月26日)。知りませんでした。昨年息子のRoger Kornbergがノーベル賞を取りましたが、間に合ってよかったなと思います。親子二代でノーベル賞ですからね、偉いものだ。
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