2014年4月23日水曜日

深部静脈血栓症:極初期治療の考え方

急性期深部静脈血栓症の考え方

深部静脈血栓症では,常に肺血栓塞栓症を念頭におき,診断・治療を選択する.急性期では,以下の4点を考慮する.
  1. 第一に,血栓の存在を確認して(血栓の判定),中枢進展を阻止する治療を開始する。
  2. 第二に,血栓の範囲を確定して(病型の判定),血栓後症候群を軽減する治療を選択する.
  3. 第三に,血栓の中枢端を評価して(塞栓源の判定),塞栓を阻止する治療を選択する.
  4. 第四に,静脈還流障害を評価して(重症度の判定),急性還流障害が改善する治療を選択する.
繰り返す

下肢深部静脈血栓症の治療目標は,(1)血栓症の進展や再発の予防,(2)肺血栓塞栓症の予防,(3)早期,晩期後遺症の軽減である. 

治療すれば血栓は溶けるのか?

深部静脈が血栓により完全閉塞した場合でも,時間経過とともに血栓が溶解して再疎通することが観察される.欧米の報告であるが,発症後7日で44%に,90日で100%に再疎通が観察され,血栓による完全閉塞例で発症後6週間以内に87%に再疎通が見られた

最も理想的な治療法とは?

肺血栓塞栓症の合併を防ぎ,速やかに静脈血栓を除去ないし溶解させ,再発を防ぐことにより,静脈の開存性を確保して静脈弁機能を温存できる方法である.

治療は?

ヘパリン

ヘパリンの抗凝固作用は各個人で大きく異なり,APTT(activated partial thromboplasmin time)や血中濃度でモニターする必要がある.

欧米ではAPTT値が1.5から2.5倍に延長するように,初回ヘパリン5,000単位静注後,40,000単位を24時間で持続点滴することが推奨されている.我が国においては詳細な検討はないが,欧米に準じて,APTT値の1.5から2.5倍延長を目標とするのが適当であろう(ClassⅠ).

初回5,000単位静注後,10,000から15,000単位を24時間で持続点滴(400から625単位/時間)し,4 ~ 6時間後にAPTT値を測定,その後は1日1回測定して増減する.ヘパリンの半減期は約1時間である.


【勧告の程度】
  1. 急性深部静脈血栓症治療におけるヘパリンとワルファリンの併用:ClassⅠ
  2. 急性深部静脈血栓症治療におけるヘパリンコントロールの目標APTT値 1.5から2.5倍延長: ClassⅠ
  3. 急性深部静脈血栓症治療におけるワルファリンコントロールの目標PT-INR値 2.0(1.5から2.5):ClassⅡb
  4. 急性深部静脈血栓症治療における全身的血栓溶解療法:ClassⅡ a


以上「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)」より


   ガイドライン_ダイジェスト版 

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