多数をターゲットにゲノム解析を行おうという試みはこれまでも見られた。
- 医学の進歩に大いに貢献したものとしては、フランスのCEPHが挙げられよう。 The Centre d'Etude du Polymorphisme Humain (CEPH) は 1984にJean Dausset によって創設された。当初は61の大家系の遺伝子DNAバンクとしてスタートし、ヒトの遺伝的地図と物理的地図の統合に大きな貢献をするとともに、多くの遺伝病責任遺伝子の発見につながった。1991に CEPH は AFM (the French muscular distrophy association) と統合しGénéthonとなった。その後CEPH と Généthonは再び分離し、1993年にはFondation Jean Dausset - CEPHとなる。この当時はYACレベルでの物理的地図の構築であった。
- ゲノムプロジェクトが終了し大規模シークエンス技術が大きな進歩を見せる中、HAPマッププロジェクトが進み、ヒトの遺伝的多様性はますます詳細に調べられるようになった。これらの研究の中からは(1)個人間の遺伝子コピー数の違いが明らかになり:CNV(copy number variant)、また(2) miRNA、piRNAを初めとする蛋白を作らない(non-coding RNA) small RNAが明らかとなり、ゲノムのいわゆるjunk領域の豊穣さが知られるようになってきた訳である。
- 以上の研究からの当然の帰結として全ゲノムシークエンスを多数のヒトを対象として行いたくなるではないか!癌ではVogelsteinたちが乳癌12例と大腸癌12例における18000遺伝子の全ゲノムシークエンスを昨年行った。またVenterやWatosonの個人ゲノムシークセンスは既に解読されている。余談であるがVenterはアルツハイマー病になる可能性が高いことがわかり、個人的に予防策に余念がないとのことである。
- このような中、NIHとSangerと北京ゲノムセンターが共同で推進するのが3年を目処に1000人に全ゲノムシークエンスを行うという壮大なプロジェクトである。最初の一年で次の3つのパイロットスタディが行われる
- 始めに2組の親子(計6人)のシークエンスがパイロットスタディされる(20パス)
- 180人が(2パス)でラフにシークエンス
- 1000人について1000遺伝子のエクソンがシークエンス
- 次いで本研究に進む
- 1000人のSNPsとゲノム構造変異(まあCNVを含めた大規模変異ということでしょう。micorodeletionやamplificationが精神遅滞や自閉症に関連することが最近次々に明らかになってきたことを踏まえている)
- 従来の試算では9000億円くらいの試算であるが、これを500〜900億円で済ませることが可能であろうといっている。それにしても巨額である。