2019年2月20日水曜日

肝臓専門医は30年たって輪廻・・・?

C型肝炎の治療の劇的変遷については専門外とはいえ医学の進歩を感じてきた。私は過去20年くらいに渡り看護学校での消化器病・外科の講義を続けているが、肝炎のスライド内容を毎年のように更新していた時期がある。インターフェロン・フリー療法が現れた2014年〜15年は勉強することが多すぎて大変だったが、楽しかった。友人の肝臓外科医たちは「肝臓がんが激減するからこれから肝臓外科は大変だよ」「NASH発がんがこれからのテーマだけど発生数は決して多くない」などと話をしてくれた。

ボクは台湾の「リンの鉗子」を実際に肝切除に用いていた時代に研修医をやった世代である。「FInger Fracture Method」が導入されていた時代の研修医である。CUSAがなく、術中肝エコーがなく、術中出血量の多寡よりも手術時間にこだわる時代に助手を務めた世代である。だから術後肝不全・黄疸に大変苦労した。そんな時代に苦労した助手世代が、出血量にこだわり、丁寧に止血し、凍結血漿を再評価し、新しいデバイスを積極的に導入し、なにより系統肝解剖を「再発見」し、今の肝臓外科を作り上げ、次に肝移植に乗り出し、大変な苦労の末確固たる成果をあげてきたのである。

いま肝臓専門医が減りつつあるというちょと驚く記事を見つけた。この流れはホンモノなのだね。患者さんにとっては素晴らしいことであり、日本の肝臓病学の成果なのだろう。

武蔵野赤十字の泉並木先生の記事を一部ノートしてみる。


肝臓専門医の未来は?

――では、肝臓専門医の今後は?
 C型肝炎が治せる時代になったおかげで患者さんの数が減り、肝臓専門医も減りました。ただ、専門医の数が減ったせいか、私どもの病院に紹介されてくる肝臓癌の症例が減ったという実感はありません。
 最近、肝臓癌で紹介されてくる方は、HCVもB型肝炎ウイルスも持っておらず、脂肪肝、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)から癌に進行した症例が多い。脂肪肝で癌になる危険性の高い人をどうやって見分けるか、肝癌への進行をどうやって防いでいくかということが大きな課題になっています。
30年たって、またスタート地点に?
 現在、NASHには治療薬がありません。診断しても、せいぜいビタミンEの投与くらい。患者さんには「運動して食事制限してください」としか言えないのです。私たち肝臓専門医からすると、現在の状況は、C型肝炎が「非A非B型肝炎」と呼ばれ、原因が分からず肝庇護剤を投与していた時代に似ているんですね。30年たって、スタート地点に戻ったような感じがしています。今後、NASHの機序が解明されたり、治療薬が登場したりすれば、また状況も一気に変わってくるでしょう。

2019年2月13日水曜日

最新のNEJMは皮膚病変(小生のトラウマの病気)

最新のNEJMのイメージを見て、若干寒気がした。マラコプラキアという病名は小生の学生時代の病理の試験を思い出させる。学生のころ学部二年目の病理というのは学部一年目の生化学・生理とともに基礎医学の最大の鬼門であった。この病理で何人留年していったことだろうか。小生は授業の出席率が最低に近かったから試験は大変だったが、病理の試験で「マラコプラキア」について述べよという問題には困惑した。まったく知らない病気だったからだ。

今でもその名を覚えているマラコプラキアに今朝出会ったというわけだ。ぞくぞくする。




A 53-year-old man who had undergone both liver and kidney transplantation within the previous 2 years presented to the infectious diseases clinic with a 4-month history of progressively enlarging, painless nodules on his scalp (Panel A) and perianal region. He otherwise felt well. The immunosuppressive medications that he was receiving included tacrolimus, mycophenolate mofetil, and prednisolone. Four weeks before the development of the skin lesions, he had received pulse methylprednisolone for acute cellular rejection of the transplanted kidney. Biopsy of the lesions identified Michaelis–Gutmann bodies (basophilic inclusions) (Panel B, arrow), and cultures grew Escherichia coli and Pseudomonas aeruginosa. A diagnosis of malakoplakia was made. This rare chronic granulomatous condition, which occurs most frequently in immunocompromised patients, is thought to be due to defective intracellular killing of bacteria. It is characterized by focal inflammatory lesions with Michaelis–Gutmann bodies within macrophages. Cutaneous involvement is rare; the more typical presentation involves the kidney or bladder. Management combines prolonged antibiotic therapy, immunosuppression reduction, and sometimes surgical excision. The patient was treated with antibiotics, including ciprofloxacin, along with a concurrent reduction in immunosuppression. After 6 months of treatment, the lesions regressed, with some residual scarring.

Thomas Gliddon, M.B., B.S.
Kate Proudmore, M.B., B.S.
Sir Charles Gairdner Hospital, Nedlands, WA, Australia 



2019年2月8日金曜日

ナノポアシーケンサーの現状

ナノポアシーケンサーのことはずいぶん以前から気になっていた。

八年前にこんなブログを書いたことがある。


2011年7月2日土曜日


ナノポア・シークエンス技術の現状

今ある第二世代や第三世代のシークエンサーの次に来る技術としてDNAを直接読む技術の開発が盛んだ。実際に一本のDNAをどう読んでいくのだろう?
それなりに進歩の過程を追いかけていたつもりであるが、ここ数年は毎年参加している年末のある研究会でS教授が報告されるのを聴くことが唯一の情報源であったが、その彼が2018年12月に語ったのが・・・・

シークエンスは現場でやる時代だよ!


という一言であった。すこし衝撃的であった。

昨日までケニヤに行っていて、手持ちのポータブル・シーケンサーで配列を決めてきました。と彼は言うのであった。

実際こんなページを先程発見した。(出所:守屋さん(岡山大学異分野融合先端研究コア・准教授


30万円程度で海外から購入するのだそうだ。ちょうど一年前の記事なのでいまならTAKARAから購入可能かもしれない。(今調べたけど、タカラはナノポアを使ったシークエンス委託事業はやっているけど、ものは売っていないようですね。つまらないね、この企業)

素人でも手に入るよね、これ。こんな時代になったのが嬉しいです。ナノポアの技術では原理的にケミストリーが介在しないはずなので、DNAさえ調整できれば、いくらでも読めるはずです。やってみたいですね、これ。

8年前の試算ではナノポアを1000台並列で走らせれば人のゲノムを30xで読むのに25時間ですむはずである。精度やアセンブルが問題だろうけど、3億円用意すれば個人がこの環境を手に入れることができることが素晴らしい。100xでも3日でしょう。すごいなあ。






2019年2月4日月曜日

レスピーギに脱帽したわたし

レスピーギの「ローマの松」ってこんな素晴らしい曲だったんだ!

Youtubeに感激しました。
ニューヨークフィルの動画はキレが良くて、細部まで楽しめる。
見たい楽器・演奏家がベストのタイミングででてきます。

指揮者も素晴らしい。
金管も木管もなんてこった!
クラリネットの繊細な音色。安心感あふれるホルン。

ピアノのパートがあるんだ。
あんな高いところから吹いている金管パート初めて見て知った。

ボクの中ではクラシック音楽の中心は完全に現代にシフトしている。

もうモーツアルトは聴かない。ハイドンも聴かない。
ベートーベンは聴きますが、好んで聴くのはマーラーやブルックナー以降だな。

聴きたくなるのは20世紀。プロコフェフやバルトーク。ラヴェル。
あんまり聞かないがショスタコービッチもいいな。ストラビンスキーも聴きます。

叙情はショパンではなくスクリャービンで味わおう。そのほうが3倍くらい現代に生きている自分を意識できますよ。

そんななか小生の中ではレスピーギは本日まで二流だった。そう思っていました。

でも悔い改めました。こんな凄い曲を書く人だったんだと本日悟りました。
やはり現代人は20世紀の曲を聴くべきだね。ほんとにそう思います。