2012年9月30日日曜日

2012年 ベルリンマラソン結果

2時間4分そこそこの記録が出ても「ふーん」という時代になりました。歴代6位(あるいは4位)の記録だというのに!


men
place number Name ac club Brutto Finish
1 2 » Mutai, Geoffrey (KEN) M30 Kenia 02:04:15 02:04:15 Add runner to 'my favourites'
2 21 » Kimetto, Dennis (KEN) MH Kenia 02:04:16 02:04:16 Add runner to 'my favourites'
3 20 » Kipsang, Geoffrey (KEN) MH Kenia 02:06:12 02:06:12 Add runner to 'my favourites'
4 4 » Kamakya, Nicholas (KEN) MH Kenia 02:08:28 02:08:28 Add runner to 'my favourites'
5 15 » Keiyo, Josphat (KEN) M30 Kenia 02:08:41 02:08:41 Add runner to 'my favourites'
7 3 » Maiyo, Jonathan (KEN) MH Kenia 02:09:19 02:09:19 Add runner to 'my favourites'
8 22 » Kiptanui, Eliud (KEN) MH Kenia 02:09:59 02:09:59 Add runner to 'my favourites'
9 5 » Keny, Felix (KEN) MH Kenia 02:10:22 02:10:22 Add runner to 'my favourites'
10 7 » Fujiwara, Masakazu (JPN) M30 Japan 02:11:31 02:11:31 Add runner to 'my favourites'
11 14 » Ishikawa, Suehiro (JPN) M30 Japan 02:11:46 02:11:46 Add runner to 'my favourites'
12 9 » Woldeamanuel, Samuel (ETH) M30 Äthiopien 02:12:33 02:12:33 Add runner to 'my favourites'
13 18 » Uribe, Jose Antonio (MEX) MH Mexico 02:12:43 02:12:43 Add runner to 'my favourites'
14 19 » Fitschen, Jan (GER) M35 TV Wattenscheid 01 02:13:10 02:13:10 Add runner to 'my favourites'
15 25 » Gamonal, Miguel (ESP) M30 Spanien 02:13:14 02:13:14 Add runner to 'my favourites'
16 17 » Gualdi, Giovanni (ITA) M30 Italien 02:13:55 02:13:55 Add runner to 'my favourites'
17 12 » Ikawa, Atsushi (JPN) MH Japan 02:14:20 02:14:20









2012年9月28日金曜日

肺扁平上皮癌の詳細なゲノム変異:nature

肺扁平上皮癌の詳細なゲノム変異のデータがnatureに報告された。

Comprehensive genomic characterization of squamous cell lung cancers 

The Cancer Genome Atlas Research Network

Nature 489, 519–525 (27 September 2012)   Received 09 March 2012   Accepted 09 July 2012   Published online 09 September 2012

肺扁平上皮がんにより全世界で年間およそ40万人が死亡する。肺扁平上皮がんのゲノム変化を包括的な解析された研究はこれまで報告がなく、このがんに対する分子標的薬はない。
  1. 本研究では肺扁平上皮がん178検体の特徴を解析し、ゲノム変化とエピゲノム変化についての包括的な全体像を示した。
  2. 肺扁平上皮がんは複雑なゲノム変化を特徴としており、1つの腫瘍につき平均で360個のエキソン変異、165か所のゲノム再編成、323か所のコピー数変化が見られた。
  3.  11個の遺伝子に統計学的有意な変異を発見し、その中には、ほぼすべての検体に見られるTP53の変異も含まれていた。
  4.  HLA-AクラスI主要組織適合遺伝子に、これまでに報告されていなかった機能喪失変異が見つかった。
  5. 著しく変化した経路には、腫瘍の34%にNFE2L2KEAP144%に扁平上皮分化遺伝子、47%にホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼ経路の遺伝子、72%にCDKN2ARB1が含まれていた。
  6. 大部分の腫瘍で治療標的候補が同定できたので、肺扁平上皮がん治療研究の新たなアプローチを提案する。
  7.  We identified a total of 48,690 non-silent mutations with a mean of 228 non-silent and 360 total exonic mutations per tumour, corresponding to a mean somatic mutation rate of 8.1 mutations per megabase (Mb) and median of 8.4 per Mb. That rate is higher than rates observed in other TCGA projects including acute myelogenous leukaemia (0.56 per Mb), breast carcinoma (1.0 per Mb), ovarian cancer(2.1 per Mb), glioblastoma multiforme(2.3 per Mb) and colorectal carcinoma (3.2 per Mb) (data as of 1 February 2012, P<2.2×10−16 by t-test or Wilcoxon’s rank sum test for lung SQCC versus all others).
  8. We identified 10 genes with a false discovery rate (FDR) Q value <0.1: TP53, CDKN2A, PTEN, PIK3CA, KEAP1, MLL2, HLA-A, NFE2L2, NOTCH1 and RB1, all of which demonstrated robust evidence of gene expression as defined by reads per kilobase of exon model per million mapped reads (RPKM) .  


2012年9月27日木曜日

軟膏について:特にサトウザルベ

1,『亜鉛華軟膏』  第3類医薬品に分類される薬です。
 
 アクリノールなど他の成分を含まない、100%亜鉛華軟膏のみの商品です。一部の患者さんはアクリノールなどの成分が刺激になる事がある為、純粋な亜鉛 華軟膏の商品を用意しました。(ただし、白色ワセリン等も合わない過敏肌の方は、下のサトウザルベをおすすめします。)
亜鉛華軟膏は皮膚の保護作用や消炎作用が期待でき、ある程度の抗菌作用もあります。患部を掻き壊して傷などがある場合は、この軟膏が特に良いと思います。
軟膏は白色でベタつき感があるので、塗布するとしばらく肌に白色が残ります。その為顔面等に使用する場合は、帰宅後や就寝前などに使用するのに向いています。ステロイドの使用を控えたい場合などに試してみると良いでしょう。
【効能】下記皮膚疾患の収れん・消炎・緩和な防腐
      外傷、熱傷、凍傷、湿疹、皮膚炎、肛門そう痒症、白癬、面皰、せつ、よう
     その他の皮膚疾患によるびらん・潰瘍・湿潤面
【成分】1g中 局方 酸化亜鉛200mg、 局方 流動パラフィン30mg、 局方 白色軟膏 適量


亜鉛華軟膏 約60g;軟膏壺入¥840 / 500g入り¥2,940 


2,『サトウザルベ20.及びサトウザルベ10』 医薬品   製造元 佐藤製薬株式会社

サトウザルべは一般に亜鉛華軟膏の代用として使われる軟膏で、正式には亜鉛華単軟膏という薬です。


効能は亜鉛華軟膏と全く同じです。亜 鉛華軟膏との違いは軟膏基剤の成分です。亜鉛華軟膏の基剤は白色軟膏というワセリンがベースのものであるのに対し、サトウザルベは基剤にナタネ油とサラシ ミツロウという天然の素材を用いて作られていますので、上の亜鉛華軟膏より更に刺激性が低いといわれています。 

その為アトピー等のアレルギー性皮膚炎の患 者さんで添加物に特に過敏な方に使われています。乾燥性があるので、じゅくじゅくした患部や水泡を持つような湿性の肌に特に向いています。サトウザルベは 酸化亜鉛の配分量が20%の商品がスタンダードですが、最近サトウザルベ20と改名されました。
【効能】下記皮膚疾患の収れん・消炎・緩和な防腐
      外傷、熱傷、凍傷、湿疹、皮膚炎、肛門そう痒症、白癬、面皰、せつ、よう
     その他の皮膚疾患によるびらん・潰瘍・湿潤面
【成分】1g中 局方 酸化亜鉛200mg、 添加物としてサラシミツロウ、ナタネ油を含有する。


販売価格 サトウザルベ20 約63g.軟膏壺入.¥945 / 500gボトル入¥3,990 


酸化亜鉛の配分が10%のサトウザルベ10もございます。
こちらも上記サトウザルベと効能効果は同じですが、酸化亜鉛の配分濃度が半分である事からサトウザルベに較べ肌を乾かす働きがマイルドです。従って乾燥肌傾向の方にはサトウザルベ10の方がよいかもしれません。


販売価格 サトウザルベ10 約58g.軟膏壺入.¥840 / 500gボトル入¥3,150 


3,『サンホワイトP-1』        発売元 日興リカ(株) 製造元(株)コスメサイエンス


サンホワイトP-1は高度精製ワセリンです。アトピーなどで患部が乾燥しやすいタイプの方は、保湿力の強いワセリンが治療に効果的です。しかし添加物などの化学物質にアレルギーが強い方は、保湿剤として薬用の白色ワセリンでも使えないケースがしばしばあります。
このサンホワイトPー1は、白色ワセリンから刺激になる不純物を取り除いたもので、最も刺激性の少ない精製白色ワセリンとして知られているものです。白色 ワセリンが使えないような敏感肌の方には強い味方となります。また化粧品まけしやすい方では化粧オイルやリップクリームなど基礎化粧品代わりになり、お肌 のケアにも色々重宝します。赤ちゃんの敏感な肌に、ベビーオイルの代用として使うのもおすすめです。
販売価格 サンホワイトPー1.約50g.軟膏壺入.¥945 / 400gボトル入¥4,725 軟膏つぼ入りの商品は増量して価格据え置きのサービス価格です。

4,『プロペト』

白色ワセリンで精製度の高い物では、一般にプロぺトという精製ワセリンが有名です。プロペトは眼球に直接塗る事ができる純度のワセリンである為、眼軟膏の基剤として広く使われます。もちろん肌に使えば大変刺激性の低い良質なワセリンとして広くご利用いただけます。
上記のサンホワイトPー1とプロペトの2種類を比較すると、
サンホワイトPー1の方がワセリンの精製度が高く更に良品質ですが、普通肌の方では保湿軟膏や化粧油に使うのはこのプロペトで十分だと思います。アレルギー体質が強く敏感肌の方はサンホワイトPー1がおすすめですが、普通肌の方ではあまり違いがわからないと思われます。普段使うにはこのプロペトで十分な品質でしょう。
販売価格 プロペト  50g軟膏壺入¥630 / 500gボトル¥2,310 



2012年9月26日水曜日

ABC予想とラマヌジャンの分割公式

先日ABC予想という数学の難題を京都大学の望月さんという方が解決したという報道があった。もちろんこんな予想のことを小生が従前知るよしもないのであるが、この報道には心が躍った。初めてこの望月さんの業績に気が付いたのは先週のことである。あるブログで大々的に喧伝されていた。もっともそこでは彼の経歴(16歳でプリンストンに渡ったこと等々)が 驚異の的になっていたのだが。小生はABC予想についてはさっぱりであるが、それでも整数式 a + b= c からスタートする予想のようであるから、取っかかりは良い(すぐに解らなくなるが・・・)

それはそうと、この論文の価値・凄さに日本のマスコミで最初に気が付いたのが誰なのかとても興味がある。というのが論文は8月の終わりには望月氏のHPに公開されていたからである。約20日かかって突然のようにマスコミが騒ぎ始めたのは、やはりnatureのコメントがきっかけだったのだろうか?これが9月10日である。読売新聞などが報道を始めたのは20日ころである。

国内の仕事・研究にどれほどの価値があるのか客観的に評価できる人が相変わらず国内にはいないか少ないのであるな。世界を一回りして、「どうやら凄いことだったようだ」と再認識することになる。この日本のいわば弱点を小生は批判しようというのではない。長年、この世界にいて(広く科学界)、 やはり日本にはなかなか難しいものの見方のようだと嘆息するばかりである。

一旦マスコミで火が付くと、望月教授の経歴がユニークでもあったことから報道量は半端ではなかった。週末にはビートたけしの番組でピーター・フランクルが解説をしたという。ほとんどの国民には解らなくてもよいから、そのピーター・フランクルの解説(1時間半くらいかかったらしい)をNHKの教育テレビで流すべきだ。高校生や中学生の中には数万に1人くらいは興味を示す生徒がいるとも限らん。そんななかからしか、次の世代は出てこないと思うが・・如何?
これが真の教育番組であり、報道の最高の価値であろう。

そのビートたけしの番組でたけしがラマヌジャンの話をしていた。ラマヌジャンというのはインドの天才数学者であるが、実に面白い人間である。正式な教育は受けたことがないいう。いわゆる「ひらめき」「天啓」で数学を切り開くタイプの数学者である(と素数の音楽には紹介してあった)。小生が感動したのはラマヌジャンの分割公式である。

「碁石が5個あったとして、これを小山に分ける方法は何種類あるか?」 ・・・これがそもそもの発想である。
5個なら答えは7種類というのが答えである。
数が増えると急速に事態は複雑化する。
 碁石が200個なら・・・?  答えは3兆9729億9902万9388通りなのだそうだ。

問題は単純であるが、これを一般化したときの公式を無名のラマヌジャンが見出した。

次の公式は有名なのでご存じの方も多かろう。3つの得体の知れない数の関係性にぞくぞくする。



しかし次のラマヌジャンの式はもっとすごいぞ。根記号、Σ、三角関数、導関数まで登場する。これを彼は理論的に導き出したわけではどうやらなさそうである。閃いたのだとか。

もし論文にするとしたら、破格のものとなろう。そこにはintroductionとresultしか書いてない。おそらくdiscussionはない( discussionできない?)。しかし結果は(おそらく)正しい。そんな破格の論文も考えられるな。

とにかくラマヌジャンはこの公式で世にでた。イギリスのハーディという数学者の目にとまり渡英する。

ラマヌジャンの公式をじっくり眺めて欲しい。この世には本当の天才がいるということが実感できると思う。

ラマヌジャンの分割公式

2012年9月18日火曜日

ネオドバストンの増量法

 
 
 
 
レボドパとカルビドパの配合剤です。レボドパは、ドパミンに変わり、脳内に取り込まれて、不足しているドパミンを補い、パーキンソン病を改善し ます。カルビドパは、レボドパの脳への移行を高めます。パーキンソン病並びにパーキンソン症候群に伴う無動〜寡動、筋硬直、振戦に奏効し、日常生活動作を 改善します。また、その他の随伴症状も改善します。通常、パーキンソン病、パーキンソン症候群の治療に用いられます。

次のような方は使う前に必ず担当の医師と薬剤師に伝えてください。

以前に薬を使用して、かゆみ、発疹などのアレルギー症状が出たことがある。緑内障妊娠または授乳中他に薬を使っている(お互いに作用を強めたり、弱めたりする可能性もありますので、大衆薬も含めて他に使用中の医薬品に注意してください)。

用法・用量(この薬の使い方)

レボドパ未服用患者:通常、成人は1回レボドパ量として100〜125mg、1日100〜300mgから服用をはじめ、毎日または隔日に 100〜125mgずつ増量し最適量を定め維持量(標準;レボドパ量として1回200〜250mg、1日3回)とします。症状により適宜増減しますが1 日1,500mgを超えません。 レボドパ既服用患者:通常、成人はレボドパ単味製剤の服用後、少なくとも8時間の間隔をおいてから、1日維持量の約1/5量に相当するレボドパ量を目安と して初回量をきめ、1日3回に分けて服用します。以後、症状により適宜増減して最適量を定め維持量(標準;レボドパ量として1回200〜250mg、1日 3回)とします。1日1,500mgを超えません。 
 
 

2012年9月15日土曜日

2012年医学生理学賞は?

過去12年分の医学生理学賞である。赤が臨床系青が基礎系の受賞と分類した。ここしばらくは、ほぼ一年おきにそれぞれが受賞している。

2000年   神経系における情報伝達に関する発見
2001年    細胞周期における主要な制御因子の発見
2002年   「器官発生とプログラム細胞死の遺伝制御」に関する発見
2003年    核磁気共鳴画像法に関する発見
2004年   におい受容体および嗅覚系組織の発見
2005年   ヘリコバクター・ピロリ菌およびその胃炎や胃かいようにおける役割の発見
2006年   RNA干渉-二重鎖RNAによる遺伝子サイレンシング-の発見
2007年   胚性幹細胞を用いての、マウスへの特異的な遺伝子改変の導入のための諸発見
2008年  子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルスの発見・ヒト免疫不全ウイルスの発見
2009年 染色体がテロメアおよびテロメラーゼによって防御されている仕組みの発見
2010年  試験管内受精法の開発
2011年  自然免疫の活性化に関する諸発見、樹状細胞の発見とその適応免疫における役割の発見

2012年  ????
 
ゲノムプロジェクトにはノーベル賞は出ないのだろうか? ENCODEも進んでいるし、そろそろ出してもいいのでは?
ベンターに早く受賞させてやりたいものだ。

2012年9月14日金曜日

ラスカー賞 2012

Albert Lasker 2012
Basic Medical Research Award

Award Description

Michael Sheetz, James Spudich and Ronald Vale


For discoveries concerning cytoskeletal motor proteins, machines that move cargoes within cells, contract muscles, and enable cell movements.

The 2012 Albert Lasker Basic Medical Research Award honors three scientists for their discoveries concerning cytoskeletal motor proteins, machines that move cargoes within cells, contract muscles, and enable cell movements. By developing systems that allow reconstitution of motility from its constituent parts, Michael Sheetz (Columbia University), James Spudich (Stanford University School of Medicine), and Ronald Vale (University of California, San Francisco) established ways to study molecular motors in detail. These accomplishments enabled the discovery of the motor protein kinesin and unveiled the steps by which these engines convert chemical energy into mechanical work. The miniscule motors underlie numerous vital processes, and the landmark achievements of Vale, Spudich, and Sheetz are driving drug-discovery efforts aimed at cardiac problems as well as cancer.


Lasker~DeBakey
Clinical Medical Research Award

Roy Calne and Thomas E. Starzl

For the development of liver transplantation, which has restored normal life to thousands of patients with end-stage liver disease.


Lasker~Koshland
Special Achievement Award in Medical Science

Donald D. Brown and Tom Maniatis


or exceptional leadership and citizenship in biomedical science — exemplified by fundamental discoveries concerning the nature of genes; by selfless commitment to young scientists; and by disseminating revolutionary technologies to the scientific community.

ラスカー賞が発表されると、いよいよノーベル賞の季節だなと思うのだ。今年のラスカーは運動モーターの話である。これがノーベル賞になると日本人の入り込む余地があるような気がする。テーマとしてはノーベル賞に相応しいと思う。しかし、医学生理学賞としてはカーンとスターツルの肝移植コンビの方が際だつな。こちらの臨床チームが獲得する方が、ずっと楽しいと思うぞ。それにしてもカーンなんて名前、本当に久しぶりに目にした。20年ぶりくらいかしら、くらくらした。

マニアティスは「Molecular cloning」のヒト(だけではもちろんないが)で有名だ。

落語110演目を聴いて・・・

この3ヶ月で落語を110演目ほど聴いた。ほとんどが行き帰りの運転中である。通勤時間で丁度一演目聴けるので、iPodに詰め込んだ落語を毎日のように聴いた。落語の演目がどれくらいあるのか知らないが、よく聴かれる演目の3分の一くらいは聴いたことになるのではないだろうか?

若い頃に聴いたことのある落語も含めて、まさに初心者として楽しんでいる。いわゆる古典が中心である。出来るだけ落語の本、紹介本は読まないようにした。案内本は読まないようにしたが、ただ一冊、

古典落語CDの名盤 (光文社新書) [新書]京須 偕充

が本棚にあったので、これは参考にした。この本に出てくる落語は全部聴いてみたいと思ったのだ。

だいたい、CD屋に行って片っ端から借りてくるので、あれだけ演目があるように思えるCD屋の棚であるが、5〜6回も行くと、だんだん目新しくなくなってくるのである。一回に5枚ずつ借りていた。CD屋も3軒ほどハシゴしているが、段々借りようと思うCDが減ってくる今日このごろである。この中からベスト20を選んでみた。全く順不同であり、番号には軽重がない。こうやって聴いていると、自分の好みがよくわかる。

この20演目の中で、小生の今のベスト3は志ん朝の「百年目」、圓生の「文七元結」と三遊亭金馬「藪入り」である。
私は「人情話」に弱いということがよくわかる。「藪入り」はだね、ガキを持つ親なら、とりあえず聴いてみてよ・・といいたくなる。
「百年目」という話は、これは弟子を持つ親分なら、とりあえす聴いてみてよ・・といいたい。
  1. 桂文朝「三方一両損」
  2. 桂米朝「らくだ」
  3. 桂米朝「算段の平兵衛」
  4. 三遊亭金馬「藪入り」
  5. 三遊亭圓楽「目黒のさんま」
  6. 志の輔「しじみ売り」
  7. 志ん朝「黄金餅」
  8. 志ん朝「お見立て」
  9. 志ん朝「付き馬」
  10. 志ん朝「井戸の茶碗」
  11. 志ん朝「船徳 」
  12. 志ん朝「茶金」
  13. 志ん朝「百年目 」
  14. 志ん朝「明烏 」
  15. 志ん朝『唐茄子屋政談』
  16. 小さん「千早ふる」
  17. 小三治「味噌蔵」
  18. 圓生「文七元結」
  19. 圓生「庖丁」
  20. 圓生「蛙茶番」


ついでにベスト50までだと(実際は48であるが)

  1. 桂三枝「ゴルフ夜明け前」
  2. 桂三枝「生中継・源平」
  3. 桂文枝「愛宕山」
  4. 桂文朝「真田小僧」
  5. 三遊亭金馬「たがや」
  6. 志の輔「へっつい幽霊」
  7. 志の輔「死神」
  8. 志の輔「雛鍔」
  9. 志ん生「火焔太鼓」
  10. 志ん朝「おかめ団子」
  11. 志ん朝「大工調べ」
  12. 志ん朝『御慶』
  13. 志ん朝『崇徳院』
  14. 小さん「ちりとてちん」
  15. 小さん「一目あがり」
  16. 小さん「紙入れ」
  17. 小さん「長者番付」
  18. 小三治「厩火事」
  19. 小三治「粗忽の釘」
  20. 小三治「富久」
  21. 立川談笑「金明竹」
  22. 圓歌「馬大家」
  23. 圓楽「小間物屋政談」
  24. 圓生「夏の医者」
  25. 圓生「掛取万才」
  26. 圓生「鰍沢」
  27. 圓生「佐々木政談」
  28. 圓生「百川」

これだけストックがあれば、しばらくは楽しめるが、まだあと100演目くらいは聴いてみようと思っている今日この頃である。

落語は面白い。

2012年9月12日水曜日

Genome Research誌からENCODE関連論文3つ

Encodeに関連したGenome Research誌からいくつか・・・

September 11, 2012

    Genome Res. Published in Advance September 11, 2012

Extensive somatic L1 retrotransposition in colorectal tumors

Abstract

L1 retrotransposons comprise 17% of the human genome, and are its only autonomous mobile elements. Although L1-induced insertional mutagenesis causes Mendelian disease, their mutagenic load in cancer has been elusive. Using L1-targeted re-sequencing of 16 colorectal tumor and matched normal DNAs, we found that certain cancers were excessively mutagenized by human-specific L1s, while no verifiable insertions were present in normal tissues. We confirmed de novo L1 insertions in malignancy by both validating and sequencing 69/107 tumor-specific insertions and retrieving both 5' and 3' junctions for 35. In contrast to germline polymorphic L1s, all insertions were severely 5' truncated. Validated insertion numbers varied from up to 17 in some tumors to none in 3 others, and correlated with the age of the patients. Numerous genes with a role in tumorigenesis were targeted, including ODZ3, ROBO2, PTPRM, PCM1, and CDH11. Thus, somatic retrotransposition may play an etiologic role in colorectal cancer.

  • Received July 2, 2012.
  • Accepted August 30, 2012.


ChIP-seq guidelines and practices of the ENCODE and modENCODE consortia

  • Stephen G. Landt,
  • Georgi K. Marinov,
  • Anshul Kundaje,
  • Pouya Kheradpour,
  • Florencia Pauli,
  • Serafim Batzoglou,
  • Bradley E. Bernstein,
  • Peter Bickel,
  • James B. Brown,
  • Philip Cayting,
  • Yiwen Chen,
  • Gilberto DeSalvo,
  • Charles Epstein,
  • Katherine I. Fisher-Aylor,
  • Ghia Euskirchen,
  • Mark Gerstein,
  • Jason Gertz,
  • Alexander J. Hartemink,
  • Michael M. Hoffman,
  • Vishwanath R. Iyer,
  • Youngsook L. Jung,
  • Subhradip Karmakar,
  • Manolis Kellis,
  • Peter V. Kharchenko,
  • Qunhua Li,
  • Tao Liu,
  • X. Shirley Liu,
  • Lijia Ma,
  • Aleksandar Milosavljevic,
  • Richard M. Myers,
  • Peter J. Park,
  • Michael J. Pazin,
  • Marc D. Perry,
  • Debasish Raha,
  • Timothy E. Reddy,
  • Joel Rozowsky,
  • Noam Shoresh,
  • Arend Sidow,
  • Matthew Slattery,
  • John A. Stamatoyannopoulos,
  • Michael Y. Tolstorukov,
  • Kevin P. White,
  • Simon Xi,
  • Peggy J. Farnham,
  • Jason D. Lieb,
  • Barbara J. Wold,
  • and Michael Snyder
Genome Res. September 2012 22: 1813-1831; doi:10.1101/gr.136184.111

Abstract

Chromatin immunoprecipitation (ChIP) followed by high-throughput DNA sequencing (ChIP-seq) has become a valuable and widely used approach for mapping the genomic location of transcription-factor binding and histone modifications in living cells. Despite its widespread use, there are considerable differences in how these experiments are conducted, how the results are scored and evaluated for quality, and how the data and metadata are archived for public use. These practices affect the quality and utility of any global ChIP experiment. Through our experience in performing ChIP-seq experiments, the ENCODE and modENCODE consortia have developed a set of working standards and guidelines for ChIP experiments that are updated routinely. The current guidelines address antibody validation, experimental replication, sequencing depth, data and metadata reporting, and data quality assessment. We discuss how ChIP quality, assessed in these ways, affects different uses of ChIP-seq data. All data sets used in the analysis have been deposited for public viewing and downloading at the ENCODE (http://encodeproject.org/ENCODE/) and modENCODE (http://www.modencode.org/) portals.



RNA editing in the human ENCODE RNA-seq data
  • Eddie Park,
  • Brian Williams,
  • Barbara J. Wold,
  • and Ali Mortazavi
Genome Res. September 2012 22: 1626-1633; doi:10.1101/gr.134957.111

Abstract

RNA-seq data can be mined for sequence differences relative to the reference genome to identify both genomic SNPs and RNA editing events. We analyzed the long, polyA-selected, unstranded, deeply sequenced RNA-seq data from the ENCODE Project across 14 human cell lines for candidate RNA editing events. On average, 43% of the RNA sequencing variants that are not in dbSNP and are within gene boundaries are A-to-G(I) RNA editing candidates. The vast majority of A-to-G(I) edits are located in introns and 3′ UTRs, with only 123 located in protein-coding sequence. In contrast, the majority of non–A-to-G variants (60%–80%) map near exon boundaries and have the characteristics of splice-mapping artifacts. After filtering out all candidates with evidence of private genomic variation using genome resequencing or ChIP-seq data, we find that up to 85% of the high-confidence RNA variants are A-to-G(I) editing candidates. Genes with A-to-G(I) edits are enriched in Gene Ontology terms involving cell division, viral defense, and translation. The distribution and character of the remaining non–A-to-G variants closely resemble known SNPs. We find no reproducible A-to-G(I) edits that result in nonsynonymous substitutions in all three lymphoblastoid cell lines in our study, unlike RNA editing in the brain. Given that only a fraction of sites are reproducibly edited in multiple cell lines and that we find a stronger association of editing and specific genes suggests that the editing of the transcript is more important than the editing of any individual site.


2012年9月10日月曜日

サルモネラの健康保菌者



最近我が外来にサルモネラやO157が陽性の若者がよく現れる。運の悪いことに彼らはなぜか決まって食品業界従事者である。
それで余りにも良く保健所に連絡するので、最近小生は保健所の皆さんとすっかり仲良くなってしまった。

これが陰性化するまで除菌しないと再度就業が出来ないというのが現実のようである。O157の場合は比較的厳格であるが(臨床的にはそこまで厳格ではない3類扱いであるが)、ではサルモネラはいかがであろう?これが国の明確な除菌基準を見つけるのがなかなか難しい。

それでも検査陰性になるまで除菌することになる。ニューキノロンかフォスミシンがよく使われる。

サルモネラの健康保菌者と呼ばれる人たちが確かにいることがよくわかる今日この頃である。どれくらいいるのであろうか「健康保菌者」?

東京都予防医学協会年報 2009年版 第38号

定期的な便検査が義務づけられている食料品従事者によるサルモネラ、赤痢、O157の検出状況
2007年では16例 0.03%が陽性であるがこれがいわゆる「健康保菌者」である。
O157ではこの10分の1の頻度である。
























もうひとつ別のデータ
































ついでに分離されたサルモネラの血清型




















最後にサルモネラによる死亡者



2012年9月7日金曜日

ENCODEによる30論文:遺伝子の数は20,687個などなど

ENCODE project による論文報告が昨日より始まったようだ。昨朝の朝日新聞で知った。30編の論文群として一挙に公開されたため、すさまじい物量と内容である。とっかかりとしてサイエンスの論評が分かりやすいが、目に付くデータとしては

  1. 蛋白をコードする遺伝子数:20,687個

  2. 偽遺伝子数:11,224個
        (ある種の細胞、特定の個人ではactive【発現するpseudogeneという意味】であることが知られているものもある)

  3. RNA遺伝子数:18,400個
          (8,800個のsmall RNA分子、9,600個のnon-coding RNA分子【最低200bp以上】)

  4. ゲノムの80%は機能領域なのであった

  5. ゲノムの76%はtranscribeされるとのこと 
          (こうなると、うかつに’transcribe’を日本語に翻訳できないなぁ)


意味深長な発言がある。

  • As a result of ENCODE, Gingeras and others argue that the fundamental unit of the genome and the basic unit of heredity should be the transcript—the piece of RNA decoded from DNA—and not the gene. “The project has played an important role in changing our concept of the gene,” Stamatoyannopoulos says.

  • 「遺伝の基本単位、あるいはゲノムの基礎単位はゲノム遺伝子ではなく、その転写物とすべきであろう」・・・・・とでも言いたいのか??
  • まさにパラダイムの転換となるかもしれないお言葉だが、少し慎重に推移を見守りたい。

ENCODE project のホームページによると

  1. Nature: 6
  2. Genome Research 18
  3. Genome Biology 6
  • 以上で合計30編となる。とても全貌はつかめない。NatureやScienceのレビューやショートストーリーで概略を追いたいが、要領よく把握するのはなかなか難しい。しばらく時間がかかりそうだ。
5 September 2012 - ENCODE results published in Nature, Science and other journals

The results of the ENCODE project were published today in a coordinated set of 30 papers published in multiple journals. These publications are the result of cross-consortium integrative analysis, covering more than 4 million regulatory regions in the human genome mapped as part of ENCODE. The coordinated publication set includes one main integrative paper and five other papers in the journal Nature; 18 papers in Genome Research; and six papers in Genome Biology. The ENCODE data are so complex that the three journals have developed a pioneering way to present the information in an integrated form they term "threads." Since the same topics were addressed in different ways in different papers, the Nature ENCODE website was developed to allow readers to follow a topic through all of the papers in the ENCODE publication set. In addition to these publications, six review articles are being published in the Journal of Biological Chemistry, and other affiliated papers in Science, Cell, and other journals. The new Integrative Analysis page on this portal provides links and descriptive material for these publications and related analysis resources.

2012年9月1日土曜日

LINE-1の話ーその(1)

Nucl. Acids Res. (1980) 8 (24): 6113-6128.

A family of long reiterated DNA sequences, one copy of which is next to the human beta globin gene

J.W. Adams*, R.E. Kaufman*, P.J. Kretschmer+, M. Harrison+ and A.W. Nienhuis

*Clinical Hematology Branch, National Heart, Lung and Blood Institute, National Institutes of Health Bethesda, MD 20205, USA
+Laboratory of Molecular Hematology, National Heart, Lung and Blood Institute, National Institutes of Health Bethesda, MD 20205, USA

LINEの最も初期の(最初の?)論文の一つはこれ↑である。1980年である。シークエンス技術が漸く芽生えたかどうかという時期である。技術的にはサザン法が全盛のころである。よく見つかった もんだと思うが、しかしヒトのゲノムDNAを探索していた研究者にとっては、やがてうるさくてしょうがないほどよく見る、うっとおしい配列単位となってきたはずだ。どこにでも顔を出す目障りな変なやつ。ヒトゲノムは30億塩基あるがこの16%はLINEの配列で占められていることが今では分かっている。ヒトゲノム中で約5億塩基はLINEの配列なのだ。これらの配列は全くのジャンク(くず)と呼ばれてきたし、ほとんど存在が意味不明なのである。なのに、ヒトの正確な DNA複製機構を利用して、この「くず配列」は子孫に正確に伝えられ続けていくのだ、5億塩基も!

この意味不明の配列に取り憑かれた人々がいる(小生もその一人だ)。まだ知られていない生命の神秘のヒントがありそうだと思う訳だ。反復配列にはいろいろあるが、LINEは相当高等生物にならないと出現しない。それならば高等で複雑な生命体へのヒントになりやせぬか。目の前に「意味不明ながら興味津々のパターン配列が5億塩基もあるのである」小生など興奮したものだ。  

LINEの話はそれほど難しい話ではないが、それでも順を追って話さないとわからないかもしれない。試みよう。

  1. LINEというのはゲノム反復配列の一種であり、数百塩基から時に数千塩基の長さのお互いによく似た遺伝子配列である。基本モチーフがありその最大長は6.5kbであるが、多くはそれほど長くはなく、基本モチーフの大部分が欠け去った残りのゴミのような配列(しかもその配列は変異を山のように抱え込んでいるので、元のモチーフとはかなり変わっている)である。ゲノムをシークエンスしていくと、数キロおきにそのコピーが現れる。またかと思うくらいその数は多い。反復配列と言われる由縁である。

  2. 理解を容易にする為に、まずactive LINEの話をしておこう。

    LINEには完全長のフルシークエンスがあって、ゲノムサイズでは6.5kbであることが知られている。しかもそいつらは発現するのである。完全長の発現 可能なLINEのことをactive LINEと呼んでいる。そう、遺伝子なのである。しかも全ゲノムン中に散在している。2個ではないのかって?そうです。複数ある。正確な数は今もって不明 だが、60コピーくらいはヒトゲノムにあるようである(LINEの大家であったKazazian教授の90年代の後半の総説には30個内外と書いてあった が、最近の総説では60個くらいと記述がある。


  3. active LINEは何をするのか?

    大きく2つの領域からなっている(エクソンみたいだ)。一方はウイルスゲノム様の構造をもつ。他方の配列が問題である。ヒトの細胞内で発現してほしくない蛋白なのだ。これ「毒素配列」といってもよい。なぜならこれは「逆転写酵素」配列なのだから。この逆転写酵素は発現したactive LINE RNAから自分自身のDNAを複製するのである。このコピーは既にゲノム中に散在するLINE配列と相同性が高いので、この相同性をもって別の場所にDNA配列を挿入する。


  4. 自分自身はそのままの構造を保ちながら、自分のコピーを周りのゲノム中にまき散らすシステムを形成しているわけだ。

  5. 逆転写酵素活性をもつ蛋白はヒトでは2種類しか知られていない。一つはテロメラーゼであり、今ひとつがLINEというわけだ。毒素であると前述した。この酵素が周りのmRNAを次々にDNA化したとしたら、細胞内はわけの分からない無秩序な世界になっていただろう。セントラルドグマの破綻なのだから。だから毒なのだ。

  6. 幸いこのLINEの「逆転写酵素」はsis-actingであると説明されている。すぐ近傍に存在する遺伝子配列(つまりLINEのRNA転写物)しか基質にならないというわけだ。他のRNAは相手をするには遠すぎるということ。遠くにある配列も相手にできるということをtrans-actingという。普通のDNA polymeraseはtrans-actingな酵素だ。

  7. しかしこれもどこまで保証されているのかだれも知らない。LINEが極めて活発に転写されている細胞があったとしたら、LINE以外の遺伝子が影響をうけていることも「理屈」ではありうる。

  8. さて、自分自身はそのままの構造を保ちながら、自分のコピーを周りのゲノム中にまき散らすシステムと前述したが、これがゲノム中にLINEがこれほど多く存在する理由だ。数百万年以上かけてゲノムにコピーがまき散らされたということである。そして埋め込まれたコピーは数百万年以上かかって、短く刈り取られていった(変異脱落していった)。active LINEはそれほどコピー数を増やせなかったようである。

  9. なぜactiveは少ないのか? 一つの理由は「逆転写酵素」の精度が低いからであろう。もう一つはプロモーターの問題かもしれない。

  10. 以上が現代のホモサピエンスが16% 5億塩基のLINE 配列を抱えている説明(とされるもの)である。誰も見た人はいないのが、この世界の通例であるが、おそらくこんなものであろうと小生も思います。