2014年7月24日木曜日

ついに胃癌の分子分類4タイプ:nature

胃癌の分子分類4タイプというのが登場した。
  1. EBV
  2. MSI
  3. GS
  4. CIN
というのがその4タイプのニックネームである。特徴を簡単に・・・
  1. EBV:EBVが陽性であるもの。PIK3CAの変異が認められメチル化が高度である。JAK2,CD272(PD-L1),PDCDILG2(PD-L2)の増幅を認める
  2. MSI:マイクロサテライト不安定症例で変異を多く認める
  3. GS:ゲノム安定しているタイプ:diffuseタイプに多い。RHOAの変異、 RHOファミリーの融合を認める。
  4. CIN:染色体不安定症例:aneuploidyが顕著、レセプターチロシンキナーゼ遺伝子の増幅(+)
出所はCancer Genome Atlasからであり、ご想像通り日本人研究者の名前は事実上皆無である。この研究では295症例の胃腺癌症例が対象でありサンプルは韓国の国立癌センター、オンタリオ癌研等々13研究所から集められた(2010年から2012年にかけて)。618症例が集められたが、厳密なQCの結果275症例が却下された。
  1. 114症例は病理学的検索で壊死や腫瘍量(体積比)が不足と判断
  2. 117症例はRNAのqualityやDNA収量など分子評価で却下
  3. 13症例では腫瘍と健常サンプルがgenotypeで不一致
  4. 10症例では病理診断が今回の研究には不適切
  5. 3症例は量的不適切
  6. 18例他の理由で不適切であった。
343症例のうち48サンプルは化学療法が行われていたことがあとから判明した3ケース、更なる病理検索で不適切であると判断されたもの(今ひとつ判然としないこのあたり)などであり最終評価から省かれた。結局残った295症例では

  1. intestinal type (196 例) :diffuse type (69 例) 
  2. T 1/2/3/4/X : 11/ 44 / 155 / 75 / 10
  3. Stage I/II/III/IV/X : 32 / 116 / 111 / 20 / 16
  4. 人種:最も多いのがロシア人の83人、次いでドイツとウクライナで39人 韓国は31人である。
  5. 57人が死亡、31人が再発している
4タイプと組織学的亜型との関係が最も知りたい事項であろう。
















Nature
doi:10.1038/nature13480

Comprehensive molecular characterization of gastric adenocarcinoma
Received
Accepted
Published online

2014年7月12日土曜日

yesというがん遺伝子をご存じであろうか? YAP1をご存じか?

朝早く雑誌を見ていたらYAP1という分子について5つ報告されている。RASがらみの膵癌であったりメラノーマであったり。 YAP1なんてもちろん知らなかったが、これがyesがん遺伝子に関連した分子だと知って、俄然デジャブのように記憶が甦る。

さて皆様
 yesというがん遺伝子をご存じであろうか?

癌遺伝子ハンティングが隆盛を極めた1980年前後は日本からもいくつもの遺伝子が報告されたが、小生にとって極めて印象的だったのはyesである。プログレのYESが流行っていたこともあるが、印象をひいたのはyesのyでありこれは「山口」、もっといえば「山口大学」由来だったからである。ニワトリ由来のがん遺伝子であった。トリ由来なのだ。ラウスも藤浪もトリ由来だ。

研究のヶもわかっていない小生ではあったが、当時一時期派遣所属していた研究所の一階ラウンジには日本から欧米の一流雑誌に発表されたばかりのリプリントが押しピンで次々と張り出されていて、それは誇らしかった覚えがある。当時のリプリントには表紙がついていて、例えばnatureであればそれはオレンジ色の結構派手な表紙であり、遠くからでも良くわかる。

そのなかの一つが













であった。北村博士、豊島博士、そして吉田博士による癌研からの報告である。


・・・1981年、山口大学で発見されたトリ肉腫ウイルス、Y73、に新しいがん遺伝子を発見し、yesと命名した。yes遺伝子がヒト細胞にも存在すること、 チロシンリン酸化活性を持つが、膜蛋白である受容体型ではないことなどを明らかにした。また、yesは既に見出されていたsrcと蛋白レベルでは極めて高 い相同性を示すが、DNA配列では約70%程度の相同しか示さないことから、蛋白に機能を保存しながら遺伝子が進化し、ファミリーを形成していることを提 唱した。その生理学的な機能は不明のままであったが、最近になって、yes遺伝子がヒトのがんに関わっている可能性が指摘されている。・・・

というのは吉田光昭先生のがん研究会での紹介である。

このあとyesは我々の視界から消えていく。少なくともヒトの癌で yesの名前を聞くことなどついぞなかったと思う。

さて皆様
YAP1をご存じか?

今朝久しぶりに雑誌を眺めていたら

Cellに3報、Cancer Cellに2報目立つ報告が続いている。serial killerのごとし。キーワードはYAPでありyesなのだ



YAP1 (Yes-associated protein 1), also known as YAP or YAP65, was first identified by virtue of its ability to associate with the SH3 domain of Yes and Src protein-tyrosine kinases.

YAP1 is a potent oncogene, which is amplified in various human cancers, and it is one of the two main effectors of the Hippo tumor suppressor pathway.

なんとまあyesが関連するのである。驚いた。

さて5報の論文である。

Cell
Volume 158, Issue 1, p157–170,
3 July 2014

YAP/TAZ Incorporation in the β-Catenin Destruction Complex Orchestrates the Wnt Response

Cell
Vol. 158, Issue 1, p171–184
 3 July 2014

KRAS and YAP1 Converge to Regulate EMT and Tumor Survival
Hahn and colleagues

Cell
Vol. 158, Issue 1, p185–197
3 July 2014 

Yap1 Activation Enables Bypass of Oncogenic Kras Addiction in Pancreatic Cancer
DePinho and colleagues 

Cancer Cell
Volume 25, Issue 6, p831–845,
16 June 2014

Hippo-Independent Activation of YAP by the GNAQ Uveal Melanoma Oncogene through a Trio-Regulated Rho GTPase Signaling Circuitry

Cancer Cell
Volume 25, Issue 6, p822–830,
16 June 2014

Mutant Gq/11 Promote Uveal Melanoma Tumorigenesis by Activating YAP