NEJMの1月の論文であったが、印象度は大きかったが、なぜかブログにnoteするのを忘れていた。
自分が受けるとしたら「勘弁してくれ」というような治療であるが、難治性の偽膜性腸炎を実際担当すると「藁にもすがりたくなる」ものである。効くのだったら、なんでもありだ。
N Engl J Med
2013; 368:407-415
January 31, 2013
Original Article
Duodenal Infusion of Donor Feces for Recurrent Clostridium difficile
Els van Nood, M.D., Anne Vrieze, M.D., Max Nieuwdorp, M.D., Ph.D., Susana Fuentes, Ph.D., Erwin G. Zoetendal, Ph.D., Willem M. de Vos, Ph.D., Caroline E. Visser, M.D., Ph.D., Ed J. Kuijper, M.D., Ph.D., Joep F.W.M. Bartelsman, M.D., Jan G.P. Tijssen, Ph.D., Peter Speelman, M.D., Ph.D., Marcel G.W. Dijkgraaf, Ph.D., and Josbert J. Keller, M.D., Ph.D.
[患者と方法]
バンコマイシンによる除菌を行なうも再発したCD陽性偽膜性腸炎の患者43名3つの治療群に類別し経過をみたものだ。
- 第1群:バンコマイシン治療後に腸洗浄を行ない、ついで健常者の便を流入(経鼻チューブを介して実際には十二指腸へ送り込む)
- 第2群はバンコマイシンの治療のみ
- 第3群はバンコマイシンの使用後に腸洗浄のみを行った
[結果]
- バンコマイシン単独かそれに腸洗浄のみの群:、患者の7~8割は、10週間以内に再び腸炎を再発
- 便注入群: 初回注入で16名中13名が治癒し(81%)、再発した残りの3名のうち、2名は再度別人の便を注入して治癒
大腸細菌フローラの「多様性」を評価する指標にSimpson Indexというものがある。この「便移植」前後でのフローラの変化をみたのが次の図である。CD陽性の腸管内は細菌叢がやせ細っていて、多様性に乏しいが、「便移植」により、再度多様性に富むフローラが戻ってくることがわかる。
こんな「野蛮な治療」最初に考えたのはいつ頃の誰だろうか?多くの皆様が想像するとおり、起源は随分古い。
こんな論文が1958年にはあるようだ。
Eiseman B, Silen W, Bascom GS, Kauvar AJ. Fecal enema as an adjunct in the treatment of pseudomembranous enterocolitis. Surgery 1958;44:854-859
今年の論文の特徴は前向きの割り付け試験だったということだ。
16例とはいえ94%の改善率である。実臨床に導入しない手はない。
0 件のコメント:
コメントを投稿