帯状疱疹が臀部から大腿に発現する人の中には膀胱直腸障害を併発する人がいることは頭のなかに入っているが、実際にそのような人をみることはほとんどこれまでなかった。
先日の86才女性は右下腿の痛みと疱疹で入院してきたが、痛みが強く歩行が覚束ない。入院二日目看護師が「おしっこが出ていない」と教えてくれる。おむつにしていたのだが痕跡がないのだ。下腹部を触診するが膀胱が張っているのかどうかよくわからない。そこで導尿をすると500ml出てきた。すでに過緊張であろうから、そのままバルーンを入れた。
2日後に痛みが減り可動域が増したためバルーンを抜いたが今度は尿意がない。全くない。一週間に一回くる泌尿器科医に「もしかしてヘルペスによる膀直障害ではないでしょうね?」と診察を受けてもらうと「まず間違いなくそうでしょう。一ヶ月くらいはかかるでしょうね」と言われた。
帯状疱疹だけなら一週間の入院なのに、それから約一月半かかった。薬と導尿と膀胱の用手圧迫でなんとか一ヶ月で尿意が戻ってきたときはほっとしましたぜ。
尿意というのは実に繊細であり、あっという間に尿意は失われていくのだ。人によっては永久に戻らず自己導尿かあるいは持続バルーン導尿となる。
文献によると帯状疱疹後の神経因性膀胱による膀胱障害はそれほど多くはないが、数例レベルをまとめた報告が散見される。予後は比較的良いようだが、大事なのは早めに気がついてあげることだ。溜まりに溜まった尿による膀胱の過緊張状態は最悪であろう。
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