2022年7月3日日曜日

免疫チェックポイント阻害薬による直腸癌の完全奏功

免疫チェックポイント阻害薬による直腸癌の完全奏功なんて表題を付けてよいものか?













ちょっと驚きの報告がスローンケタリングから出た。免疫チェックポイント阻害薬は現在8種類が上梓されている(下記リスト)。日本では6種類。抗CTLAが一つ、抗PD−1が4種類、抗PD-L1が3種類である。下記リストで最後の8番目の抗体が、今回の主役ドスタルリマブ(ジェメリル)である。読み方はWikipediaを参考にしました。まだ日本では承認されていないが、非常に興味深い抗体である。使いたい患者どのが二人いるのだ、外来に。

もともと免疫原性の強い癌として昔から悪性黒色腫や腎癌が知られており、古典的な免疫治療ではこれらの癌には比較的新規治療が効くために、しばしば標的臓器とされてきたが、この10年の免疫チェックポイントの時代になっても、最初のターゲット臓器は変わらず悪性黒色腫や腎癌である。下記のリストでもご多分にもれずである。





ミスマッチ修復遺伝子異常はもともと大腸菌による古典的で重厚なDNA合成修復酵素生化学の歴史と、分子遺伝学的癌研究が交差して生まれた概念である。ヒト癌研究では初めの頃は癌遺伝子ハンティングのマーカーとしての(CA)リピート多形研究や神経難病であるハンチントン舞踏病の研究途上で明らかになったトリプレット反復異常症の研究から派生して発見されたMLH1,MSH1,MSH5 PMS2といった修復遺伝子の異常が、次第に独特の発がんグループを形成することが知られるようになり、やがてひとつの独立したentityを形成するようになった。大腸がんではLynch症候群に類する疾患群である。大腸癌の10〜15%は修復遺伝子異常が原因であるミスマッチ修復遺伝子異常を伴うがゆえに、遺伝子変異を高頻度に起こす。おそらく免疫ターゲットになるネオアンチゲンが多数創出されることで、通常の大腸がんよりも免疫治療のターゲットになりやすいとされる。

で、今回のNEJMである。この遺伝子サブタイプの直腸癌12名に9回のドスタルリマブ(ジェメリル)単独治療(6ヶ月)を行ったところ、それだけで腫瘍の臨床的完全奏功をきたしたという報告である。追加の化学療法や手術切除療法も不要であるとの判断である。

これが本当なら素晴らしい治療効果である。ちょっと信じがたいが、NEJMでありスローンからの報告である。100%なんだよ!






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