当院では肝胆膵腫瘍外科はやらないのだが、それでも年間ある程度の数の患者は現れるのだ。昨年は紹介して良かったと思ったのが8割くらいであり、これらはいずれも開腹である。
腹腔鏡下肝切除については世の中の流れがよく読めないのである。昨今では学会に行くと腹腔鏡がメインなのだ。そのように見えてしまう。かつて直腸癌や食道癌が開腹開胸から腹腔鏡・胸腔鏡にコペ転したように、すでに腹腔鏡がメインと考える外科医(肝胆膵外科医)が多いのだろうか?過渡期だけによくわからないのが正直なところだった。
こういう時に信頼できると思っている医師の一言は大きい。
新年号の「医事新報」には炉辺閑話が山のように掲載されている。この中に日本大学の高山忠利教授の意見が述べられていて目を引いた。題して「腹腔鏡手術の危うさ」である。高山さんは小生のことを知らないが、小生は高山さんが国立がんセンターにいるころ何度かセミナーや術前カンファや術後病理カンファでお目にかかったことがあるので良く知っている(ような気がしてならない)。先程も書いたが考え方が信頼できると思っていた。
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その先生の書かれた「腹腔鏡下手術の危うさ」を読んで自分の感覚がまだまだ正しいのだと安心した。
一部抜粋すると
肝胆膵癌に対する腹腔鏡下手術についてコメントを求められるたび、私はいつもこう答えている。「易しい問題を敢えて難しく解いている、しかも高いコストをかけて」と。
あるいは
私に言わせれば腹腔鏡下肝切除のクオリティーは開腹に比べ格段に低く、先進的どころか後進的な状況であると思っている。
これだけ読めば充分であろう。
今年も肝胆膵腫瘍は腹腔鏡で行なうことに慎重な外科医を選んで紹介しようと思う。ボクが先端技術を否定するものではないのは、このブログ全般を読めばおわかりであろうが、自分のしない、できない技術については鋭敏で有りたいと思う。紹介するからには責任を取りたいと考えるからである。
いずれは腹腔鏡で行なうことに積極的になれる時代が来ることを期待してはいるのだが・・・・
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