2014年10月26日日曜日

Whitlowとは何物ぞや?:NEJMのimage

久しぶりのNEJMイメージである。医学単語がやっかいだ。whitlowという言葉を小生は知らなかった。

Wikipediaによると・・・

A whitlow or felon is an infection of the tip of the finger.[1][2][a] Herpetic whitlow and melanotic whitlow are subtypes that are not synonymous with the term felon. A felon is an "extremely painful abscess on the palmar aspect of the fingertip".[6] Whitlow usually refers to herpetic whitlow, though it can also refer to melanotic whitlow,[7] which somewhat resembles acral lentiginous melanoma. The terms whitlow and felon are also sometimes misapplied to paronychia, which is an infection of the tissue at the side or base of the nail.

felonは瘭疽であり、これはよく見る病態である。小生のイメージでは指の先端で爪周囲炎の悪化・・>蜂窩織炎・・>膿瘍がfelon(瘭疽)なので、今回の症例のような爪と離れた場所をfelonというのには疑問がある。

whitlowに適切な日本語訳はあるのであろうか??






















Images in Clinical Medicine

Herpetic Whitlow

Sara Izzo, and Muneer Ahmed, M.R.C.S.
N Engl J Med 2014; 371:e25October 23, 2014


左の3指掌側の炎症である。これヘルペスによるものなんだ。アシクロビル服薬が必要だったとのこと。更に再燃を繰り返しているとのことである。

2014年10月18日土曜日

エボラ出血熱が疑わしい患者が出た場合はどうするか?

エボラ出血熱が疑わしい患者が出た場合はどうするか?

皆さんの病院では教育が行われているであろうか?

覚えておく基本は以下の三点であろうか・・・
  1. 保健所に連絡のうえ主導してもらうこと
  2.  今の日本で血清学的(あるいは遺伝子)診断が可能なのは国立感染症研究所だけである。 
  3. 地域で患者を取り扱う病院は既に指定がされており、それは特定・第1種感染症指定医療機関である

疑わしい患者が出たら
  1. まず地域保健所に連絡
  2. 検体を取ることになったら検体移送は保健所に頼むことになる
  3. 患者は特定・第1種感染症指定医療機関へ移送することになる

厚生労働省の通達「エボラ出血熱に関する対応について」(平成26年10月7日付け)によると

一般的な風邪症状を呈する患者の中に・・・
  1. 渡航歴・接触歴
  2. 発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、胸痛、腹痛、嘔吐、下痢、食思不振、脱力、原因不明の出血などの症状や所見 
が見出されたら

  1. まず最寄りの「保健所」に連絡(届出より緩い「連絡」である)
  2. 保健所と相談のうえ、検体検査をすることになれば採取する
  3. 検体は保健所(あるいは都道府県)が受け取る(国立感染症研究所への送付は行政がしてくれる)
  4.  患者の同意を得た上で、特定・第1種感染症指定医療機関へ患者移送することを検討
  • 特定医療機関は3病院しかない(千葉、東京、大坂)
  • それ以外の都道府県では第1種感染症指定医療機関が原則一カ所指定してある
  • (県庁のホームページに記述有り。あるいは第1種感染症指定医療機関」でググる

エボラウイルス感染症の診断基準国立感染症研究所による平成24年3月の取り扱いマニュアル)

次のいずれかが満たされた場合,「エボラウイルス感染症」とする. 
 •被験検体からエボラウイルスが分離された.
 •被験検体からRT-PCR法でエボラウイルスゲノムが検出された.
 •被験検体から抗原検出ELISA法で,エボラウイルス核蛋白が検出された.
 •間接蛍光抗体法またはIgGELISAで判定された急性期と回復期に採取されたペア血清のエボラウイルスの核蛋白に対する抗体価が,4倍以上の有意に上昇した. 

次の場合,「エボラウイルス感染症」を疑う. 
 •IgM-captureELISAで,EBO-NPに対する特異的IgM抗体が検出された 

エボラウイルス感染症のウイルス学的検査は,国立感染症研究所(村山庁舎)ウイルス第一部第一室において可能である 
検体は郵送のこと

いずれにせよ、今の日本で我々が外来でエボラを疑うこと、ことに初期のエボラを疑うことは極めて困難である。しかしなんとか水際で防止しなくてはいけないのである。第一例目は我々の前に現れるはずである。患者は大学病院や総合大病院には行かないであろう。

これまでの厚生省ー都道府県保健所ー医師会等々による第一線病院である我々への連絡・指導がとてものんびししているので心配である。 

指導を徹底してほしい。せつに願うものである。

2014年10月15日水曜日

爪白癬治療薬エフィナコナゾール:ようやく外用薬の登場である

爪白癬治療薬エフィナコナゾール(商品名クレナフィン爪外用液10%)

これまで飲み薬が肝障害等々で使いずらかったから、外用薬は朗報である。ようやく必要な薬が出たというところ。

薬価クレナフィン®爪外用液10% 1g 1,657.50 円 [ 1 本(3.56g) 5,900.70 円 ]ーー> 5900円 / 1本























 先が刷毛のようになっている。
















爪への浸透率が良いのが売りだということ。爪のケラチンには付着が悪く、最下層のカビに到達しやすいと説明がある。























有効性を見るのに52週を設定している(治験)。まあ根気よく一年塗りなさいということだ。そして2割の患者には有効だ(完全治癒率)とうことである。

1本6000円とは高い値段をつけたものだ。3割で1800円である。月何本必要かしら?

しかし爪白癬にはこれまで飲み薬が肝障害等々で使いずらかったから、外用薬は朗報である。

2014年10月9日木曜日

ノーベル物理学賞おめでとうございます。

ノーベル物理学賞には驚いたのだ。3人とも日本人であることが素晴らしい。赤崎先生はいかにも薩摩男児であり、威厳のある学者である。こんな学者・博士が昔は多かったと思います。天野先生は現役バリバリの現代風の教授であり、これからも楽しみです。中村先生は受賞がかなって本当に良かったと思います。中村さんではなく中村先生であり中村教授である。ノーベル賞受賞者には尊厳をもって尊敬の気持ちを持って接せねばなりません。

中村修二先生のエピソードは同時代的にこれまで聴かされてきたし、例の裁判での数百億円には驚いたとともに、日本もやるなあと感心したが、そのあとがいけない。結局日本では発明者の対価に関してはあやふやになっちゃったようだ。日本の企業では利益をもたらす発明をした研究者には、年齢を重ねて管理職世代になったとき重役に遇して、そこで高給を払うという形が多いようだが、これで満足できない人は多いと思います。

それにしても中村先生と日亜化学とのつかず離れずの関係は面白い。中村先生は文句の人であり、それを対外的に口外するという、極めて非日本人的振る舞いが可能な人だ。それでも日亜化学は止めさせなかったし、研究費は出したし、留学もさせた。裁判を一緒に戦った弁護士が中村先生のことを「天才」と呼んでいたが、やはり今の日本には稀な、極めて稀な「天才」なんだろうと思う。なんかやりそうだから、研究を続けてもらったんだろう。

面白かったのは、最先端研究であり企業秘密をやっていたので会社として「論文」を書くことを禁止していたにも拘わらず、中村先生は「論文」「学会」の形で成果を公表していたということ。これを会社はしぶしぶ黙認していたのだそうだ。これだけ会社に逆らって、研究生活を続けるのだから、続けられるのだから、すごい力のある人なんだろう。

当時の学会に参加したらさぞや面白かったことだろうと思う。赤崎先生と中村先生の丁々発止の論戦なんかがあったのだろうか?

そういえば昔の医学生物学の学会の一部も面白かった。 真剣だった。怖かった。会場からの質問が怖かった。強烈な上から目線でいびり倒してくる論者も多かった。

ある年の病理の学会で座長の先生がある演者の発表の途中で烈火のごとく怒り出して突然「止めろ、もういい。君の発表はもう聴きたくない」「二ヶ月前に別の学会でしゃべった内容とほとんど同じじゃないか。恥ずかしくないのか、君は!席に戻りなさい!」と・・・・言われた演者はまっ青になって、も一言もしゃべれず、発表は中座となった。

この後が面白かった。出てくる演者がびびりまくっていた。でもなかにはその座長を全く無視し、意に介さない侍もまたいたものだ。かならずけんかをふっかける研究者というのがいた。学会の論戦は人間味があって面白かった。

さて中村先生「論文」や学会で公表していたからこそ、今の評価があるわけだ。ノーベル賞受賞の根拠である。

これだけ会社に逆らって、研究生活を続けるのだから、続けられるのだから、すごい力のある人なんだろう。と書いたが、これ今の閉塞感あふれる日本ではとても「空気」が許してくれそうにない。こんな人を許す風土が日本から全くなくなってしまっているのに気が付く。2チャンネルなんかで、さんざん叩かれるはずである。

研究は1000やって一つしか実を結ばない。会社は1000の研究の推進に莫大な投資をしているから、実を結んだたった一つの研究の対価をたまたま上手くいった研究者に正当に支払うことはできないというのが日本の企業論理である。 なんとなく納得してしまうそこのあなた。これを絶対におかしいと言い続けたのが中村先生だったのだ。そして小生もおかしいと思う。

100の利潤のうち100全部よこせといったわけではないのだ。10ほどもらいたいと言ったに過ぎない。それを0.1くらいで手打ちにさせたのがあの裁判の顛末だったということなのだ。

なんにせよ、ノーベル賞本当におめでとうございます。テレビがいっている「こんなにわかりやすいノーベル賞はこれまで例がない」と。Blue Ray discなんてそうだよね。青色そのものだ。

さて今日はノーベル文学賞である。日本時間で8時発表なんだそうだ。村上春樹の受賞を心から期待したい。

小生的には今晩でノーベル賞は終わりだ。平和賞と経済学賞は興味が持てないから。

ただ今年の平和賞で日本国憲法第九条が受賞したら面白いと思う。安倍首相が受賞でストックホルムに臨むとしたら、こんな皮肉なことはない。もちろん小生は九条が受賞したら、こんな名誉なことはないと思います。それくらい日本には「今の九条」が必要だと思いますから。






2014年10月6日月曜日

今年のノーベル賞はこれだ!

全く馴染みがないので、さわりだけ・・・







2014ノーベル医学生理学賞は今日ですね。

一日馬車馬のごとく働き、働かせられて、ふと気が付いたら、今日はノーベル医学生理学賞の発表でしたな。

昨年まではしつこいくらいに楽しんだものであるが、今年は全く意欲が湧かなかった。何故なんだろう?医学生物学的研究に昔ほどの情熱が持てなくなったというのは確かにあります。

でもそれだけではないなあ・・・

私なりに「ノーベル賞をあげたい人たち」を挙げてみる。

  1. ゲノムプロジェクトでC・ベンター(あとの二人はどなたでも良い、エリック・ランダーとF・コリンズでも良い)


  2. 分子標的薬剤でドラッカー(Brian J. Druker )スラーモン(あとの一人はどなたでも良い。ナポレオン(フェラーラのことね)でも良い)

  3. 遠藤章:スタチン


  4. オートファジー(大隅、水島)


  5. 味覚のレセプター:Charles Zukerなんてどうだろう?

  6. カーンとスターツルの肝移植コンビ

このなかで一番痛快なのは味覚とオートファジーなんだけど、一番落ち着くのはゲノムプロジェクトなのだ。

さてさて、あと一時間である。