2020年7月2日木曜日

C型肝炎にはなぜワクチンがないのか?

C型肝炎にはなぜワクチンがないのか?

久しぶりに看護学校で講義をしてきた。これまでは流行りの遠隔授業だった。対面授業を最近再開したとのことで、7月になり初めて今年の学生と対面した。今日は「肝臓」がテーマであったが、そのなかでワクチンが話題になった。なぜC型肝炎にはワクチンがないのか?

C型肝炎ウイルスはコロナと同じRNAウイルスなのだが・・・

例えば「国立感染症研究所」のホームページによると

予防法として最も有効と思われるC型肝炎ワクチンは、依然として実用化されていない。C型慢性肝炎患者の血液中には、HCV蛋白に対する様々な特異的抗体が産生されるものの、ゲノムの多様性やエンベロープ蛋白にアミノ酸が変異しやすい領域が存在することなどから、中和抗体は産生されにくい。また、感染に伴ってT細胞応答も惹起されるが、例えばB型肝炎などの場合と比べてウイルス特異的な細胞性免疫は誘導されにくいと考えられる。このようなことが要因となって、HCVは宿主の免疫監視機構から逃れ、高率に持続感染が成立するものと考えられている。



例えばAMEDのホームページによると


HCVワクチンの開発は、これまで世界中の研究グループ試みてきましたが実用化されていません。HCVのエンベロープタンパク質を抗原として用いたワクチンは、マウス、モルモット、チンパンジー等のモデルにおいて中和抗体を誘導できることが報告されており、既に第一相臨床試験が行われています。またHCV抗原を発現させるウイルスベクターを用いたワクチンでは、細胞性免疫の誘導も報告されています。しかし感染・発症予防に必要とされている、中和抗体および細胞性免疫の両方を同時に誘導できるワクチンは開発されていません。


例えば「ウイルス肝炎研究財団」によると

C型肝炎ウイルス(HCV)感染予防のためのワクチンや免疫グロブリンは、現在のところ開発されていません。

これは、HCV粒子の外殻(エンベロープ)タンパクを作る遺伝子(E2/NS-1領域)が変異を起こし易いため、HCVに感染した個体がエンベロープに対する抗体(E2/NS-1抗体)を作った時には、既にその構造が変わってしまっていることから、一般的な意味での感染防御抗体としての働きを期待することができないということによります。このため、HCVのワクチンを開発することも難しいとされています。一方、HCVエンベロープタンパクに対する抗体陽性の大人数の血漿を集めて、ガンマグロブリンを作れば、感染予防に役立つ免疫グロブリンを作ることができるのではないかとの考え方も成り立たないわけではありません。現在も、様々な観点から研究が進められています。



学生の素朴な疑問はこうだ。

何十年かかってもワクチンを作ることができないウイルス感染症がこれまでもあるのに、新型コロナウイルスに対するワクチンがそうそう簡単にできるのでしょうか?

私は返す言葉がなかった。

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