2018年7月4日水曜日

『羊と鋼の森』を見ました:「クープランの墓」トッカータに悶絶

『羊と鋼の森』が映画化されたので本日見に行った。原作は本屋大賞を2016年にとったそうだ。数週間前の朝日新聞の映画評に紹介されていたのが気に止まった。見るヒトがみれば『羊と鋼』という言葉は直ちにピアノを連想させるのだという。それ以外はありえないのだとか。羊はハンマーのフェルトであり鋼は弦なのである。そんなものか。

調律師の物語であり映画そのものは佳作といってよいだろう。作りはきれいだしい映像も丁寧で美しい。

しかし人に勧めたくなる要素はない。主人公たちは調律師でありマニアック。恋愛ものとしては未成熟であるし、ビルデゥングドラマとしてもやや物足りない。

ただし音楽映画としては小生の琴線に触れた。異常に触れた。ちょっと凄かった。びっくりした。原作を読まないで良かった。ネットで調べなくてよかった。

この映画には6〜7曲のピアノ曲が登場する。主人公とピアノ姉妹が出会う場面での最初の曲はラヴェルの「水の戯れ」であった。流れる水のイメージ画像つきである。ラヴェル好きの小生としては「おぉ!」である。ついでショパンが数曲流れたあと、気障なジャズ・ピアニストが披露した曲がラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」であるが、これが実にジャズアレンジなのであるがなかなかイカしていた。「これがあのパヴァーヌですか?」と主人公の山崎賢人に言わせるのである。

そうなのだ。この日本映画には通常ありえない選曲でラヴェルが登場するのである。

極めつけはピアノ姉妹の妹が挑戦的に弾きたたく「クープランの墓」のトッカータである。びっくりした。日本の映画の劇中ピアノ曲にトッカータが登場して妹が弾いている!
映画の流れと関係なく「同音連打」を写しなさいと言いたくなった。

ありえない。「クープランの墓」もありえないが更に「トッカータ」はもっともありえない選曲だ。だって高校生あがりくらいの年齢で弾きこなせる曲ではないもの。

この曲等速144が指定された16分音符の同音連打が最初から最後までまとわりつく難曲であり大抵のピアニストは指がツルか指がもつれるか指が空回りする。サンソン・フランソワあたりの指がもつれても一向に気にならない技巧派がようやく聴くに耐える演奏を残している。

映画では誰が弾いていたんだろう。他の多くの曲は辻井伸行が弾いたと推測されるが(映画のサウンドトラックが販売されているし、監督が劇中曲を選ぶのに辻井伸行のラヴェルを参考にしたとの記録がある)不思議なことに映画には登場するこの「クープランの墓」のトッカータであるがサウンドトラックでは採択されていない。地味に無視されているのが小生には辛い。実に残念である。

ラヴェル3曲だけでも小生は幸せであった。「クープランの墓」なら任せといてください。なんせ30セット以上持っている。トッカータも30セットあるということだ。


この他姉妹が実に楽しそうに連弾する「きらきら星変奏曲」がなかなか良い。なんでも編曲は世武裕子さんという方らしいが僕は好きだこの編曲。ここのHPを丹念に探すと一部聴くことが可能だ

というわけで小生にとっては素晴らしい音楽映画だった。わくわくしました。

2018年6月22日金曜日

レーザーポインターによる眼損傷:NEJMのイメージ

IMAGES IN CLINICAL MEDICINE 

Macular Hole from a Laser Pointer 

Sofia Androudi, M.D., Ph.D., and Eleni Papageorgiou, M.D., Ph.D.

June 21, 2018
N Engl J Med 2018; 378:2420













左目に緑色のレーザーポインターを受けて視力が18ヶ月改善しないギリシャの9歳男児である。

A 9-year-old boy was brought by his parents to our ophthalmology clinic for evaluation of decreased vision in his left eye. Visual acuity in the left eye was 20/100, as compared with 20/20 in the right eye. Funduscopic examination of the left eye revealed a large macular hole with a hypopigmented atrophic area inferiorly (Panel A). Optical coherence tomography confirmed the full-thickness macular hole. Fundus autofluorescence imaging highlighted two spots inferior to the macular hole that corresponded to additional areas of injury (Panel B). The child reported playing with a green laser pointer and repeatedly gazing into the laser beam. Although many national health agencies have warned about the potential eye hazards associated with handheld laser pointers, and the sale of devices with greater than 1 mW of power is restricted in many areas, more powerful laser devices remain accessible, especially through the Internet. Because of the large diameter of the macular hole and the accompanying atrophy in this patient, we favored conservative management rather than surgery. The patient’s vision has remained unchanged during 18 months of follow-up.

出力1 mW以上のものには規制がかかっているのにネット上では無制限に購入可能なのだとか。確かに米国 で頂いた緑色レーザーポインターは強烈な発光力だった。

Sofia Androudi, M.D., Ph.D.
University of Thessaly, Larissa, Greece 
Eleni Papageorgiou, M.D., Ph.D.
University Hospital of Larissa, Larissa, Greece

2018年6月9日土曜日

「青蜂の新種」発見と「国宝曜変天目茶碗」と「九州大学農学部」:デジャブ・デジャブ・・



目がくらくらするとはこのことだ。今朝「新種の蜂」が発見されたという記事を読んだ。発見したのは九州大学の三田敏治助教である。

この青蜂の写真を見た瞬間小生は頭がグラグラしたのだ。美しい・・・・

さらにあまりにあの茶碗に似ているではないか!

そうなのだ、国宝の「曜変天目茶碗」のことだ。

国宝は3点あるがそのうち藤田美術館所蔵)のものか(静嘉堂所蔵)のものに似ている。

まさに自然の妙技であるとわたしなど思うな。






 

 

 

2013年4月13日土曜日


「曜変天目」国宝3点と卯花墻(うのはながき)など・・





今回採集された青蜂は、国立科学博物館で開催される特別展「昆虫」(7月13日 金~10月8日 月・祝)で初公開される。(これめちゃくちゃ楽しそうである。香川照之も頑張っているし、行こうかな

  • 新種は本来、論文の発表者が名前を付けるのだが、この青蜂は展覧会の来場者の中から、応募で選ばれた当選者の名前をつける企画を実施するという。当選者が自分の大切な人の名前をつけてプレゼントすることもできる。
  • そして、その名前を入れた論文の発表を経て、発見された青蜂は正式に新種として認定される。


ちなみに日本の昆虫学というのは九州大学に源流があるらしい。 

    紹介されている河合塾のHPは面白い(鉄人ってなに?)
  1. 戦前の豊穣なその歴史についてはこの文章が香り豊かに伝える

  2. 九州大学の昆虫学者のお一人として小生は子供の頃から蝶の博士で有名な白水 隆博士の尊名を聞かされていた。というのも白水先生は小生の祖父と同じ集合住宅に住んでいらっしゃっりしょっちゅう交流があっていたからだ。白水教授アジアの蝶30000種の素晴らしいコレクションを作られ、それは今も九州大学のどこかに展示閲覧できるようになっているはずだ。
  3.  最近では↓の新書で注目を集めている丸山宗利さんも有名だ。 


















というわけでデジャブはデジャブを呼ぶというお話でした。いや〜実に面白い。

2018年6月8日金曜日

冠動脈瘤:NEJMのイメージ

45歳男性の心筋梗塞とその後の冠動脈造影

IMAGES IN CLINICAL MEDICINE

June 7, 2018
N Engl J Med 2018; 378:

 Left Main Coronary Artery Aneurysm













冠動脈瘤なんて外科医は見たことがないです。せいぜい「川崎病」の早期合併症として知っているくらい。 この写真では「瘤」は69 by 53 mmだという。7cmです。これはこわい。

造影室は騒然となったことだろう。 直ちに手術が行われたというが、翌日不幸な転帰をたどったそうだ。

Luis Arboine, M.D.
Juan M. Palacios, M.D.
Hospital de Enfermedades Cardiovasculares y del Torax, Monterrey, Mexico 

2018年5月30日水曜日

癌の各国別5生率

癌の各国別5生率というものがランセットに発表されていた。3月のことのようだ。毎日新聞の記事を引用させていただく。

毎日新聞2018年3月5日 東京朝刊より引用
















各国のこの差はいかなる理由によって生まれるのか・・・これを臨床腫瘍学認定医(そんなものがあるのかどうか知らないが?)試験の筆記問題にすると面白いと思う。

人種差・・・・・・・・新聞レベルならまずこれだろう。
サブタイプの違い・・・胃がんはそうであろう。
医療水準の差・・・・・これは微妙ではないか?

なおここでは発見される腫瘍の臨床病期が違う、臨床病期の割合が違う・・・という「いつものあの議論」はしない。

結腸と乳房の5生率が6カ国でほぼ同じであることに注目したいということにとどめたい。

これはこの6カ国の医療水準がほぼ同等であることを意味するのか?
あるいは医療水準に関わりなく(発見が早かろうが遅かろうが、手術が精緻であろうが精緻でなかろうが、術後補助療法をやろうが、やるまいが)こんなものなのか考えてみたい。疫学の妙味である。

20年前は「日本人の乳がんは性質が良い」と言われていた。同じ臨床病期であっても他国に比べ予後が良いと喧伝されていた。2018年現在では「日本人の乳がんは性質が良い」とは全く言えなくなった(だって上記6カ国の生存率は90%で事実上等しい)

これが何を意味するか?他国の臨床水準が上がった?日本の乳がんの性質が変化した?他国の乳がんと日本の乳がんが生物学的に似てきた?

20年前の他国の乳がん5生率を調べてみたいと思う。この20年間で日本の乳がん5生率はどれくらい変化したのだろう?

乳がんは2018年には年間8万人みつかることになるという。あっというまに3倍以上に増えているはずだ。その殆どは「早期乳がん」であるが、5年生存率は上がらない。韓国の「甲状腺がん」のようにならないようにしてもらいたい。(韓国は国を挙げて甲状腺がん早期発見プロジェクトを行ったが、予後の向上につながらないため2013年にプロジェクトを中止した)

結腸がんはどうであろう?
各国ほとんど横一線65%前後というのが興味深い。これって何を意味するのであろう?人種差があるのだろうと思っていたよワタシ。左側と右側の違い。修復遺伝子異常の違い。言われるほどはないんだろうな。

胃の違いはこれはピロリ感染胃がんの違いであろう。日本韓国は胃がん絶対数が多い。早期胃癌で発見治療される割合が高いのでその部分が5生率を上げている。他国は胃がんが少ないことがこの歴然とした差の原因だ。

食道がんは医療進歩の総合的成果が現れているはずだ。手術手技の向上、麻酔の向上、手術器具、胸腔鏡・腹腔鏡、栄養、術後化学放射線療法。しかし最も貢献しているのはおそらく他国にはみられない日本における上部内視鏡試行数の多さであろう。早期食道癌の発見と内視鏡的治療。36%という日本の数字(これは驚異的進歩である)の一定の部分は内視鏡によるものだろうと思う。

肺がんの違いはなんだろう?これはよく言う、アジア、女性、遺伝子異常・・・人種差なのか?ここまで効いてくるのであろうか?

さて小生がもっとも気になったのが白血病である。この日本人の成績の悪さは何なのだ?他のがんとの比較というコンテクストで誰か納得のいく説明をしてくれないものか?日本がここまで悪いとは思わなかった。

2018年5月27日日曜日

nadege 20年ぶりに新譜

ぼくが90年代から世紀をまたいだ頃一番良く聞いたのが「nadege」でした。おフランスの女性ユニット。ここに載せられている11枚のdiscographyのうち9枚持っている。


そのナデージュがほぼ20年ぶりに新譜を出すというニュースが届きました。正直過去の人なのでどうでも良いのですが、というか、実はあまり聴きたくない。ナデージュ20年前を上回っているとはとても思えないし、売り方があざとい。2800円もするのに新曲2曲+旧譜2曲であり限定300枚だという。2018年初夏に発売ですって。

http://nadege-music.net 



これは「冗談」としか思えない。日本全国に小生のような変人(2018年にナデージュ新譜のニュースを受け取る変人、興奮する変人)が最大で300人はいるのではないかという見積もりです。よく企画が通ったもんだ。

ナデージュは謎のフレンチ・ユニットであり、写真の一枚も動画の一本も出回っていない。ですから、ぼくはこんなに好きだったのに顔を一回も見たことがないのです。その存在自体極めて怪しいユニットであり、当時も今も正体が全く不明であり、フランス人ユニットというのはfakeで実は「日本人説」も出回っていた。ネット上で全く盛り上がらないユニットだったので情報がほとんどなく(今も)、そういう意味で20年ぶりに新譜といわれても、だれも知らないよ(おそらく)。

といっても当時でも地方のCD屋さんであっても、いつも複数のCDが売られていた(上手に探せば・・・だけどね)。そんなユニットです。


系列でいうと「house」というジャンルのようですが、たまたま紛れ込んだ小生は「house」のその他を知らないので、よくわからないというのが本音です。

小生フランス女性ものはとにかく好きでフランソワ・アルディや、もちろんエディット・ピアフジュリエット・グレコなんぞも好きであり、更にバルバラは大好きでした。バルバラに至っては亡くしたレコード盤を今も時々ネットで探すが見つからないくらい。

90年初期は初代クレモンティーヌにハマり(今のクレモンティーヌは別の人だと思っています(笑))、その次にハマったのがnadegeでした。

聴きたくないといったものの、買うんだろうな。ああ。

以下好きな人達

フランソワ・アルディの「さよならを教えて」


グレコの「パリの空の下」


バルバラ

クレモンティーヌの「Afternoon in Paris」


そしてナデージュの「黒いオルフェ」




2018年5月14日月曜日

NEJMのイメージから:手掌線状黄色腫

手掌線状黄色腫

コレステロールが高いといろいろなところに沈着する。

私の知っている限りでは アキレス腱、眼瞼、消化管では胃カメラでよく黄色腫を見ます。 

今回ドイツから報告のこの手掌はちょっと特徴的である。この方痛みで栓が開けられなかったり大変だ。 原因は少し特殊な病態のようで治療はフェレーシスなのだとか。

 今回初診から10年目の報告であり、いまでも隔週のフェレーシスをやっているらしい。 手掌の黄色腫は消失し症状も軽快しているとのこと。














IMAGES IN CLINICAL MEDICINE

  • Viktoria F. Koehler, M.D., 
  • and Klaus G. Parhofer, M.D.
  • A 49-year-old man was referred to the metabolic clinic for evaluation of severe hypercholesterolemia and xanthomas, which were particularly prominent on the hands. The lesions were painful and affected the patient’s everyday life, making it difficult for him to open bottles or shake hands. He had a 2-year history of biliary cirrhosis due to ischemic cholangiopathy. Laboratory evaluations showed a total cholesterol level of 970 mg per deciliter (25.1 mmol per liter); a triglyceride level of 158 mg per deciliter (1.8 mmol per liter); a low-density lipoprotein (LDL) cholesterol level of 875 mg per deciliter (22.6 mmol per liter), with presence of lipoprotein-X; and a high-density lipoprotein cholesterol level of 64 mg per deciliter (1.7 mmol per liter). Treatment with LDL apheresis was started. Palmar xanthomas can also be seen in patients with type III hyperlipoproteinemia (familial dysbetalipoproteinemia). Xanthomas are rarely so severe that they interfere with activities of daily life. Within 3 months after the initiation of weekly LDL apheresis, the lesions had almost disappeared and the patient reported substantial relief from pain and improvement in function. At follow-up 10 years after presentation, the patient was in stable condition and was undergoing LDL apheresis every other week. Since the initiation of LDL apheresis, his LDL cholesterol level had decreased to 110 mg per deciliter (2.8 mmol per liter).

    Viktoria F. Koehler, M.D.
    Klaus G. Parhofer, M.D.
    Klinikum der Universität München, Munich, Germany