2014年5月31日土曜日

ウロセプシスのこと

 「ウロゼプでしょうな」といわれて何じゃそれと思った昨日のショック患者であった。

単なる右尿管結石で一昨日入院してもらった67歳女性の容態が変わったのは深夜12時であった。「先生気分が悪いというので血圧測ったら50/~しかありません、どうしましょ。脈は104・・・」

だいたい尿路結石は週に一例くらいは診ている感覚だが、それだけで入院させたのはほとんど初めてに近い。脳出血後遺症で麻痺がつよい方ではあったので本人・家族の強いご希望で入院させたわけだが。入院後は晩御飯はしっかり食べて症状も安定していただけに、ショックになるとは思いませんでしたな。嵌頓した石は結構大きいので点滴すると痛いだろうし水腎も悪化しそうだから、ルートだけはとっておいて点滴はわずかにキープだけしていたのだが、さすがにショックだから急速点滴を始めた。案の定、結石疝痛が再燃する。座薬を入れると血圧下がるし、ドーパミンでなんとか夜中は持たせたが、翌朝一番の採血で WBC 18000、CRP >7であり検尿で細菌(+++)。不穏感が出てきた。悪寒戦慄が出てきた。一挙に39度の発熱である。ここまでくると単なる「尿路結石」ではなくなる。一刻も早く閉塞尿路を解放してあげないといかん。というわけで泌尿器科専門病院に転院依頼のお電話を掛けたときに帰ってきたお返事が 「ウロゼプでしょうな」

そりゃウロゼプシスあるいは ウロセプシスの略号であることくらいは、1.5秒くらいたてば解るが、でも初めて「ウロゼプ」なるジャーゴンを聞いてなんか笑ってしまうね。もっとも小生ウロゼプシスあるいは ウロセプシスという言葉が独立して使われていたということすら知らなかった。それくらい多いのかな、ウロの世界ではセプシス。ウロだけかな。「ギネセプシス」「キントセプシス」「オルトセプシス」なんて、ないだろうな〜。キントやオルトなんて今頃流行らないし。だいたいセプシスなんていうのも気にくわない。わたしらにはゼプシスと濁らないと重症感が伴わないな、勝手な言い分だが。

ところで最近では敗血症というより 「SIRSの診断基準」が大事だ。そこで「SIRSの診断基準」だが・・

SIRSの診断基準 (米国胸部疾患学会 Critical Care Medicine学会 1992) 4項目中2項目陽性=SIRS
  1. 体温 < 36℃ or >38℃ 
  2. 脈拍 > 90/min 
  3. 呼吸数 > 20/min (or PaCO2 < 32 )
  4. WBC >12000/mm³ or <  4000 /mm³ (or 10%以上の幼若球出現)
どれくらいの頻度で専門病院はウロゼプを診るのだろう?

2000年~2007年の8年間に神奈川県立汐見台病院(慈恵大)ではSIRS診断基準を満たし尿と血液から同一菌種が検出された症例をurosepsisと定義し,本定義に合致した45例を診ている。 
  • 慈恵医大誌2010;125121-27. Urosepsis症例の臨床的特徴と治療成績 一市中感染例と病院感染例の比較一 画面晃司、岡田秀雄、長谷川俊男、櫻井磐、川口良人、小野寺昭一 東京慈恵会医科大学感染制御部 神奈川県立汐見台病院内科
あるいは

PMX-DHP療法を行ったUrosepsis 15症例の検討 

藤田  亮、甘利 香織、松本 康、小山 敬、藤田 尚宏、徳田 倫章 
 佐賀県立病院好生館救急部、佐賀県立病院好生館泌尿器科 

重症敗血症や敗血症性ショック症例に対するEarly goal-directed therapyの報告が行われinitial resuscitationの目標値が設定され、これらの目標値に到達するような治療が推奨されている。
PMX-DHPはエンドトキシンを吸着することよりグラム陰性桿菌によるseptic shockに有効であり、また内因性大麻であるanandarnide(ANA)を吸着することでMRSAなどのグラム陽性球菌によるseptic shock症例などに対しても有効であると考えられている。今回我々は2007年1月から2011年12月までに、当院救命救急センターにてPMX-DHP療法を施行した尿路感染症によるseptic shock症例15例(平均年齢:72.6歳  男:5例, 女:10例)について検討を行った。エンドトキシンの平均値は40.7pg/ml,尿路感染症の内訳は、単純性腎孟腎炎5例(33.3%).複雑性腎孟腎炎10例(66.7%)であった。 その他呼吸器使用率、培養結果、APACHEスコア、 SOFAスコアについて若干の考察を加え、報告する。 

なおPMXとは昔懐かしい抗生剤ポリミキシンBのことである。

 この写真の引用は丹後中央病院HPからです。ありがとう!

 このHPにはいろんな体外循環機器が載っていて楽しい。

エンドトキシンとポリミキシンBが結合することによる吸着除去カラムは昔からよく知られている。透析や献血や免疫治療などを行う施設、コンパクトな体外循環ポンプを持っている施設ならこのカラムは直ぐに使えるはずだ。このカラムは東レメディカルから「トレミキシン」という名前で出ており、1994年に保険収載されている。なんでも一本34万円くらいである。

それにしてもあなおそろしや「ウロゼプ」

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