- 昨日外来で初診の32歳の男性、左手の第二指の爪が荒れている。爪が浮いていて、その爪の裏側が白濁化しているのだ。これはもう「爪白癬」に間違いないと自信たっぷりの私。すぐにKOHと行きたかったけど、ぐっと我慢して近くの「○●皮膚科」へご高診をお願いした。早速返事がきたら、聴いたこともない「爪甲剥離症 」だと・・・・
- 治療にはステロイド外用薬を用いるらしい。カンジダいないといいけどねーー。
- ひとつ勉強になった。しかし皮膚科は難しい。
爪甲剥離症 −甲状腺異常などが原因−
麻野皮膚科 院長 麻野誠一郎(名西郡石井町石井)
爪甲剥離症という診断がついているようですので、既にどこかで受診されているのでしょう。お役に立てるかどうか分かりませんが、爪甲剥離症の一般的なことについて述べさせていただきます。
つめは本来、先端部以外はつめの下の皮膚とよく付着しているものです。ところが時として、つめが下の皮膚から遊離することがあります。この状態を爪甲剥離症といって、つめの先端部から起こり始めます。
爪甲剥離症の原因は、非常に多彩です。大きく分けると、1)甲状腺(せん)機能異常や貧血などの全身性疾患に伴うもの 2)強皮(きょうひ〕症、乾癬(かんせん)、掌蹠(しょうせき)多汗症などの皮膚疾患の部分症状としてみられるもの 3)マニキュアや洗剤、機械的刺激などの局所的因子によるもの 4)カンジダなどの感染症によるもの 5)薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うもの 6)以上のいずれにも属さず、原因のはっきりしない特発性のもの −に分類されます。
私の経験は乏しいものしかありませんので、文献から得た知識を交えて説明したいと思います。
第1の全身性疾患のうち、爪甲剥離症と最も関係の深いものは、甲状腺機能亢進(こうしん)症です。この場合、つめは平らになることが多く、時に反り返ったようになることもあります。最初1本の指から始まり、次第に他の指にも進行していきます。甲状腺機能亢進症の治療をすればよくなります。
甲状腺以外の病気でも、貧血や指先の血行障害の時に、つめの中央部がへこんだ状態になることがあります。これをスプーンネールといいますが、このときにも爪甲剥離症を生じることがあります。
第2に皮膚疾患の部分症状として、爪甲剥離症がみられることがあります。しかし、この場合は他の皮膚症状から診断のつくことが多く、その皮膚疾患の治療に準じればよいかと思います。
第3は、局所的因子による爪甲剥離症です。極めて軽い湿疹(しっしん)やかぶれが起こった場合、手の皮膚ではわずかに皮がむけるだけで治っていきますので、気づかずにすむことが多いのですが、つめの下ではほんのわずかに皮がむけた状態でも、つめははがれて浮いた状態となります。
こういう状態の時、つめの下をつまようじなどで掃除する人がいますが、良くありません。皮膚を痛めてますます悪化することになります。
第4の感染によるものの中では、カンジダ症が最も多いでしょう。この場合は、つめの下の皮膚がガサガサした感じになります。病変部にカンジダが証明できれば、診断は難しくありません。
第5の光線による爪甲剥離症は、多くは日光によるものですから、夏悪化し、冬軽快するのが特徴です。つめ以外にも光線過敏性皮膚炎を伴うことが多いのですが、つめの症状のみの例も報告されています。
最後に特発性のものがあります。実は、このグループに属するものが最も多いのです。つめの形に異常を認めません。厳密に言えば、つめと皮膚の接合部に何らかの異常があるはずなのですが、その程度があまりに軽徴で、とらえられないのです。患者さんに対する説明もあいまいなものになります。ただ、特発性の場合、あまり進行するということはありません。
かかっている医師とよく相談をし、詳しく調べた方がよいときは、大学病院などを紹介してもらうのも一つの方法と考えます。
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