ラヴェルには素敵なソロ・ピアノ曲が多いが、寡作なので全集といってもCD二枚で納まる。新しい全集を聴くのに二時間程度ですむ。一晩一回で全曲通せるというのは、そのピアニストの全てを知るのに丁度手頃である。もともと好きなラヴェルであったが、最近はピアノ、ピアノ、ピアノ。ピアノしか聴かなくなってしまった。CDがずいぶん増えたものだ。
<基本収録曲目>
・グロテスクなセレナード ・前奏曲 ・古風なメヌエット
・ハイドンの名によるメヌエット ・亡き王女のためのパヴァーヌ
・高雅で感傷的なワルツ ・水の戯れ ・ボロディン風に
・ソナチネ ・シャブリエ風に ・鏡 ・クープランの墓
・夜のガスパール
全集には概ね以上の曲目が収録されている。これにラ・ヴァルスが加わると嬉しいが、そんな全集は余り多くはない。
- ロベール・カザドシュ('51年、SONY CLASSICAL)
- ヴァルター・ギーゼキング('54年、EMI CLASSICS)
- ヴェルナー・ハース('64~68年、PHILIPS)
- サンソン・フランソワ('66~67年、EMI CLASSICS)
- モニク・アース('68年、ERATO)
- ジャック・フェヴリエ('71年、Ades)
- ヴラド・ペルルミュテール('73年、Nimbus)
- ヨン・ダムゴー('73年、Scandinavian Classics)
- パスカル・ロジェ('73~74年、DECCA)
- アナトリー・ヴェデルニコフ('76年、Columbia)
- ジャン=フィリップ・コラール('76~80年、EMI CLASSICS)
- ポール・クロスリー('83年、CRD=Brilliant Classics/1983)(Sony)
- 永井幸恵 ('84年、BIS)
- ルイ・ロルティ('88年、CHANDOS)
- ドミニク・メルレ('90年、Bayard)
- ジャン=イヴ・ティボーデ('91年、DECCA)
- アビー・シモン ('92年、Vox Classical)
- グヴェンドリン・モク ('01~02年、MSR/1875年製エラール使用)
- アンジェラ・ヒューイット('01~02年、Hyperion)
- ロジェ・ミュラロ(ムラロ)('03年、Accord)
- ジョルジュ・プルーデルマッハー('03年、Transart classic)
- アンヌ・ケフェレック('92年、EMI)
- ジャン=エフラム・バヴゼ('03年、MDG)
- フィリップ・アントルモン('03年、Cascavelle)
- アレクサンドル・タロウ('03年、Harmonia Mundi)
- 野原みどり('03年、アウローラ・クラシカル)
- ジョルジュ・プルーデルマッヒャー('03年、)
- フィリップ・ビアンコーニ('03年、Lyrinx)
- アブデル=ラーマン・エル=バシャ('07年、Octavia Triton)
- アルトゥール・ピッツァーロ('08年、Linn)
- ミケランジェロ・カルボナーラ('08年、Brilliant Classics)
- スティーヴン・オズボーン('10年、Hyperion)
- 岡本愛子('11年、ALM RECORDS)
- ミヒャエル・エンドレス('11年、OEHMS Classics)
好きなのはクープランの墓。「クープランの墓」は6曲からなる組曲で、全曲で23〜24分程度。その中でも一曲目のプレリュードは特に好きだ。ピアノ弾きにとっては、最後のトッカータやメヌエットに目が向くようであり、ピアノ難度の高い曲として紹介されるが、ボクは非ピアノ弾きとして、その意見には疑問を感じる。「クープランの墓」でボクの好き嫌いが一番敏感に分かれるのは一番目のプレリュードである。この曲はボクは難しい曲だと思います。一番ピアノ弾きの弾き方の差が現れる曲と思えてならない。この曲を満足に弾ける実力者にはなかなか出会えない。そんな曲だと思うな。それだけに聞き手としては面白くてしょうがない。好きで好きでしょうがない曲になってしまいました。
とにかく好きな曲なのでクープランの墓が聴ければと手に入れたCDは他にもある。
- アブデル=ラーマン・エル=バシャ('95年、Octavia Triton)
- 永野英樹('01年、Denon)
- アレクシス・ワイセンベルグ('76年、ORFEO DOR)
- サンソン・フランソワ('57年、EMI CLASSICS)
- 仲道郁代 ('82年、EMI CLASSICS)
- エリック・ハイドシェック ('09年、CASIOPEA)
アビー・シモン ('92年、Vox Classical)
ルイ・ロルティ('88年、CHANDOS)
アレクサンドル・タロー('03年、Harmonia Mundi)
アブデル=ラーマン・エル=バシャ('95年、Octavia Triton)
スティーヴン・オズボーン('10年、Hyperion)
順番は敢えてつけないようにしたい。基本的には好きな曲なので、誰にもいいところがある(と思いたい)。5人以外の多くの方々もみな良いのである。いただけないのはごく数人でしょうな。
最近長年の疑問が氷解した。サンソン・フランソワのことである。皆が良い、素晴らしいという。ボクにはさっぱり良さがわからない。酔っぱらいの、へたくそな演奏だとしか思えなかった。ピアノを弾いたことのないボクに、きっとフランソワはそんなこと言われたくないでしょうが、それでも分かる。へたっぴー。
謎が解けたのは最近YouTubeでフランソワの旧い(58年ころ)のクープランを視聴したからである。いやまあ、びっくりしました。音は動くし、弾き間違えも相変わらず耳につくし、他のピアニストのきちんとしたラヴェルとは大いに違うのだが、でもめちゃくちゃいいのである。フランソワの伝説は50年代頃までのイメージから作られたのね。日本で今売られているCD('66~67年、EMI CLASSICS)は、もう指も頭も耄碌したフランソワの残りかすでしかないのだと思う。
そんなわけで、旧いヴァージョンを探して('57年、EMI CLASSICS)3枚組 (H25/5発売)を買いました。まさにマニア向けだね。「クープランの墓」と「夜のガスパール」では58年と67年の二組の演奏が入っているし、「スカルボ」にいたっては58年と67年に加え更には47年版と三つも入っている。こんな贅沢なCDをよく出すよね。素敵なハード紙ボックスに入って1389円でした。
もうひとつギーゼキングへの疑問。このピアニストも従来から高い評価であるが、ボクには良さがわからない。彼はラヴェルには向かないのではないかと思うくらいだ。あのテンポの遅さとなんとももどかしい指。ボクの聴いているのは57年版で今から56年も前の録音だが、もっと古くて良いバージョンがあるのかもしれないね。フランソワの例もあるしなあ。
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