2014年4月11日金曜日

ついにEpistasisの降臨か・・・

Nature 508, 249–253(10 April 2014) 

Received 20 September 2013
Accepted 07 January 2014
Published online 26 February 2014

このブログをお読みになる方でブログ作者名のEpistasisに造詣の深い方は余りおられないと思います。作者自身も遠い過去のある印象的な出来事がなければ、Epistasisなんて覚えていない。その出来事の詳細は当時は理解できなかったけど、ボクに「Epistasis」を熱く語ってくれたある研究者のことが忘れられないのと、それ以来「Epistasis」自体への興味が尽きることなく今日まで続いているので自戒を込めて作者名として使っている。

小生はかつてSNPsの研究をしたことがあるが、そこで得られる(P = 5.56×10−31というような数字の持つ意味に打ちのめされ続けた覚えがある。最初は「凄い」これは本物の疾患感受性であると思うのだ誰でも。しかしそんな多型が数多く見つかるにつけ、段々「これは一体なんなのだ」という戸惑いが生まれてくる。この戸惑いはそのうち「結局自然の真の姿なんて早々簡単にわかるのものではないのだろうな」という敗北感に繋がり、そして虚無感を感じ始める。

だけどボクはよくはわからないけど、この「Epistasis」にこそ眞実への鍵があるような思いがしてならなかった。そのエピスタシスであるがヒトの遺伝学で明瞭な形で語られることは、これまで多くはなかった。もちろん教科書には記述はある。古典遺伝学的な非常に高邁な概念である。

その高邁な世界が、地上界に降りてくる兆しが以下の論文であろう。そんな世界がようやく現実に論文の形で現れたのが下の論文であろうと思う。Big Data解析がエピスタシス研究とパラレルに進むことを愉しみに待ちたい。



遺伝:転写に影響するヒトのエピスタシスの検出と再現


Detection and replication of epistasis influencing transcription in humans

Gibran Hemani, Konstantin Shakhbazov, Harm-Jan Westra, Tonu Esko, Anjali K. Henders, Allan F. McRae, Jian Yang, Greg Gibson, Nicholas G. Martin, Andres Metspalu, Lude Franke, Grant W. Montgomery, Peter M. Visscher and Joseph E. Powell






エピスタシスは、ある形質に1か所の多型が及ぼす効果が、ゲノム中に存在する他の多型に依存して決まる現象のことである。エピスタシスが複雑な形質にどの 程度影響し、このような形質に見られる差異にどの程度寄与しているかは、進化とヒト遺伝学の根本問題の1つである。エピスタシスについてはモデル生物での 人為的遺伝子操作研究で度々実証されており、また、ヒト以外の生物種でいくつかの実例も報告されてはいるが、ヒトの形質の自然多型におけるエピスタシスの 例はほとんど明らかになっていない。経験的に見つかることがないのは、単に複雑な形質の遺伝的制御でエピスタシスの発生率が低いためとも考えられるが、別 な見方として、統計上の問題、そして計算上の問題からこれまでの技術では検出が難し過ぎたからだとも考えられる。今回我々は、高度な計算処理と遺伝子発現 研究デザインを用いて、ヒトの一般的な一塩基多型(SNP)間にもエピスタシスの実例が多く存在することを明らかにする。末梢血で7,339の遺伝子発現 レベルを測定した846人からなるコホートで、我々は、238個の遺伝子の発現に影響する一般的なSNP間での有意なペア間相互作用を501発見した(P < 2.91×10−16)。これらの相互作用について、2つの独立したデータセットを用いて再現解析を行ったところ、エピスタシスの影響の傾向が一致し(P = 5.56×10−31)、相互作用のP値が向上し、内輪に見積もった閾値P < 9.98×10−5から見ても、30の相互作用は有意であることが分かった。これらの遺伝的相互作用のうち44は、染色体の物理的相互作用が知られている5メガ塩基の領域中に位置していた(P = 1.8×10−10)。 3個以上のSNPからなるエピスタシスネットワークが129個の遺伝子の発現レベルに影響を及ぼしており、1個のシスに作用するSNPが、数個のトランス に作用するSNPによって調節されている。例えば、MBNL1はrs13069559における相加作用によって影響を受けるが、rs13069559自体 が14個の異なった染色体上のトランスに作用するSNPによって隠され、各シス–トランス相互作用はほぼ同一の遺伝子型–表現型マップとなる。本研究は、 離れた場所にある一般的多型の相互作用がヒトの形質に影響を及ぼす例が多くあることを、我々の知るかぎりで初めて証明するものである。

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