2017年1月16日月曜日

握手で術前評価をするって流行しているの・・・?

最近肝胆膵の研究会(結構マニアックな会)に出席した。出席者のメンツを眺めて、なぜ小生に招待状が来たのか実に不思議だったが、普通呼ばれることのないマニアックな研究会は面白かった。

肝胆膵や食道の激しい手術では術前の栄養状態や基礎体力が手術の成功、合併症の予防、長期予後に大きく影響するのは昔も今も変わらない。その最新の考え方を教えてくれたが、これはなにも肝胆膵に限らず、一般の病気にも敷衍できる内容であったため、とても役に立つと考えられれた。

まず外来初診時の別れ際に患者さんと握手をするののだ。術前その人がどれくらい握力があるのか、それによって術前評価をするというのが最近の流行なんですって。

キーワードは以下だ。


  1. 握力
  2. 筋肉量
  3. 歩行速度
  4. サルコペニア
  5. 術後合併症
  6. プレハビリテーション

 まずサルコペニアでについて少々・・・・・

「サルコペニアとは、加齢と関連して筋肉量が低下し、筋力や身体機能の低下が起こる症候群」 と呼ばれている。「サルコが筋肉を意味」しペニアが減少」である。これが手術の成功、合併症の予防、長期予後に大きく影響すると言われている。栄養評価法にはこれまで色々あったし、王道を生き延びているものもあれば、ほそぼそと生き残っているものもあれば、消えてしまったものもある。上腕三頭筋を評価したり、プレアルブミンを評価していた時代もあったが現在ではどうなっただろう?

21世紀はサルコペニアが流行している。この評価は筋肉量の評価であるから電気的なインピーダンスを測定する機械(脂肪量を評価する体重計があるが、あの筋肉バージョン)もあれば、もっと原始的にCT断面で評価する方法もあるが、講演では体液量や炎症に影響を受けないものとして CT断面が一番良いとの評価であった。第三腰椎の下縁レベルの横断面で実際の筋肉面積を測定するのだ。













茶色の部分が筋肉である


運動能力も大事だ。どれくらいのスピードで歩けるか?あるいはどれくらいの筋力があるのか。歩行速度の測定は若い世代にはいいけど、本当のターゲットであるお年寄りはいろんな要素(例えば脳血管後遺症)があるから、体力・栄養状態を歩行速度でみるのは困難だ。

筋肉量もCT撮るとなると測定がやや煩雑。この筋肉量やサルコペニアがその人の握力には、かなりの相関があることが知られるようになり、いまや時代の最先端は「握力」なんですって。

外来で患者殿に最初にお会いしたときに握手をすることで「この患者さん、意外にいけるかも」と思ったりするのだそうだ。

実際にはちゃんとKgで評価を行い、男子で26kg女子で18kg以下だと サルコペニアを強く疑い、先に述べたCT評価に移る。













男子で握力が26kg以上あれば一定量の筋肉量があるとみなされ、これはすなわちサルコペニアがないとみなされる。そんなひとは術後経過が良好なのだとか。

逆に 男子で握力が26kg以下であれば、CTで実際の筋量を評価し、術前に栄養と運動でこの値を上げる必要があるとのこと。DPCで入院期間の短縮がうるさい時代ではあるが、こんな患者さんには術前一月くらいはあの手この手で基礎体力の底上げをはかるべしだ。

術後運動機能の急速な回復をはかることを「リハビリテーション」というが、上述術前の基礎体力の底上げをはかる試みのことを・・・

 プレハビリテーション


というのだそうだ。 


「握力」や「L3レベルでのCT筋肉量測定」や「歩行速度評価」が大事であり、必要ならば術前「プレリハビリテーション 」をしっかり行なうべし。これが21世紀の周術期管理のかなめなんですね。

0 件のコメント: