破裂リスクと治療リスクの両天秤である。これほど他領域医師が悩まされるテーマはないだろう。脳外科の意見、脳血管内科の意見、一般内科の意見幅広く聞いてみたい。
まずは日本脳ドック学会が出している2014年のガイドラインを抜粋してみる。
・・・・米の61施設で行われた国際未破裂脳動脈瘤研究(ISUIA)では2003年に前向き(prospective)データの報告がなされている34).破裂率に関して前向き経過観察(1,692症例,2,686瘤・平均4.1年,6,544人・年)では,くも膜下出血の既往のない7 mm以下の未破裂脳動脈瘤のうち,内頚動脈―後交通動脈瘤を除くWillis輪前方の動脈瘤はほとんど破裂しないことが示された.後方の動脈瘤では年間0.5%であった.サイズがより大きな脳動脈瘤では7ー12 mmでは前方の動脈瘤は年間0.5%,後方は年間2.9%,13-24 mmでは前方年間2.9%,後方は年間3.7%,25 mm以上では前方年間8%,後方年間10%であった.5年間死亡率は12.7%で破裂を認めた51例中33例(65%)が死亡した.・・
- 前方循環系
内頚動脈(中枢側から海綿状脈動部、眼動脈分岐部、床上部、後交通動脈分岐部、前脈絡叢動脈分岐部、先端部)
前大脳動脈(前交通動脈近傍、末梢部)
中大脳動脈(分岐部、末梢部) - 後方循環系
椎骨動脈(後下小脳動脈分岐部など)
脳底動脈(本幹、上小脳動脈分岐部、先端部、前下小脳動脈)
脳神経外科がまとめた報告も詳細だ。
5,720例6,697個の瘤の11,660動脈瘤・年の観察経過をまとめた.瘤毎に破裂危険因子の解析を行っている.破裂は111個に発生し,年間破裂率は0.95%であった.破裂関与する因子は大きさ[5 mm未満に対しての多変量ハザード比(HR)5-6 mm: 1.13,7-9 mm: 3.35, 10-24 mm: 9.09, 25 mm~:76.26]
よく言われる「非破裂脳動脈瘤の破裂頻度1%」というのはこのデータが裏付ける。
さて治療介入をどうするかは悩ましい。あまり積極的には勧められないというのが従来の小生の考えであったがどうするか。今回ガイドラインを調べてみて、積極的な治療に考えを変えたいとは、まだ思わないな。