線維腫というと英語でFibromaよくありそうな病態に聞こえる。fibromaってなんだろう? 固いのか柔らかいのか? 腫瘍なのか良性の反応性病変なのか?
真の線維腫は硬いのではないかと思うが、実は小生あまりお目にかかったことが無い。fibromaはそのバリアントにしか出会ったことがない。私が申し上げたいのは「soft fibroma」と呼ばれるグループのことだ。
出会った瞬間「お久しぶりですね」と言いたくなるくらい、皆よく似ている。こいつらは柔らかいのだ。触診すると気持ちがよいくらいだ(不謹慎かしらん)。でも同意されるお医者さんは多いと思うよ。固さは子供の耳たぶくらいか、もっと柔らかいかな。表面は一見ごわごわである。色はやや濃いめの肌色。幼児の陰嚢のような趣だ。あるいは紀州のやわらかい梅干しのような趣か。
今朝も一人やって来た。70歳の御婦人である。30mmくらいの大きさのものがお尻にできていてご本人には見えない。実は皮膚との交通は5mmもない。有茎性なのだが、根元は細く短いのだ。「切りましょう」といったら「切ってください」といわれた。無麻酔ではさみで切りたかったのだが、やはり一応局所麻酔してメスで切って一針かけておいた。
夜になって調べてみた。
軟性線維腫 soft fibroma
同義語:アクロコルドン(acrochordon),懸垂性線維腫(fibroma pendulum)
【症状】
頸部や腋窩,鼠径など軟らかい皮膚に生じる半球状~有茎の柔軟で常色~淡褐色調の腫瘍.表面にしわが多い(図 21.48).
- 頸部や腋窩などに糸状の小腫瘍(長さ 2 ~ 3 mm)が多発するものを、アクロコルドン
- 体幹に単発するやや大きなもの(直径 約 1 cm)を、軟性線維腫
- これがさらに巨大になり皮膚面から垂れ下がるようになったものを 懸垂性線維腫(fibroma pendulum)
と呼び,それぞれ区別している.肥満者,女性に好発し,一種の加齢変化と考えられている.
【病理所見】
膠原線維の増生が主体であり,細胞成分に乏しい.軟性線維腫では腫瘤の中に脂肪細胞を有する場合も多い.
【治療】
必要があれば茎を切除ないし凍結療法.
皮膚科の先生の中には軟性線維腫が懸垂性になるまで育て上げ、皮膚との交通が短く細くなった時点で無麻酔ではさみで切っちゃう方もいるらしい。それで治療になるという風に書いてある。書いてあるが、一方腫瘍でもある。きちんとエッヂを切り上げないで、再発しないのかしら?
2 件のコメント:
懸垂性線維腫が脇にできていて、3mmくらいの大きさで、かゆくてかいたら、化膿してしまい、今水ぶくれみたいになって赤く腫れてます。
今、消毒してNeosporinという化膿止めをつけています。
アメリカに住んでいるんですが、医者に行くべきでしょうか?
睦子さん
それはお困りでしょうね。化膿して赤く腫れているとのことですが、破れて膿が出てきているのでしょうか?
懸垂性線維腫というのは病院で診断して頂いたのでしょうか?3mmというのは小さすぎると思われますが。
病院にいくとすれば今腫れている部分の大きさと症状(痛みや熱感等々が局所的かそれよりも広いか)破れているかそれとも皮下で次第に広がっているかによると思います。
(1)破れて赤く腫れている部分が小さくなってきているなら、そのまま収まる可能性はあります。
(2)逆に水ぶくれ赤い腫脹がcm単位で大きくなっていくのなら、早めにお医者に行かれることをお奨めします。
破れていない皮下の炎症にNeosporin(これは日本にはない3剤混合の抗生物質でアメリカではポピュラーのようですね)は全く無効でしょう。破れずに皮下に膿が広がっていくなら、切開排膿が必要です。
なお腫瘤が「懸垂性線維腫」ということで上のような回答をしましたが、これが普通の「炎症性腫瘤」(たとえば化膿を伴った表皮嚢胞・・いわゆる化膿性粉瘤・・これが私たちが通常外来で最もよく出会う化膿性皮下腫瘤です)なら話がやや違ってきます。
皮膚で二次的に化膿する「腫瘤」というのは数多くあるので、本来は「お医者さんに行ってください」と言いたいところです。ただアメリカで保険のこともありますので、少し個人的な思いを含めて回答させていただきました。
良くなることを祈念します。お大事に。
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