2015年4月23日木曜日

虚は実なりて、実は虚のままにて、虚実は被膜の内と外・・・



上は実写にしか見えないCG

下はCGにしか見えない実写である。

ともに凄いが、ボクは下の実写が好き。これぞドイツ魂だな。






 更にこれもよいな




2015年4月19日日曜日

外科学会訪問記:血管外科と救急外科

小生が初めて外科学会に参加してから30年以上たつ。最盛期には癌学会を初めとしていくつの学会・研究会に参加していたか判然としないが、この年齢まできて、学会参加の意欲も時間もなくなってきつつあるなか、それでも年間いくつか出席する学会のひとつに外科学会があるのは、実はこの学会が面白いことを発見したからである。最近ますます面白くなってきた、小生的には。本当にためになるのである。

若い頃は忙しくて学会にまともに参加できる時間などないので、自分の発表する日の朝出かけ、発表が済むと、直ぐに帰ることが多かった。頑張ってもせいぜい一泊二日であった。自分の関連領域しか興味がなく、学会なんて面白くもなんともなかった時代が長かっただけに、この年で学会に目覚めるというのは実に意外である。

面白くなった理由の一つは、逆説的ではあるが「学会が真面目になった」からであろう。あるいは治療が進歩していると実感できるようになったからであろう。あるいは本当の意味で学際がワークしだしているからであろう。

もちろん研究費を初めとして獲得資金がますます逼迫しているはずの外科学会当局がこのような学会を毎年開催していくというのは、本当に大変だろうと思う。そのためか全般的に今年の学会は地味であったが、演目、フォーラム、特別講演は私にとっては非常に時宜にかなった有益なものであった。勉強になった。感謝したいと思う。自分がいつも関係している消化器・乳腺についてはあまり斬新なことはなさそうであったので、そんなセッションには参加していない。

ことし面白かったのは血管と救急であった。

血管の覚書
  1. 局麻で胸部大動脈瘤の治療をする時代になった。慈恵の大木先生は年間500例前後のステント手術を日本に戻ってきてこの10年くらいやっているが、彼のセッションで今年2015年4月のオペスケジュールというのが紹介されていた。先週の月曜日の予定であるが、朝9時半に始まりほぼ7時間で胸部・腹部大動脈瘤のステント手術を6件もこなしている。夕方4時半には6例目が終了している。これは驚異的である。こんなことが出来るようになったのも、ステント材料の進歩(細径になっていく)と局所麻酔で済ませられる症例が増えているからだろう。


  2. ステント材料についてはこれを開発していく過程で、日米(あるいは日欧)の承認時間差の大きな問題が現在克服され始めているとのことだ。彼を初めとして日本人が開発の中心に立ち、治験症例のかなりの数を日本国内でこなすことで、今年あたりから出てくる器材ではものによっては、欧米よりも国内で先に認可される製品もでてくるだろうとのことであった。手術材料が国内メーカーから得られる時代も夢ではなさそうである。


  3. こまかな技術的なことを言えば、最近のステントの特徴は、サイズの多様化、頚が振れるようになっているもの、チムニー(煙突),シュノーケルなどがトピックのようだ。チムニーといわれるステントを細径動脈(腎動脈、頸動脈や腕頭動脈)に先に入れておき、次いで大口径のステントで瘤や解離をバイパスするという方法であり、上行大動脈や弓部大動脈瘤への治療手段である。


  4. double chimneyやsnorkelに加えEVARやTEVARなどの(一見)専門ジャーゴンオンパレードの分野であるが、実はフォローするのはたいしたことではない。double chimneyはストローが二本だし、シュノーケルは大きなステントからシュノーケル様に二本の管が飛び出しており、例えばこれを腎動脈に挿入するわけだ。EVARやTEVARはそれぞれEndovascular aortic repairとThoratic endovascular aortic repairのことでこの手の治療の総称である。


  5. これくらい知っておればあとは「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2011年度版 」を参考にすれば、この世界の現状・概要はつかめるのだ。


  6. 小生のような病院にいても、年間何人かは大血管の緊急症を診る。最善はステントの上手なドクターのいる病院へ最短時間で送り込むことである。実際どの病院がアクティブなのか。これを知るにはゴア社のMRに尋ねるのが一番かもしれない。 いろんなサイズのステントを常備して、緊急に対応出来ている病院は日本全国でたった4病院なんですって、現状。
救急の覚書

  1. 救急医療の中でも外科の関係が深い領域はACSと呼ばれる。Acute Care Surgeryの略である。今から10年くらい前に米国で話題となったのは「助かったはずなのに結果的に死亡した外傷患者」の存在である。
  2. これをPTDという。Preventable Traumatic Deathの略である。
  3. この方々をを何とかしたい。病院に来るまでに亡くなる患者、なんとか到着したがそのうち亡くなってしまう患者。
  4. 当時は無視できない数の患者が亡くなっていたのである。そこでACSというシステムが立ち上がった。
  5. 具体的に外科と救急が融合した新領域であり、3つの要素からなる
    1.   ●外傷外科 trauma surgery
    2.     ●急性腹症などを含む救急外科 emergency surgery
    3.     ●集中治療管理 surgical critical care
 
  1. 今回の学会ではこのACSについて大きな分科会が3つほどあったようだ。その二つに参加した。勉強出来たかと言えばじつは怪しい。期待したほどではなかったというのが正直な感想である。ただACSのかかえている問題点は痛いほど実感された。ACSをなんとか上手に育てて欲しいというのが偽らざるところであるが、これは相当困難な課題であるなと思った。


  2. 対象症例数の問題:まず外傷外科の大きな対象である交通外傷がこの10年減っていることは大きい。大都市近郊の救命センターで複合外傷で手術になるケースは年間を通してもそう多くはない。四肢の開放骨折と肝破裂に骨盤損傷(マルゲーヌ骨折のような・・)が加わったようなケースであるが、都会の大きなセンターでも、それほど多い訳ではない。対象症例が多くないのに人的リソースは充実させておかなければいけないのがきびしいようだ。若手外科医がバリバリ手術できる環境となればいいのだが、必ずしもそうでないようだ。

  3. システムの問題:救急は昔からあるし、救急外科も昔からあるが、それを統合してACSという実態を構築するのはなかなか大変なようである。まず救急は昔から麻酔科ベースであり、外科は一般外科が古くから関わっているが、この二つ決して仲がよろしかったとはいえないこと。救急車から直接搬送できる手術室を持つセンター。CTも撮らずにいきなり開腹するシステムをメインに打ち出すセンターと従来通りに診断をある程度きちんとつけて、開腹に望むべきだとする施設がディベイトするわけだが、議論をきいているうちその両者の置かれている環境がかなり違うことを意識せざろう得なかった。


  4. それぞれの救命センターの立ち位置によってACSの課題は大きく変わる。大都市ないしは大都市近郊の救命センターと地方の救命センターさらには大学付属の救命センターと自立型の(市町村立)救命センターでは対象症例も医師の心構えもかなり異なるように見えた。これを総合的に論ずることはかなり困難であろう。つまりはこうだ。助けを求めればいくらでも専門外科医がいる大学病院所属の外科医と自分が最後の砦であることを常に意識している地方救命センターの外科医の違い。あるいはイベント発症からどれくらいの時間で患者が運び込まれてくる施設なのかも問題である。つまり本来の意味でPTDが現れるセンターPTDは篩にかけられていて、そのセンターに到達する前に亡くなっているようなセンター。お前のセンターにはPTDは実は来てないんじゃないの・・・と言いたくなるセンターがありそうなのだ。

  5.  小さくない課題の一つは外科医の専門性である。各界を代表する救急外科医に意見を聞いたところ、高度に専門的な医師を揃えろという意見と、そこそこで良いという意見で分かれた。これも立ち位置によって求められる医師像は変わる。さらには今はいろんなタイプの外科医がいるからよいだろうが、今後はそんなことはいっていられなくなりそうだ。第一この腹腔鏡全盛の時代に、戦陣医学的なbig incisionタイプの外科医をどのように育てたら良いのだ?それとも麻酔科・救急医療出身の医師が開腹手術をやるような時代がくるのであろうか?(ありえないって??、本当にそうだろうか?)

  6. まとまりのない覚書であるがAcute Care Surgeryをなんとか上手にシステム化することは大きな課題だと感じた次第である。




2015年4月8日水曜日

尊敬する研究者「大野 乾」のこと

日本の生物学者でもっとも好きな先生を1人選べと言われたら、小生は大野乾を迷わず選ぶ。大野さんにはいろんな顔がある。いつかは書きたかった大野先生である。
  1. 真のゲノム科学者:大元祖遺伝子仮説の提唱者。これに附随して無脊椎動物から脊椎動物に至る過程で、ゲノムが2回重複し、4倍体となったことは、ほとんど常識になってきています。それは教科書的には、HOXのクラスターが無脊椎動物では1つであるのに対し、脊椎動物では4つあるということで説明される。この「ゲノムが2回重複し、4倍体となった」ことが生物の飛躍的進化の基盤となっている。


  2. 先のゲノム重複は論文以上に著書(1970年)で有名である。Evolution by Gene Duplication 国内では原書は手に入らないが、米国アマゾンでは今でも94ドルで手に入る(140ページのペーパーバックにしては高すぎるが・・・)


  3. この著書は国内では1979年に翻訳が出た。遺伝子重複による進化 」(岩波オンデマンドブックス)。これは今でも手に入るが7020円である。ちなみに小生が持っているのは岩波書店の箱入りの版で1999年の版であり3600円であった。


  4. ところが科学者としての生涯をほとんど米国、カルフォルニアで過ごしたため日本国内では実際には馴染みがなかった時代が長かった。


  5.  ゲノムが好きなヒトにはたまらなく魅力的な考えを提唱したヒトであるが、彼がその考えを一般書物(大いなる仮説等々)に出版したころ、同時に「遺伝子音楽」を発表し、日本国内でそちらの方が有名になったため「きわもの」扱いされることも多かったようで、このため大野先生はかなり損をしている。


  6.  大野乾は日本語の達人である。素晴らしい文書を数多く残している。重複がキーワードの先生であるから、基本モチーフは変わらず繰り返される。ナボコフの箴言はいろんな場所で繰り替えされる。日本語の本も多く書かれているが、小生が最も好きな文章を挙げると井川洋二が編纂した「生物科学の奔流」という1983年(昭和58年)の本に載っている「馬三昧、釣三昧、研究三昧」


  7. 英語も努力されたようだ。英語でちゃんとした文章が書きたいと望まれて、シェークスピアの真似はできないが、「ローマ帝国の衰退と滅亡」を書いたギボンくらいの英語を書けるように努力されたと述べている。


  8. 馬が好きな先生であることは有名だ。若い頃から馬を所有している。


  9. 皇太子の弟である秋篠宮の学位指導教官の1人であり実質的な博士論文↓であるのlast authorであることは有名である。Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jun 25; 93(13): 6792–6795.

    Monophyletic origin and unique dispersal patterns of domestic fowls.

  10.  この研究は東南アジアの家禽類の遺伝学的系統をゲノムを武器に明らかにしたものであり、小生は同時代的に非常に興味を持って見ておりました。(このころから大野博士は「実験医学」や「細胞工学」に登場するようになった)


  11. もうひとり小生が忘れることができない研究者がいて、それは現在阪大工学部の教授である四方哲也である。この方が現在何を研究されているかはよく知りませんが、カルフォルニアの大野先生のラボから四方さん帰ってこられた頃「試験管内にゲノム構成のことなる大腸菌を2種類いれて培養するとどのようにお互いが振る舞うか」という研究をされており、この研究に小生は尋常ならざる興味を引かれたのであった。いつごろだろう、1990年台後半であろうか?分裂スピードがかなり異なる二種類の細胞を混合培養したとき、当時の常識では片方が他方を駆逐すると考えられていた。この大腸菌は元々が同じ背景を持っており、当然生物学的に依存関係はない。クローン化して継代しているうちに、分裂スピードが異なってきたのである。これを四方氏はいろんな比率で、いろんな条件(温度、異なった培地)で混合培養したのだが、分裂スピードが緩やかなクローンであるが、いくら待っても駆逐されないのだった。当時の小生にはこれが衝撃的だったわけ。大腸菌の分裂スピードは皆さんご存じのようにかなり速い。ですから分裂スピードのちょっとした差が指数関数的に広がっていくことは容易に暗算できる。にも関わらず、ほとんどの培養環境で二つのクローンはある比率で定常状態になるというのである。面白くないですか?


  12. クローン(細胞株)だけ研究してても、癌の謎は解けないなと思った次第です。


  13. 確かに今の常識では例えば1人の膵癌には遺伝学的にいろんなクローンが混在していて(ダーウイン的進化??)それが癌の多様性を作っているし、治療困難性の原因であるとされているから、今の人々にはなんてことはない研究かもしれない。


  14. しかしこの研究ひたすら培養実験をしていた当時の小生には信じられないくらい、パラダイムがひっくり返るくらいの衝撃だった。こんな研究を大野ー四方はしていたのね。つまりですな、試験管内進化を彼らも見たかったのですな。

  15. その大野先生が最近再度西欧では再評価されているらしいOhnologue (Ohnolog)という言葉があるという。


  16. 以上の様々な事由があるので、小生には「大野乾」というのは最高の研究者なのである。 

    以下、秋篠宮の論文である。

 

 

 

 

 

 

Monophyletic origin and unique dispersal patterns of domestic fowls.

2015年4月6日月曜日

cfDNA testingって何? :NEJMによる大規模出生前診断スタディ

cfDNA testingという用語が最新号のNEJMにはよく出てくる。これはcell free DNAのテストのことであり、簡単に言うと末梢血から細胞を除いた血清中のDNAを対象とする(シークエンスすることで得られる)遺伝子検査のことである。

癌の診断に用いられるリキッド・バイオプシーに似ているが背景疾患が異なる。

cfDNA testingの対象は先天性疾患であり、被験者は妊婦さんである。


Original Article

Cell-free DNA Analysis for Noninvasive Examination of Trisomy

Mary E. Norton, M.D., Bo Jacobsson, M.D., Ph.D., Geeta K. Swamy, M.D., Louise C. Laurent, M.D., Ph.D., Angela C. Ranzini, M.D., Herb Brar, M.D., Mark W. Tomlinson, M.D., Leonardo Pereira, M.D., M.C.R., Jean L. Spitz, M.P.H., Desiree Hollemon, M.S.N., M.P.H., Howard Cuckle, D.Phil., M.B.A., Thomas J. Musci, M.D., and Ronald J. Wapner, M.D.
April 1, 2015DOI: 10.1056/NEJM



Editorial

Use of Cell-free DNA to Screen for Down's Syndrome

Lyn S. Chitty, Ph.D., M.B., B.S.
April 1, 2015


Correspondence

Accurate Description of DNA-Based Noninvasive Prenatal Screening

April 1, 2015


Original Article
Brief Report

Copy-Number Variation and False Positive Prenatal Aneuploidy Screening Results

Matthew W. Snyder, M.S., LaVone E. Simmons, M.D., Jacob O. Kitzman, Ph.D., Bradley P. Coe, Ph.D., Jessica M. Henson, B.S., Riza M. Daza, B.S., Evan E. Eichler, Ph.D., Jay Shendure, M.D., Ph.D., and Hilary S. Gammill, M.D.
April 1, 2015

3次元マトリックスの中を伸長する乳管構造・・・Cell image

 久しぶりのCell Imagesである。美しい・・・


「Cell」誌のイメージは「NEJM」とは全然違うが、これはこれで素晴らしい。
 
This image, submitted by undergraduate researcher Daphne Superville of the Gupta Laboratory, shows laboratory-grown mammary glands implanted in a three-dimensional matrix.


研究室の培養系で作られた乳腺ー乳管の3次元培養である。





これは糖のポリマーで作られた球(たま:sphere)を攻撃する免疫細胞達なのである。どれが人工物なのだろう・・・(というようなアホなことを一昨日書いたが、これ緑が球であり、張りついている赤い扁平構造物が免疫細胞なのね。ニュートン系の月刊誌で良くみるイラストでは、免疫細胞も球形であり、こいつら突起を出しながら癌細胞を攻撃しているのが先駆イメージでした、私の。ですから新鮮なイメージであるな、これ





2015年4月2日木曜日

うわっ、胆嚢がちぎれそうである


Images in Clinical Medicine
Gaurav Sharma, M.D., and Reza Askari, M.D.
N Engl J Med 2015; April 2, 2015

Transdiaphragmatic Intercostal Herniation of the Gallbladder














わりと最近のNEJMに「左の肺が左の肋骨間に飛び出す画像」が出ていた。ヘルニアだ。
今回のものは、胆嚢なんです。4年前の右肺生検の創部に出ているらしい。一種の術後ヘルニア(incisional hernia)である。

  • An 82-year-old man presented with a 1-year history of episodic pain and a bulge along the right costal margin. He had undergone a minithoracotomy 4 years earlier for biopsy of recurrent squamous-cell carcinoma in the right lung. Computed tomography revealed transdiaphragmatic herniation of the gallbladder fundus through the seventh intercostal space (Panel A shows an axial view, and Panel B a coronal view). There were no stigmata of inflammation or ischemia, and the hernia size appeared to be stable on staging cross-sectional imaging. Transdiaphragmatic intercostal herniation is a rare occurrence, usually involving the liver, bowel, or omentum, and is most often associated with thoracic trauma. Surgical management requires both diaphragmatic repair and reconstruction of the chest-wall defect. In this case, repair was deferred, given the patient's poor functional status and the minimally symptomatic nature of the hernia. The patient died from complications of widely metastatic cancer 5 months later.
















わっ、こんなのがお腹に・・・

Images in Clinical Medicine

Rachael Sussman, M.D., and Jonah Murdock, M.D., Ph.D.
N Engl J Med 2015; 372:1359  April 2, 2015

Peritoneal Loose Body























ちょっとお腹が凄いことになっている。主訴は頻尿でしょうか?

小生の友人A君は若い頃、食後お腹がいっぱいになると必ずトイレ通いが始まった。小さい方である。この写真の左上のように膀胱を圧排するのである。当時の流行言葉で「胃下垂」なのであった(今頃こんな言葉は使わない)

ちなみにこのダチョウの卵のようなしろもの、ほとんど無構造であるらしい。

こんなのが出来て、自由に腹腔内を動いているのですから・・・




A 62-year-old man presented for evaluation of a history of urinary frequency of more than 20 years. The physical examination and laboratory findings were unremarkable. Computed tomography of the abdomen and pelvis revealed an 8.5-cm midline mass with central calcification (Panel A, red arrow) superior to and compressing the bladder (Panel A, blue arrow). Laparoscopy revealed a free-floating, smooth, firm, rubbery mass measuring 10 cm by 9.5 cm by 7.5 cm and weighing 220 g (Panels B and C). The sectioned specimen included several layers; green ink was used to delineate section margins (Panel D). Histologically, the mass contained predominantly acellular, laminated, fibrous tissue; centrally, the specimen contained proteinaceous material with fibrinoid necrosis, surrounded by a ring of calcification. The findings were consistent with a peritoneal loose body, a formation that is thought to result from torsed, infarcted, and detached epiploic appendages that transform into fibrotic masses. Such masses are often asymptomatic when they are small, but they can be large enough to cause extrinsic compression that is associated with bowel obstruction, urinary retention, or (as in this patient) urinary frequency. The patient's urinary frequency resolved immediately after the surgical removal of the mass.

2015年4月1日水曜日

末梢動脈疾患(PAD):米国最新のガイドライン

米国心臓病学会(ACC)は3月20日、無症候性末梢動脈疾患(PAD)や跛行を来した患者の管理について、米国血管外科学会が作成したガイドラインを紹介した。Journal of Vascular Surgery誌に発表されたもので、疫学から診断、推奨される検査、無症候性PAD管理など、10の要点をまとめている。詳細は下記の通り。  

【PAD管理に関するガイドライン10の要点】 

  1. 米国のPAD患者は推定800-1200万人。PADは年齢と密接に関連し、40歳以上の有病率は0.9-14.5%にのぼる。高齢化や高い喫煙率、生活習慣病(糖尿病、高血圧、肥満)の増加などにより、PAD有病率はさらに増えていくと想定される


  2. 症候性PADでは間欠性跛行や重症虚血肢などを発症する。神経性跛行と類似するものが多いが、神経性跛行とPADによる間欠性跛行と違いは、(1)神経原性跛行の筋症状はしばしば腰から下肢に放散する、(2)神経根性疼痛は荷重や姿勢の変化で誘発されやすい――などが挙げられる。


  3.  PADの確定診断は、血管造影よりも足関節/上腕血圧比(ABI)(ABI≦0.9)を測定する。ABI≧1.4は動脈の弾性低下と石灰化を疑い、足趾上腕血圧比(TBI)で確認する(TBI≦0.7でPADと診断)。PADの症状はあるがABIが正常な場合は、運動後のABIを何度か計測することで診断できる。ABI>1.4または<0.9は、主要心疾患事象リスク増加と関連する


  4. 血行再建を考慮している症候性患者について、動脈不全の定量化や閉塞レベルの特定を行う際は、非侵襲的生理学検査(局所血圧や容積脈波の測定)や解剖学的画像検査(動脈二重エコー、CTまたはMR血管造影、侵襲性血管造影)を推奨する


  5.  無症候性PAD管理は、危険因子の是正(禁煙、PAD悪化の徴候についての教育など)を中心とする。抗血小板療法やスタチン投与を推奨するに足るエビデンスはない。画像から得られる血行力学的数値にかかわらず、侵襲的な治療は推奨しない


  6. 間欠性跛行を伴うPAD患者の管理は、危険因子の是正(HbA1c<7.0%、アスピリン81-325mg投与、β遮断薬投与による高血圧管理など)とQOL改善を中心とする。薬物治療はシロスタゾール(心不全歴の無い患者に1日2回100mg)、ペントキシフィリン(シロスタゾール禁忌患者に1日3回400mg)、ラミプリル(1日10mg)などを検討する


  7. 運動療法は、PDA患者へのQOL治療の中心となる。指導者を付けた運動プログラムを第一選択とするが、指導者がいない場合は家庭での運動(30分間歩行を週3-4回が目標)でもよい。血行再建術後の患者にも運動を推奨する。年1回のABI測定も有益


  8. 間欠性跛行を起こす限局性の大動脈腸骨動脈疾患、総腸骨動脈または外腸骨動脈の疾患に対しては、直視下手術より血管内治療が望ましい。被覆ステントまたはベアメタルステントの使用を推奨する。びまん性大動脈腸骨動脈疾患には、血管内治療あるいは直視下手術が有益。総大腿動脈疾患がある場合は、血行再建術を推奨する


  9. 表在大腿動脈に限局する閉塞性疾患には、直視下手術よりも血管内治療を推奨する。表在大腿動脈へのステント使用は、限局性(<5cm)または中等度の長さ(5-15cm)の病変で結果が思わしくない場合に限る。間欠性跛行と関連する単発性下肢動脈疾患には、血管内治療は勧めない


  10. 間欠性跛行で血管内治療もしくは直視下手術を受けた全ての患者には、最適の内科療法を行うべきである。抗血小板療法(アスピリンまたはクロピドグレル)は血管内治療後、最低30日間は必要となる。末梢血流再建術を受けた全ての患者においては、抗血小板療法(アスピリン、クロピドグレルまたは2剤の併用)を行うべき