2008年6月18日水曜日

おっとどっこい偽遺伝子は現役だった!

死んだふりをしている偽遺伝子が実はmiRNA(siRNA)の源であったという報告がありました。昨日の昼、「偽遺伝子」のことを考えていたばかりだったので、少し驚くと共に研究のアイデアが沸々とわいてきましたぜ。この偽遺伝子の報告はNatureに同時に三報載り、もっとも早いのは徳島大学からの報告でした。


ショウジョウバエの内在性小分子RNAは体細胞でArgonaute 2と結合する

Drosophila endogenous small RNAs bind to Argonaute 2 in somatic cells p793

Yoshinori Kawamura, Kuniaki Saito, Taishin Kin, Yukiteru Ono, Kiyoshi Asai, Takafumi Sunohara, Tomoko N. Okada, Mikiko C. Siomi & Haruhiko Siomi

doi:10.1038/nature06938


ショウジョウバエの内在性低分子干渉RNA経路

An endogenous small interfering RNA pathway in Drosophila p798

Benjamin Czech, Colin D. Malone, Rui Zhou, Alexander Stark, Catherine Schlingeheyde, Monica Dus, Norbert Perrimon, Manolis Kellis, James A. Wohlschlegel, Ravi Sachidanandam, Gregory J. Hannon & Julius Brennecke

doi:10.1038/nature07007


ショウジョウバエのヘアピンRNA経路は内在性低分子干渉RNAを生成する

The Drosophila hairpin RNA pathway generates endogenous short interfering RNAs p803

Katsutomo Okamura, Wei-Jen Chung, J. Graham Ruby, Huili Guo, David P. Bartel & Eric C. Lai

doi:10.1038/nature07015

2008年6月15日日曜日

乳癌治療感受性を規定する遺伝子多型

Nature Genetics
Published online: 30 May 2008 | doi:10.1038/ng.155

NAD(P)H:quinone oxidoreductase 1 NQO1*2 genotype (P187S) is a strong prognostic and predictive factor in breast cancer


エピルビシンとアンスラサイクリン薬剤に対する乳癌の感受性を規定する遺伝子多型報告である。
(NQO1*2, rs1800566(T), NM_000903.2:c.558C>T) が見つかった遺伝子多型。キノン・オキシリダクターゼ。

このような解析で大事なのは、最終的なイベント発生数(発生率ではない!)。カプラン・マイヤー
グラフのSSにおける、11/32の11例という数である。この11例を得るために800例から1000例の症例を
集めている。これが妥当か評価するのが大事。もちろん数理統計ではP値はでるのだが、11例である。
う〜む。ここが50例くらいあると間違いないと思えるのだがね。

Number of deaths/total genotype counts: 83/681 (PP), 41/292 (PS) and 11/32 (SS)
NQO1*2).
Unfortunately we are unable to provide accessible alternative text for this. If you require assistance to access this image, or to obtain a text description, please contact npg@nature.com

2008年6月14日土曜日

我が家のIT

我が家には本当にこれまでオーディオビジュアルな環境がなかった。テレビは古くて旧式のブラウン管。録画は未だにテープ。CDはパソコンの小さな画面で見ている。12インチだ。オーディオは家内の希望で昨年ようやくBoseの小さなall in oneのセット(昔のカセットオーディオのようだ)を購入した。家のパソコンはiBookの最も初期のもの。家のインターネットは、モデムの「パコン・パコン・パコン」というやつだ。僕の唯一の贅沢がiPodであった。娘の宝物もiPodである。

今年になって、さすがにボクもこれでは面白くないと思った次第。それでいろいろ仕入れている。一番の核になるのはディスプレイにしたい。プラズマか液晶の37インチくらいの壁掛けを予定している。地デジチューナーは本当は専属ではなく、iMacにしたい(24インチの最新のものを購入したばかりだ)のだが、どうやらこれは無理かもしれない。東芝のコスミオは使えないのだろうか?オーディオはOnkyoかSonyでコンパクトにまとめたい。もちろんスピーカー優先である。今の家は集合住宅なので、大音量はもとより無理なのだ。それならそれで、中音量でも重厚で繊細な音質を求めたい。それと見かけが大事だ。スピーカーがどこにあるかわからないくらい控えめな存在感のものが欲しい。録画は今の段階ではそれほど大容量のものは求めない。ブルーレイもこれからだろうから・・。そもそも映画をDVDで集める時代ではないであろう。見たいときにダウンロードし、すぐに消してしまう、そんな時代だろう。NHKのアーカイブ映像が有料配布される時代になれば素晴らしいのだが、そんな時代もやがてやってくると思う。一眼レフのデジタルカメラも欲しい。レンズはタムロンがいい。広角が欲しいのだ。撮った写真は、Time capsuleのそばに置いておけば、夜の間にiPhotoにair LANでアーカイブされるような時代になるはずだ。仕事場ではタワー型のMacを使って仕事をしているが、Apple remoteとMobileMeでスケジュールやファイル管理が一元化できる時代になった。ボクはここ3年くらいiCalでスケジュール管理をしているが、これがTime caspule でiPod touchと連動するようになる。しかも無線である。楽であるなあ。

15年前はマックが面白くて月に4冊マックの月刊誌をとっていた。MacLife, MacJapan等々である。95年を境に取るのをやめた。それでもマック一本である。こんなに使い勝手のよいパソコンはないと今でも思っている。しかし、技術的にはあまり進化がないので、本を購読する意欲がなくなっていたわけだ。しかし一年くらい前からマックが技術的にも再び夢多いパソコンになってきたと再び思い始め、最近では月刊誌をよく購入する。iPhoneも日本で使える時代になったし、面白い時代になったものだ。

パソコンといえば、今欲しいと思うサービスは、新時代の論文の自動配布サービスである。ボクの嗜好を知っているサーバーが、ボクが喜ぶ論文を自動的に探してきてくれる、そんなサービスである。その判断基準はボクの論文ダウンロード履歴である。こちらに一切の面倒はかけないサービスである。ちょうどアマゾンの本のお勧めサービスと同じようなシステムが発表されることを期待している。

医学のあゆみ:o8/05/31号

久しぶりに医学専門書店を訪れた。最近は専門書店の本の品揃えは20年くらい前と比べると様変わりしている。昔は洋書が半分、いや三分の一くらいはあったのだが、今の本屋では洋書の棚は激減している。それでも定番は変わらない。内科のハリソンやセシル、小児科のネルソン、神経のメリット、血液のウイントローブ、外科のシュワルツ等々。ハリソンやザビストンは僕も最新版を持っており、時々読んでいるがやはりスタンダードな教科書は頼りがいがあると思う。様変わりしたのは和書。朝倉書店や中山書店はどこにいったのだろう?医学書院は今でも老舗であろうが、羊土社や秀潤社のような出版社が目立つなあ。とにかく本が多い。全部つきあってはいられない。面白くて役に立つ(僕にとってである)本を見つけることが、とにかく難しい。

癌の教科書を探してみた。ないんだなぁ、これが。癌は余りに範囲が広く、知識が拡散しているので、総合的な書籍にしにくくなっているのであろう。羊土社の実験医学や秀潤社の細胞工学、それに医学のあゆみなどが、トレンドを追うのには相応しいのであろうが、一般の臨床医が読むには余りに難しすぎる。僕は外科系であり消化器が専門だから、胃ガンや大腸癌などはなんとかフォローできるが、白血病や脳腫瘍、前立腺癌などはお手上げである。分野が異なるとなかなか最先端のことを理解するのが難しいのだ。

医者であれば、その時代の最先端の事柄には触れておきたいではないか。しかし、今の日本の出版事情はその方向には行っていない。日本医師会の冊子や医事新報にしてもそう。難しすぎる。僕が総説を頼まれるときも、わかりやすくとは思うが、どうしても力が入ってしまうし、最先端のことは未確定のことも多いのだが、ここらのさじ加減が実に難しい。これをよその分野のヒトが読んだときどんな印象を持つだろうと、いつも思う。

そんなことを思いながら、ふと手にとった雑誌にピンとくる座談会記事が載っていた。医学のあゆみ08年5月31日号の「臨床ゲノム研究」の巻頭記事である。中村祐輔、鎌谷直之、油谷浩幸の三氏に、司会の笹月健彦先生である。とにかく面白くためになる記事であった。笹月、中村両氏は今の日本では多型研究の権威といっていい。中村さんの研究はVNTRに始まるし、笹月さんはHLAと疾患感受性で名をはせた。鎌谷さんは臨床遺伝学の数理統計の専門家であるし、油谷さんは大規模ゲノム研究では世界の最先端を走っている一人である。去年(2007)突然のように多型研究が大規模にデータを出し始めたわけだが、これは「ありふれた病気」に対する遺伝学的挑戦の最初の成果でもある。このような研究は長くゆっくり成果を待ちたいところであるが、ぜひ一般の臨床家にも読んでいただきたい論考であり、あるいは政策決定者にも伝わって欲しい内容である。

ご一読を!

2008年6月11日水曜日

PLoSのこと

最近論文を読んでいると、PLoSという雑誌が目に付くようになった。これでもこの世界では長く生活しているから、知らない雑誌などほとんどないと自負してはいたつもりだし、見かけない雑誌は「無視していい雑誌」だと割り切っていたのだが、おかしい。おかしいのである。NatureやScienceの参考文献にも時々登場する。こんな雑誌あったけ?実はしばらく無視していたが、本日とうとう無視できなくなったのだ。個人ゲノムシークエンスが昨年話題になったが、この対象者はJD・Watsonと C・Venterのお二人である。4月17日号のNatureではワトソンの個人ゲノムシークエンスが2ヶ月で完了した、その詳細(本当は詳細ではないようだ。隠している情報は多い)が報告されている。僕は実はリアルタイムには気がついていない(なんということ!)。今日Nature Digestを読んでいて気がついた。そしてVenterのゲノムシークエンスも論文になっていることを知ったのだが、それが発表された媒体がPLoSだったわけだ。昨年の11月のことである。
PLoSは完全なWEB媒体であり、紙出版物はない。ダウンロードして読んでみたわけだ。32ページもある大論文である。英語がなんとなくゆったりしている。論文に余裕がある。図表もたっぷり付いている。これは良い媒体だと感じた。これはPublic Library of Scienceというオープンアクセス媒体なのだ。うかつなことに医学・生物学でもこのような媒体が存在していることにいままで気がついていなかったのですね。

創設は2001年頃のようである。創設者の名前をみて驚いた。Patric BrownやMike Eisenの名前が見えるではないか!このStanford軍団はMicroarrayのパイオニア達であり、非常になじみが深い。僕はこのアレイを見にスタンフォードまで行ったことがあるくらいなのだ。あのBeckmanラボに。彼らはおそらく物理学や数学の論文発表の現状を傍目に頑張っちゃたんだろうね。査読なしの論文発表は物理は数学ではもはや当たり前だから。ちょっと前のポアンカレ予想に対する世紀の解決も、かのロシアのペレルマンはウェッブでしか発表していない。これでもフィールズ賞の対象になるし、クレイのミレニアム賞金(100万ドル)の対象になるのだ。

この新しい発表形態に僕は従来の雑誌の参考文献を眺めていて気がついたというわけだ。こういう形態にはもう一雑誌(?)あって、これはBMC genetics。僕はこれがWEB onlyだということに今日初めて気がついた。この雑誌(?)も僕にとってはいつのまにか無視できない雑誌(?)の一つになっていたからな。

ところでVenterはどうして発表の場としてPLoSを選んだのだろう?
僕なりの推測ではやはり「広い場所」が提供されていることではないかと思う。Natureなどの旧来の雑誌がsupplemental dataで四苦八苦しているのに比べて、ずいぶん読みやすいのである、この形態。出稿料が2500ドル(最新情報では2750ドル)というのは高いが、マテメソのジャッジのみで掲載されるのだから、一つの新しい発行形態として認知されたといっていいのだろう。

このあたりになるとIFなんかどうでも良いわけだ。WEB of Scienceなどで、ほとんどリアルタイムに論文ごとの引用回数がわかる時代である。雑誌のIFよりも個々の論文の引用回数が重んじられる時代の到来かもしれません。(とはいえIFは14.1もあるんだね。JCIやJNCIを越えているかも。JEMやLancetに匹敵するかも)

2008年6月10日火曜日

地デジ対応のノートパソコン

実はノートパソコンを最近購入したのだが、ちょっと頑張って東芝のコスミオ(Qosmio)という機種を購入してみた。地デジチューナーが2つ付いている。室内アンテナも付いている。この地デジの機能は全くどうでもよかった、初めは。東芝というのも事務的な理由であり、本当は他のメーカーでもよかったんだが、今回は東芝以外は購入不可。そこでコスミオを購入。

素晴らしい!私は世の流れに完全に乗り遅れていたことに気がついた。単体でここまでできるのかというのが感想である。番組選びも、番組録画予約も実にスムースで簡単。日曜夜のNHKクラシック・アワーを連続で録画することにした。デジタル画面はきれいだね。

この半年くらいで、自分のパソコン環境いやIT環境は激変していっている。最初はMac Book Air。ついでiPod classic。もうすぐTime capsuleが届く。本日発表のiPhoneもおそらく買ってしまうだろう。なんといってもMobileMeというサービスがいい。これを僕は長年求めていた。

家の中のマックを統合できる。職場との連携が本当に可能となりそう。我が家には液晶テレビ
もなければ、まともなオーディオセットもないが、この際全部まとめてインストールしようと思う。

コンセプトは「無駄な買い物はしない」。本来はApple TVですべてをまとめてしまいたいところだが、それは無理なので・・はてどうしよう?僕のいう「無駄」というのは、重複ということである。Time Capsuleには1TBのHDがついているので、ここにすべてを集めて(録画も)しまいたい・・・そんな構想なのだけど、無理かな?

そんなことを考えられる時代がついにやってきたということなのだ。面白い時代だ。