この治療薬は米国サンディエゴの企業Mapp Biopharmaceuticalが開発したものでそのInformationsheetはこれだ。自社の抗体MB-003と他社(Defyrus/PHAC)の抗体を三種類(およびリコンビナント・インターフェロン)混合した物をMapp Biopharmaceuticalが提供している。
抗体MB-003は本来、米国陸軍研究所(USAMRIID) が開発したエボラに対する4種類のマウスモノクローナル抗体(2000, Science)の一つ13F6クローン由来である。
- ちなみに軍がウイルス学に関与するのはどこの国でも同様らしい。次のPNASの論文では参考文献の筆頭が Ken Alibekという亡命学者(旧ソ連の細菌兵器担当者)という人の書いた書物であり、PNAS論文中に「旧ソ連ではエボラを細菌兵器化していた」という記述がある。信頼性がどれほどあるかやや疑問であるが、PNASの査読を通っているのだから全く無視するわけにはいかない1行である。ちなみにKen Alibekの書いた書物は Biohazard: The Chilling True Story of the Largest Covert Biological Weapons Program in the World - Told from Inside by the Man Who Ran It, Random House, ISBN 0-385-33496-6といいpdfで全文読めるようになっているようだ。333ページもあるからダウンロードなんかしないほうがいいと思います。
USAMRIIDとMapp Biopharmaceuticalはこの抗体をヒト化し、様々な変異体を工夫し特に抗体のヒト化部分の糖タンパク質からフコース(糖脂質)を除くことで、エボラウイルスに対する抗体価が上昇する(CDC活性とADCC活性:ちなみに中和抗体活性はこの抗体には無い)ことを見出していた(2011,PNAS 2012, PNAS) 。
一方Defyrusはカナダ・トロントの企業でNational Microbiology Laboratory (Winnipeg, Canada)・Public Health Agency of Canada (PHAC)が開発した抗体カクテルを提供している。(リコンビナント・インターフェロンの添加データはこちらのデータが主である)
ヒトでの治験データが全くない抗体治療薬である。リベリアで感染した米国人二名を米国に帰還させて投与した結果が良好だった(詳細不明)だったことで、一気に治療のスキームに組み込まれようとしている。しかし抗体製剤であり必要量に供給量は全く追いつかないであろうことは予想される。
ヒトへの投与に慎重だったWHO/CDCが姿勢を変えた経緯やその他の既知の治療法(インターフェロンやステロイド?)の導入についてはサイエンス(8月15日号)に記事がある。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によるZMappに対する「現時点(平成26年8月8日付け)での」質疑応答はこちらである。
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