2020年2月22日土曜日

新型コロナについて(2):2019-nCoV_PCRがなぜムツカシイ検査なのかについての考察

新型コロナウイルスの診断について、様々な解説が世間を飛び回っている。
小生なりに整理してみたい。

1)新型コロナウイルス感染症固有の問題


  1. 陽性率と臨床症状の齟齬: 陽性なのに症状がない?

2)技術的問題:


  1. PCRの検査が一日にできる上限数。
  2. キットの問題。
  3. 検体採取 から処理あるいは破棄産物の扱い。
このうちPCRの能力について 考えてみたい。

コロナウイルスはRNAウイルスであるからPCR増幅には逆転写が必要である。このウイルスについては既知のシークエンス配列からすでにコンセンサス・プライマーセットがあるようで、企業化されてもいるようだ。

国立感染症研究所(NIID) のホームページ「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」というものがあり、PCRのプロトコールについて記録文書が掲載してある。最近では2020年2月17日に改定されている。

PCRやRT-PCRをやったことがある人間にとってその概要は難しいものではなく、むしろ普通のPCRをやっているのだということがよく分かる。検体cDNAを増幅してゲル泳動展開して 濃度検定を行うという普通のPCRである。

少し驚いたのはPCRの回数である。40回増幅するとある。回数が多すぎるのである。通常の感覚では30回くらいが普通のPCRであるから 、その2^10倍(=1000)倍である。

マニュアルの6ページ目をコピペするが確かに40サイクルと書いてあるでしょう?

















何を意味するかというと、個体に存在するウイルス量が極端に少ないのではないかということである。臨床的に問題になる症例でも咽頭拭い液等に存在するウイルス量が実はそれほど多くはないのがこの病気なのだ。

1) 感染個体の体内で爆発的にウイルスが増えていく・・・わけではない。
2)ごく少量のコピー数でも発症するときは発症する。

これからは小生の類推であるが、PCRの検査が不安定(6〜7回陰性で最後に陽性)であるとの報道があるのは、このあたりが理由なのではないかと思うのだ。


PCRやRT-PCRをやったことがある人間にとって40回増幅するPCRというのは極めてトリッキーな実験系である。

「無理やりPCRかけているな」というのが通常の感覚ではないだろうか。あるいは陽性バンドを見せられても「コンタミ(汚染)ではないの?」と言われる、いわば測定限界ギリギリの実験系。

この検査システムが極めて難しいとされる理由はおそらくこのあたりにあると思う。

新型コロナウイルス肺炎はその検査システムの構築が一筋縄ではいかない難しい病気のように思える。





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